2014 Fiscal Year Research-status Report
日本近代体育の黎明期における官立師範学校の体育史的意味
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24500779
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
藤坂 由美子 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 講師 (20442155)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 官立師範学校 / 体操指導 / 天覧体操 / 体操テキスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は宮城県の調査を中心に行い、官立宮城師範学校の体操指導の有無とその実態について考察を行った。その成果を「明治初期(学制期)における学校体操の普及と官立師範学校の役割―宮城師範学校を中心に―」と題してまとめ、2015年2月に共著『体育・スポーツ・武術の歴史にみる「中央」と「周縁」:国家・地方・国際交流』に掲載され出版された。同書では、官立宮城師範学校には体操指導が可能な教員が複数名存在したこと、1876年(明治9年)の明治天皇東北巡幸を契機に学校生徒や教員に対して体操指導が行われたこと、同校の卒業生によって初等教育向け体操テキストが作成・出版され、卒業生によって体操の実施を啓発した実態がみられたことを明らかにした。同校は、当時の東京師範学校の教育課程や教授方法・内容にほぼ準拠する形で教育が行われた。このことは、これまで水原克敏著『近代日本教員養成史研究』(風間書房、1991年)に代表される教育史研究において言及されてきたが、本研究によってさらに体育史の視点から体操教授の実態を考察することにより、体操についても指導的な東京(中央)とそれを範とする宮城(地方)との関係が明確になった。 しかしながら、他の地方の大学区に設置された官立師範学校には、宮城と異なる例も見られる。今後は、他の官立師範学校にも焦点をあてて、当時の体操指導の実態について調査し、それぞれの師範学校における教育(体育)の独自性や共通性について考察していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1873~1874年(明治6~7年)当時に官立師範学校が設置されていた地方各地の公立図書館および資料館、大学図書館等に所蔵される一次史料を中心に調査しているが、その発掘作業に予想以上に時間を要している。これまでに、宮城・愛知・大阪・長崎の調査を試み、僅かではあるが一次史料を収集することができた。しかし、その成果を「原著論文」にまとめるためには、未だ史料不足が否めない。 そこで、新たに1年間の研究期間延長を申請し承認された。今後は更なる資料調査と、調査未着手となっている広島・新潟を訪ね、新たな史料発掘に尽力したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
史料の発掘・調査については、引き続き各地の図書館・資料館等を訪れて実施していく。その際、当時の県の公文書や学務関係資料、官立師範学校の報告書等はもちろんのこと、1877~1878年(明治10~11年)の官立師範学校廃校後に師範教育が移管された公立師範学校の報告書類や、県教育雑誌等にも調査の範囲を広げ、関係情報を収集していく予定である。 また、研究成果の公表については、僅かな史料であっても、それらをもとに歴史的意義づけを行い、「研究資料」として学術雑誌に積極的に投稿していきたい。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた資料(史料)調査が十分に遂行できなかったため、旅費として使用予定であった金額が残額として生じた。平成26年度より所属機関を移ったため、鹿児島県鹿屋市在住となったことから、資料調査予定の各県への移動時間をこれまで以上に要するようになり、長期の出張計画がやや困難となったことが直接的な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1年間の研究期間延長が承認されたため、残額は平成27年度に使用する。残額は主として新潟県への調査旅費および図書館等での資料複写代として使用予定である。平成27年度にすべての官立師範学校に関する資料(史料)調査を完了させる計画である。
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