2013 Fiscal Year Research-status Report
しなやかな身体からの言葉の構築をするための取り組み-広島と福島の支え合い-
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24500844
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Research Institution | Hijiyama University Junior College |
Principal Investigator |
七木田 方美 比治山大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (80413532)
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Keywords | 東日本大震災 / 心の健康 / 母親 / 放射能不安 / 福島 |
Research Abstract |
2013年度は福島と広島における実践活動と、2012年度の研究報告を行った。 実践活動は、広島の3会場でワークショップを実施し、昨年度末に作成した福島と広島の母親らの声を載せた「アンプロンプチュ」(冊子)を配布し、広島の子育て者の言葉集めを行った。福島では、福島ヤクルト営業所の協力のもと、9月に福島市社会福祉協議会の室内遊技場にて遊びの提供を行うとともに聞き取り調査を実施した。10月と3月に福島ヤクルトのスタッフを対象としたワークショップ(以降WS)と心の健康度調査を行った。また、情報収集のため、日本小児保健学会(東京9月)とグリーフケアキャンプ(盛岡2月)に参加した。 研究報告は、地震発生から1年半経過した2012年9月から翌2013年3月に実施した「言葉の構築」を目的としたWSの効果について分析し報告した。報告では、結果をふまえ、WSは即時的に仲間との対話を促し、言葉の構築に効果的であることを述べた。また、得られた言葉は、「身体的効果」「他者志向」「過去の自分への志向」「将来の自分への志向」の4要因に分類され、タッチケアなどによる他者とのふれあいを意識した活動が、一時的な心の回復に役立つであろうことが推測された。縦断的な効果は標準化された指標(SUBI)を用いて検証した。WS開催前(9月)と災害発生から2年経過した3月上旬におけるSUBIの得点の平均値は、「心の健康度」が上昇していた。要因として「人生に対する前向きの気持ち」と「近親者の支え」の改善があることがわかった。また、WS非実施群との比較では、「幸福感」「達成感」が有意であったが、「心の疲労度」が漫然とあり、「社会的なつながりの不足」が要因であることが推測された。これらは、アートミーツケア学会(11月)および日本タッチケア研究会(3月)にて報告を行った。また、本学紀要および本学幼児教育研究会会報『和顔愛語』に記載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実践活動(ワークショップ開催、アンケート実施)、研究により得られた中間結果を計画通り実施した。また、今年度は個別の分析ができるように試み、心の健康度の回復度について調査協力者に個別にフィードバックを行い、かつ個別にインタビューを実施した。より質的な研究として深めることができた。しかし、広島の子育て者の言葉と、福島の子育て者との往還をはかる冊子については、広島と福島の「今、現在」の生活の背景が異なることから困難であることがわかったため、冊子化は福島の母親へのフィードバック冊子にて実施するにとどめたため。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度までに得られた実地研究の調査結果をもとに、心の健康度の回復の高い母親の特徴についてまとめ報告する。また、「放射能による内部被爆への不安」により、非日常的で長期的な困難な状況における子育て者における心の健康についても考察を深める。あわせて、本研究を「レジリエンス」(困難な状況からの心の回復)という概念でも考察を深め、本研究の成果を、子育て者の日常的な心の健康の保ち方について考えられるように研究をまとめ、報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
セミナーへの参加を依頼した福島の研究協力者が、風評被害等を危惧し、辞退したため。また、報告書冊子作成費について、当初予定していたものより、ページ数と発行数を減らしたため。また冊子作成に関わる人件費が未使用となったため。 総括の研究報告会を講師を招聘して実施する。
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