2012 Fiscal Year Research-status Report
再生筋線維タイプの分化に対するマップキナーゼの役割と熱ストレスの影響
Project/Area Number |
24500791
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大石 康晴 熊本大学, 教育学部, 教授 (10203704)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 再生筋線維 / 熱ストレス / 高齢ラット / 筋線維横断面積 / 筋衛星細胞 / MyoD / Pax7 / ヒラメ筋 |
Research Abstract |
生後65週齢のWistar系雄ラットを用い、高齢ラットヒラメ筋における筋線維の再生と熱ストレスの影響を検討することを目的として研究を行った。ラットを対照群と熱ストレス群に分け、されに両群の左脚ヒラメ筋に塩酸ブピバカインを注入し筋線維を破壊した。右脚ヒラメ筋はその対照脚とした。ブピバカイン注入2週間後の筋線維の再生状態を検討した。 生後10週齢以降のyoung~adult ラットヒラメ筋線維では、遅筋線維の割合が80~90%、速筋線維が8~16%、そして中間タイプの遅筋+速筋混在型線維が数%認められる。これに対して、本研究で用いた高齢ラット対照群ヒラメ筋(生後65週齢)では遅筋線維の割合が95%以上認められた。このことは加齢に伴って速筋線維から遅筋線維へのタイプ変換が生じた可能性が考えられる。もうひとつの可能性である速筋線維の選択的な萎縮・消失については、筋線維横断面積の結果から、65週齢のヒラメ筋線維のサイズは十分な大きさ(2800~3100μm2)が維持されていることから、速筋線維の選択的な萎縮・消失は考えにくい。 したがって、加齢により支配神経の変換、つまりFFタイプまたはFRタイプの運動神経支配がSタイプの支配に取って代わったと解釈される。このことから、加齢による筋線維のタイプ変換は筋線維萎縮に先立って生じる可能性が示唆された。 さらに、再生筋線維の成長に対する熱ストレスの影響については、筋線維破壊2週間後では、熱ストレスを加えたラットヒラメ筋の再生筋線維のサイズが、熱を加えていない再生筋線維よりも5~15%横断面積が大きいという結果が得られた。このことは、熱ストレスが再生筋線維のサイズの増大(筋線維の肥大)を促進することを示唆しており、私たちのこれまでの研究報告(J Appl Physiol 2009, Oishi et al.)を支持する結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
再生筋線維の成長について、これまでに私たちの研究室では、熱ストレスが再生筋線維の横断面積の増加を促進すること、筋線維のタイプ移行fast-toslowを促進すること、筋衛星細胞を活性化し、中心核を含む筋核の数を増加させるなどの知見を得ている(J Appl Physiol 2009, Oishi et al.および未発表の分析結果)。 筋線維サイズの増大に関しては、収縮タンパク質を含む筋タンパク質の合成速度に対し、熱ストレスが合成を促進する方向で作用していることが推察される。一方、筋線維タイプの移行については、どの様なメカニズムによるかは不明な点が多く、その1つの可能性としてマップキナーゼの関与の可能性が推察される。今回の研究では、マップキナーゼについての発現をタンパク質レベルで検討したものの、明確な発現の違いは得られず、さらなる分析が必要と思われる。その際に、筋線維組成が顕著に変化するような実験系の組立が重要になってくるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の実験結果から、高齢ラット骨格筋においても、再生筋線維のサイズがyoung~adult ラットと同様に元の大きさまで回復する可能性が示唆され、同時に、熱ストレスがその回復を促進することが示唆された。今後は、そのメカニズムの詳細を更に分析するとともに、筋線維タイプの分化に関与するファクターについての詳細を検討する方向で研究を進めていきたい。また、筋線維タイプに顕著な変化が生じる可能性のある実験系、例えば、足底筋に過負荷が生じるような代償性肥大実験や、ヒラメ筋に著しい筋萎縮と速筋線維の割合の増加が生じる後肢懸垂実験などは、理想的な実験系であると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験に用いる高額・大型の備品としての機械類を新たに購入する必要はなく、現在、実験室および全学共通研究施設に設置している分析器で対応可能である。従って、次年度の研究費の使用予定は、従来通り、一般薬品やターゲットとなるタンパク質発現を分析するための一次・二次抗体の購入、ガラス類・プラスチック類および紙類などの消耗品、実験動物の購入に当てる予定である。 さらに、研究成果の発表および資料収集のための旅費、研究論文発表のための投稿料や掲載料、別刷りなどの費用としても使用予定である。また、専門的知識を得るための特別講師招聘のための旅費・謝金等にも使用予定である。
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Research Products
(2 results)