2014 Fiscal Year Annual Research Report
しなやかな身体からの言葉の構築をするための取り組み-広島と福島の支え合い-
Project/Area Number |
24500844
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Research Institution | Hijiyama University Junior College |
Principal Investigator |
七木田 方美 比治山大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (80413532)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 心の健康度 / 言葉の構築 / 母親 / 愛着形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
広島の人は放射能の問題を「アッパーカットのような強さはないが、ボディブローのようにあとになってかなり堪える」という。本研究では、親子の愛着形成を支援するため、東日本大震災において被災したものの、地震による倒壊や津波による直接被害がほとんどなく、「私はまだ大丈夫」と毎日を過ごした福島市とその近郊の母親の心の回復をはかることを目的とした。 研究では、ワークショップ(以下WS)を実施することにより育まれた言葉と、心の健康度調査(SUBI)の結果を照らし合わせながら、縦断的に心の健康度の回復過程を分析した。その結果、目に見えない放射性物質に不安を抱きながら日々の生活を守りつつ、家族や社会を支え、支えられながら回復する様子が明らかになった。 心の健康度の回復は、①「近親者の支え」「達成感」という、身近な人や家庭、社会における自分の役割が心の健康を支える。次に、②家族や社会に支えられている自信や役割に対する達成感を基に、自分自身の「精神的なコントロール感」を獲得していくと推測できた。また、WS実施群は、非実施群に比べ、阪神淡路大震災の復興過程に見られた鋏状現象が緩やかであった。 まとめとして、他者との関わりで快く拓かれた身体から言葉を構築することは、現状を諦観するというよき心の変革体験が図られるであろうことが推測できた。 さいごに、災害等によってゆすりだされた心の奥底の澱は、同じところに留まることはない。再び降り積もったとしても、元どおりにはならない。不安を抱える母親が、心のよき変革体験を遂げられるよう、今後も長期にわたる支援が必要であると考えられる。今後の課題としては、長期不安を抱える日々が親子に与える影響を改善するために、①親が迷い、決断したことは、その時どきにおいて最善であったことを実感できるような取組と、②将来の不安ではなく今のわが子を眼差しの中における取組みが必要である。
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