2013 Fiscal Year Research-status Report
グリコーゲンローディングが筋疲労後の回復過程に及ぼす影響
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24500795
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Research Institution | Hachinohe University |
Principal Investigator |
三島 隆章 八戸学院大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00461707)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 正信 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (80220961)
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Keywords | グリコーゲン / 筋疲労 / 回復 |
Research Abstract |
ラットにおけるグルコーゲンローディングが疲労耐性および疲労からの回復に及ぼす影響について検討を行った. Wistar系雄性ラットをグリコーゲンローディング群(Glycogen-loading; Gly)およびコントロール群(Control; Con)の2群に分け,Gly群に対しては0時間,24時間後および36時間後に50% (wt/vol)グルコース溶液を1 ml経口投与した.一方,Con群は餌および水を自由摂取させた.1回目のグルコース溶液投与から72時間後に刺激頻度70 Hz,トレイン幅350 msecの電気刺激を3秒に1回の頻度で,発揮張力が初期値の50%に低減するまで加えた.腓腹筋表層部の筋グリコーゲン含有量は,Gly群の方がCon群と比べ約16%の有意な高値を示した.疲労刺激を加えた結果,Con群では360 sec以降大幅な張力の低下が認められず,初期値の50%以下に低下しなかった.一方,Gly群では疲労刺激を加えて240秒後に,初期値の50%にまで発揮張力が低下した.刺激を加えてから300秒後までの発揮張力の経時的変化を比較した場合,75秒以降Con群の方がGly群と比べ高い値を示した. 疲労に到る過程においてCon群では初期値の50%にまで低下しなかったことから,生体内の筋活動を模している刺激頻度である20 Hzを採用し(刺激頻度20 Hz,トレイン幅333 msecの電気刺激を1秒に1回の頻),同様の実験を行った.20 Hzで筋を収縮させた場合,刺激開始から80秒から90秒で初期値の約50%にまで低下することが認められたが,初期の50%にまで低下する時間については,Con群とGly群との間に有意な差は認められなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験計画では,平成25年度にはすでに,グリコーゲンローディングの方法を確立し,疲労に到る過程および疲労からの回復過程をコントロール群とグリコーゲンローディング群と比較し,筋小胞体の機能に影響を及ぼしているか否か検討を行っている予定であった.しかしながら,疲労に到る過程および疲労からの回復過程における発揮張力において,コントロール群とグリコーゲンローディング群との間に有意な差異が認められなかったことから,生化学的分析を実施できない状況にある. 疲労に到る過程および疲労からの回復過程において発揮張力に差異が認められなかった要因のひとつに,グリコーゲンローディングによる筋グリコーゲン含有量の増加が約20%しかなかったことが考えられる.そこで平成26年度は走行運動とsucrose溶液の投与を組み合わせる方法を採用し,実験を遂行することとする.なお,予備実験によって走行運動とsucrose溶液の投与を組み合わせる方法を用いることで,筋グリコーゲン含有量が約100%増加することが確かめられている.
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Strategy for Future Research Activity |
疲労に到る過程でコントロール群とグリコーゲンローディング群との間に差異が認められなかった要因として,筋グリコーゲン含有量の差異が少ないことと考えた.そこでグリコーゲンローディングを行う方法として,走行運動と5% sucrose溶液を与えることを組み合わせた方法を採用する.走行練習を行わせたラットを1)疲労困憊に到る走運動を行わせずに24時間絶食させる群(Sedentary-Control; SE-CON),2)疲労困憊に到る走運動後に絶食させる群(Exercise-Control; EX-CON),3)疲労困憊に到る走運動後にグルコーゲンローディングをさせる群(Exercise-Glycogen-loading; EX-GLY)の3群に分ける(各群n = 8).さらに疲労刺激後の回復過程においてEX-CON群とEX-GLY群に差異があるか否か検討するため,EX-CON群,EX-GLY群ともに疲労刺激直後,15分後,30分後,60分後のいずれかで解剖する群に分ける.グリコーゲンを枯渇させるための運動の24時間前からEX-CON群およびEX-GLY群を絶食させる.グリコーゲンを枯渇させるための運動はEX-CON群およびEX-GLY群が行い,疲労困憊に至るまでの低強度走運動を課す.疲労困憊に至る走運動後,EX-CON群は水だけ,EX-GLY群は通常の餌と5% sucrose溶液を24時間与える.SE-CON群は走行運動を行わず,解剖の24時間前から水だけ与える.疲労困憊に至る走運動の24時間後にin situでの疲労刺激(20 Hz,トレイン幅333 msec,1秒に1回)を負荷し,EX-CON群とEX-GLY群との疲労回復過程に差異があるか否かを検討する.分析には腓腹筋表層部を用い,筋小胞体の機能および代謝産物等の測定を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では平成25年度に筋小胞体機能に関する実験を実施する予定であった.しかしながら,グリコーゲンローディングの方法を確立するに到らなかったことから,筋小胞体の機能を測定することができなかった.よって,筋小胞体の測定に必要となる試薬や消耗品を購入しなかったため,次年度使用額が生じた. 筋小胞体機能の測定や筋グリコーゲン含有量等の生化学的分析に必要な試薬や実験に関わる消耗品を購入する予定である.
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