2012 Fiscal Year Research-status Report
「誤った保健認識」の形成過程に着目した高校生の健康リテラシーの分析と改善
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24500829
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sendai University |
Principal Investigator |
小浜 明 仙台大学, 体育学部, 教授 (70170298)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 健康リテラシー / 誤った保健認識 / 批判的思考 / 保健学習 / フィンランド / 大学入学資格試験 / 保健科目 / 保健教科書 |
Research Abstract |
1年目は、「研究の目的」、「研究実施計画」に照らして、以下の3つを遂行した。1)社会に十全に参加するために必要な保健領域の能力水準を設定するために、T社高等学校保健教科書3冊の索引にある全重要語句が、全国紙A社の過去10年間(2002~2012年)の健康関連記事に登場する個数を数え分類した。その結果、「がん・タール・飲酒・ストレス・インフルエンザ・交通事故・骨折」、「体力」、「ごみ・水道・下水道・リサイクル・エネルギー、介護・医療機関・保健所・医療費」の語句が上位を占めた。分類結果は疫学の「疾病発生の三要因」とも一致した。また、教科書の19個の重要語句が、10年間に一度も全国紙上には登場していないことも判明した。2)一方、PISAで好成績を上げ続けているフィンランドでは、保健科目が主要教科に位置づけられており、そのことが世界的にも注目されている。保健科目は大学入学資格試験にも課されており、高等学校卒業段階で身に着けさせておきたい保健科の学力を、「問題」という形式で具現している。この試験問題11回分(2007年春から開始・年2回)を収集し演繹的に分析した結果、健康に関する「①理論的な知識、②技能的な知識、③批判的思考、④情報分析能力、⑤自己管理能力、⑥市民性・公民性」の6類型に分類された。これら6類型は、単独あるいは組み合わされた形式で出題されていた。3)前述の二つの調査をもとに、「多肢選択型問題(教科書・新聞の上位頻出重要語句を含み日本学校保健会(2004,2010)調査で正解率50%以下の問題)」と「フィンランド型問題(批判的思考を含む健康に関連する①情報リテラシー問題②理論的な知識問題)」を作成し、保健学習を終えたO市内のK高等学校(進学校)の2年生40名に対して予備的調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来なら、予備的調査の分析は1年目に終えているはずであるが、高等学校保健科の教育課程の修了を待って年度末に予備的調査を実施したため、結果の分析が2年目にずれ込んでいる。それ以外は、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、「研究の目的」、「研究実施計画」に照らして、以下の3つを推進する。1)前年度の予備的調査の分析し、「誤った保健認識」と「批判的思考」の関連性を探索し、仮説生成を行う。一方で「誤った保健認識」の形成過程の仮説モデルと健康領域固有の「批判的思考」の概念枠組みを作成する。2)①「批判的思考」の構成概念の分析(調査1):1)で作成した健康領域固有の「批判的思考」の概念枠組みに基づき項目を作成し、高校生200名程度を対象に質問紙調査を実施する。それに併せて、フィンランドの批判的思考を含む健康に関連する問題の評価基準を入手・分析し、構成概念の探索と測定尺度の構成を行う。②「批判的思考」測定尺度の妥当性と信頼性の検討(調査2):調査1で構成した測定尺度を用いて、高校生200名程度を対象に質問紙調査を実施し、構成概念の検証と測定尺度の妥当性と信頼性の検討を行う。3)「批判的思考」が「誤った保健認識」の形成に及ぼす影響の検証(調査3)・・・平成24年度に作成した「誤った保健認識」テスト問題と調査1、2で開発した「批判的思考」測定尺度を用いて高校生400名程度を対象に調査を実施し、両者の相関分析から、今年度に構築した仮説モデルの検証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年目は、「研究の目的」、「研究実施計画」に照らして、大きくは次の3つに研究費を使用する計画である。1)高校生を対象とした調査旅費(大阪・栃木・福島・宮城各府県で2回)…300千円(内訳@150、@50、@30、@20)。2)フィンランンドの大学入学資格試験の保健科目問題の評価基準(評価尺度)の入手のための旅費・滞在費とその通訳・翻訳等人件費(1回)…500千円(内訳@400、@100)。3)その他(ソフト、ファイル、文具等)…143千円。
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Research Products
(6 results)