2012 Fiscal Year Research-status Report
脂質異常症の予防と治療のための短期軽度カロリー制限と運動処方の分子メカニズム
Project/Area Number |
24500849
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
澤下 仁子 信州大学, 医学系研究科, 助教 (40359732)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 抗加齢 / 脂質代謝異常 / 疾患モデル動物 / 運動 / カロリー制限 |
Research Abstract |
本研究は、現代日本で増加の一途をたどるメタボリックシンドロームのうち、特に急増が懸念される脂質異常症(高脂血症及びHDL低下症)に着目し、医療介入をすることなく、これらの疾患を軽快化・予防する方策を提案することを目標としている。具体的には、メタボリックシンドローム発症年齢を考慮し、研究代表者らが作出した脂質異常症モデル動物の成年期あるいは高齢期を用い、低脂肪・低糖食の摂取と個体別強度の運動処方を同時に短期間実施し、血液生化学パラメータの改善程度と作用メカニズムを解析し、試行した健康増進策の可否を評価する。 1年目である本年度は、研究計画に従い、(1)高齢動物の飼養と(2)比較対照の若齢動物を用いた個体別強度運動による健康増進効果を評価した。 結果(1)高齢群の実験前・中の死亡、(動物飼育施設環境は一定水準と思われるが)季節変化による各パラメータへの影響を避けるため、同時期に出生した個体の多数確保が必須であるが、予想外に繁殖が悪く、十分な個体数が得られなかった。対処を「今後の推進方策」に記載した。 結果(2)個体別強度運動の健康増進効果を実証するため、一定強度運動群と比較した。標準飼料で多頭飼育した運動無し若齢群は、実験期間内には各パラメータがほとんど変化しないことから、運動効果をより明確に評価するため、HDL構成タンパク質のApoA-IIに起因する全身性疾患を誘発して個体に負荷をかけ、運動効果を評価した。その結果、体重や自発運動量は運動の種類に依存しなかった。運動無し群では徐々にHDLコレステロールが減少し、空腹時血糖値が上昇した。一方、運動群では、個別強度運動によって糖代謝が改善し、HDLコレステロール量も増加傾向がみられた。特に、糖代謝に対する効果は個別強度運動の方が一定強度運動よりも高かった。また、発症疾患に対しても個別強度運動が有効に作用する可能性が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1。若齢動物に全身性疾患の発症を負荷した手法により、当初の目標であった「個別強度運動による健康増進効果」を証明できた。運動処方や介入期間の再検討の必要性はないと考えられ、当初計画よりも非常に早期に運動処方が決定できた。 2。遺伝子改変動物の一部の系統で成年・高齢動物の飼養(個体数確保)がやや遅れている。脂質代謝関連タンパク質をコードする遺伝子のノックアウト動物を複数系統確保する計画だったが、繁殖用のメスのコンディションが悪い系統があり、別個体を用いても出生数が少なかった。繁殖用に特化した飼料に変更する、若い個体を多数用意する、妊娠成立後は速やかに隔離する等、仔の養育に適した環境維持に努めたが、妊娠回数も出生匹数も著明な改善がみられなかった。しかしながら、平成25年2月以降には出生数が増加してきており、また、当初、研究対象としなかったヘテロ接合体の作出準備も進めて対応している。順調に出生・飼養している系統もいるが、個体数確保が遅れている系統がいることを勘案し、平成25年3月末現在で当初計画の3ー6ヶ月遅れと判断した。 以上の理由により、総じて、研究の達成度を「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1。当初の計画に従い、カロリー制限と運動処方の併用による健康増進効果を解析する。まず、若齢動物を用いてカロリー制限と運動処方の併用効果を実証する。その後、順次、下記2で準備した成年・高齢動物を用い、加齢に伴う脂質代謝異常に対する改善効果を検討する。 2。成年・高齢動物の準備:これまでの繁殖状況と異なり、脂質代謝関連タンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした動物の一部系統で仔の養育が非常に悪く、個体数の確保がやや遅れている。よって、ノックアウト動物のほかに、野生種も繁殖に用いたヘテロ接合体も作出し、研究に供することにした。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度未使用額が生じた理由:当初の計画では生化学的解析の一部を外部委託する予定だったが、研究の進捗状況により、次年度(平成25年度)に持ち越すことになったため。また、運動処方の決定を複数回検討する予定だったが、当初の計画よりも少ない頻度で効率よく決定に至ったため。 次年度の研究費使用計画:当初の計画に従い、生化学的解析の外部委託、病理・遺伝学的解析にかかる試薬やディスポーザブル器具の購入、特別飼料の購入、研究補助にかかる謝金(2名を予定)、研究成果発表(国内)を行う。また、前年度未使用分を生化学的解析と動物の購入、高齢動物の飼養にあてる。
|