2012 Fiscal Year Research-status Report
暑熱曝露下運動による熱中症発症および予防に対するβ酸化系脂質代謝の関与
Project/Area Number |
24500800
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
樫村 修生 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (40161020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 秋夫 桐蔭横浜大学, スポーツ健康科学部, 教授 (20139265)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 熱中症 / 脂質代謝 / 熱ショックタンパク質 / 運動 / クレアチンキナーゼ |
Research Abstract |
ラットを用い,暑熱曝露のみと暑熱曝露下運動による熱中症発症において,各組織の熱ストレスタンパク質発現,β酸化系脂質代謝および血中逸脱酵素を比較検討した.実験動物としてSDラットを用いた.ラットは,各曝露には,小動物用人工気候室を用い,気温を23℃から41℃までに調節した.運動は,小動物用トレッドミルを用い相対運動強度50%に相当するランニングスピード20m/minで実施した.曝露前および終了直後の直腸温は,ラット肛門から直腸温測定用サーミスタ-を約4cm挿入し測定した.また,曝露終了後の測定後,麻酔下で脱血採血死させ,直ちに脳幹,右心室壁と左心室壁,肺,腎,肝,腓腹筋を摘出し液体窒素にて凍結し-80℃で保存した.脱血した血液は,直ちに血球測定装置(セルタック,日本光電)においてヘマトクリット等を測定した.凍結保存した組織は,ホモジネート後遠心分離し上澄み液を抽出し,β酸化系脂質代謝に関与する酵素反応および血中逸脱酵素は分光光度計(340~412nm)を用いて測定し,組織熱ストレスタンパク発現は,Western blot法(電気泳動装置,アトー)で解析した.安静時において,暑熱曝露温度の上昇にともなう直腸温の上昇により,骨格筋Hsp72発現は増大した.これは,骨格筋が熱放散にともなう血流量増加および直接的な暑熱曝露の影響を受けるためと考える.さらに,この熱ストレスの増大により,筋損傷も徐々に増大する傾向がみられた.一方,小腸や心筋におけるHsp72発現は,骨格筋に比較して熱中症が発生している可能性のある高い直腸温で増大していることから,臓器により熱ストレスや組織損傷の閾値に違いがみられた.運動時においては,23℃曝露に比較して暑熱曝露下で骨格筋における熱ストレスタンパク質発現が指数関数的に増大するとともに,血中クレアチニンキナーゼも同じように増大し熱中症発症の危険性が増した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画では,暑熱曝露のみと暑熱曝露下運動時における組織ストレスタンパク質発現およびβ酸化系脂質代謝について検討する予定であったが,それに加えて,血中逸脱酵素の分析まで行うことができた.しかし,組織における熱ショックタンパク質発現の分析がすべて終了していない.この分析を早急に実施する必要がある.この分析により,熱中症発症時の熱ショックタンパク質の発現と組織損傷との関連を各組織ごとに把握できると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
一度熱中症を発症した後,暑熱曝露下運動時の検討をし,熱中症既往者の再発・重症化防止対策に役立てる.そのために,熱中症既往モデルラットを作製した後,再び暑熱曝露下運動後に各組織におけるβ酸化系脂質代謝およびそれに関連する組織損傷を検討する.また,一度熱中症を発症した後,暑熱曝露下運動による組織β酸化系脂質代謝および組織損傷の検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物としてSDラット,12週齢40匹を用いる.ラットは,あらかじめ小動物用トレッドミル(シナノ製作所)において,1日15分間ランニング練習を1週間実施し慣れさせる.その後,ラットは,無作為に20匹ずつ2群に分ける.① 熱中症既往群:気温38℃曝露下60分間運動により熱中症既往モデルラットを作製(我々の先行研究により,直腸温が40℃を超え,体血圧が25mmHg低下することを確認)し,その後,気温22℃で1週間飼育する(ラットの体調を完全に回復させる).② 非既往群(対照群):気温22℃曝露下で終日飼育する.飼育終了後,下記の2条件に分け,熱中症既往群と非既往群各10匹で実験を行う.各条件曝露には,小動物用人工気候室を用い,相対湿度は約30%に調節し,気温はそれぞれ22℃および38℃に調節する.運動は,先行研究より相対運動強度50%に相当するランニングスピード20m/minで小動物用トレッドミルを用い実施する. ① 気温22℃曝露60分間 (熱中症既往群と非既往群各10匹)② 気温38℃曝露下運動約30分間(我々の先行研究より直腸温がほぼ40℃になる条件,既往群と非既往群で異なる可能性がある)(熱中症既往群と非既往群各10匹) 曝露前および終了直後の直腸温は,肛門から直腸温測定用サーミスタ-を約4cm挿入し測定する.また,曝露終了後の測定後,麻酔下で脱血採血死させ,直ちに脳幹,右心室壁と左心室壁,肺,腎,肝,腓腹筋を摘出し液体窒素にて凍結し-80℃で保存する.組織は,ホモジネート後,β酸化系脂質代謝に関与する酵素反応および血中逸脱酵素は分光光度計を用いて測定し,熱ストレスタンパク発現は,Western blot法で解析する.
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