2012 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋損傷の修復に対するアイシングの影響と微弱電流併用効果に関する研究
Project/Area Number |
24500802
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
藤谷 博人 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (50278008)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 骨格筋損傷 / アイシング / 筋衛星細胞 |
Research Abstract |
最近一部のスポーツ現場において、骨格筋損傷に対し受傷直後からの微弱電流刺激により、従来からの安静を主とする保存療法よりも、早期に競技復帰が可能となるケースが経験されている。一方、スポーツ外傷に対する応急処置として、通常アイシング(冷却)が一般的に行われているが、これには腫脹、疼痛を軽減させる効用があるとされている。そこで本研究では、微弱電流に加えて冷却を同時に施行し、その両方の効果を得ることで、微弱電流のみよりもさらに早い筋損傷の治癒が可能となるか検討することを目的として、3年計画で実施する。 平成24年度はその1年目であり、まず筋損傷後のアイシングの影響を、アイシング処置のタイミングから検討した。生後8週齢の雄性マウス(C57BL/6J)を用い、cardiotoxin(CTX)を前脛骨筋(TA)に筋注し筋損傷を惹起させた(CX)群、CTX筋注直後(筋衛星細胞発現のピーク前)にアイシングした(IE)群、CTX筋注8日後(筋衛星細胞発現のピーク後)にアイシングした(ID)群の3群に分類した。アイシングは麻酔下で4℃の氷冷水に下肢を浸して行い(20分間)、CTX筋注2および4週間後に全てのマウスよりTAを摘出した。評価項目は、筋湿重量、HE染色による病理学的評価、および免疫染色(Pax7、Laminin、DAPI)によるPax7陽性核(筋衛星細胞)の動態とした。その結果、IE群はCX、ID群に比べて、筋湿重量、筋線維断面積、および筋衛星細胞数は低値を示し、また、中心核を有する筋線維数の割合は、IE群はID群より高値を示した。したがって、骨格筋損傷の直後のアイシングは、損傷骨格筋の再生を遅延させることが明らかとなり、筋衛星細胞の活性化を抑制することが示唆された。これらのことから、微弱電流を負荷する際には、アイシングとの組み合わせとそれらの負荷タイミングが重要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、損傷骨格筋に対するアイシングの影響について、アイシングの実施タイミングから検討した。その結果、アイシングの影響が時期的に異なることが明らかとなり、今後の実験における、各群の条件設定に大いに参考となる結果が得られた。したがって、次年度以降に実施予定の微弱電流を負荷する際には、アイシングとの組み合わせとそれらの負荷タイミングが重要であることが明らかとなった。また、安定したマウス下肢へのアイシング処置の手技、方法も確立することができた。これらのことより、現在までの達成度としては十分に満足すべきものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究結果より、損傷直後のアイシングは損傷からの回復を抑制することが明らかとなった。しかし、臨床場面では、腫脹や疼痛の緩和を目的に、損傷後の極初期にアイシングを実施している。したがって現在、臨床場面で実施されているアイシングの効果を活かしつつ、損傷からの回復を促進するための微弱電流の併用を検討する意義がより強くなったものと考えている。そこで、今後の研究ではアイシングの疼痛ならびに腫脹の緩和作用を維持しつつ微弱電流の効果を確認するために、骨格筋損傷後のアイシングと微弱電流刺激の群設定を、①未処置のコントロール群、②筋損傷群、③筋損傷+直後のアイシング群、④筋損傷+直後のアイシング+微弱電流刺激群、とする予定である。次年度以降に、アイシングと微弱電流の併用効果が明らかにされるものと期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画としては、実験動物(マウス:C57BL/6J)80匹、微弱電流刺激機器(トリオ300)6台、免疫染色(Pax7、Laminin、Dapi)、HE染色用の関連試薬、Cardiotoxin (筋損傷モデル作製)、ガラス器具類、そして国内旅費(研究打ち合わせ・実施用)、等を予定している。
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