2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞増殖・移動と栄養制御ストレスに対する細胞防御におけるGADD34の機能解析
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24500852
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 佐知子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70447845)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | GADD34 / シグナル伝達 / 細胞ストレス |
Research Abstract |
細胞のストレス応答のメカニズムの解明は、老化や癌治療など医学生物学分野において重要な課題の一つであると考えられる。我々は、これまでに、ストレス応答遺伝子であるGADD34(growth arrest and DNA damage- inducible protein 34)が細胞増殖・移動の抑制に関与し、一方で、栄養制御ストレス下でGADD34は発現が上昇し、細胞防御に働く可能性を示した。このことから、GADD34は生体において重要な役割を果たしており、その機能を明らかにすることは、生体の基礎的原理を解明する上でも重要であると考えられる。本研究では、細胞防御機構におけるGADD34の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度は、マクロファージの機能におけるGADD34の関与について解析を行った。GADD34shRNAによりGADD34の発現をノックダウンしたマクロファージを作製し、細菌、ウィルス感染による細胞の活性化について解析した。その結果、TLR (Toll-like receptor)4のリガンドであるLPS刺激で、炎症性サイトカインIL6、TNFa、INFgの産生がGADD34ノックダウンにより、より増加することが明らかとなった。また、TLR4からのシグナル伝達経路について調べた結果、NFkBの上流にあるIKKa/bがGADD34ノックダウンにより、より活性化しており、さらに、GADD34とIKKbの分子間相互作用を調べた結果、 GADD34とIKKbが結合していることが明らかとなった。GADD34は脱リン酸化酵素PP1と結合し、蛋白質の脱リン酸化に関与していることから、GADD34がIKKbの脱リン酸化を促進し、炎症性サイトカイン産生を制御していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞防御機構におけるGADD34の機能を明らかにする為に、本年度は、細菌感染、ウィルス感染の初期段階において重要な役割を果たすマクロファージの機能におけるGADD34の関与について解析を行うことを目的とした。その結果、細菌感染によるマクロファージの活性化において、GADD34が炎症性サイトカイン産生を制御するという重要な役割を持つことが明らかとなった。また、そのメカニズムを解析する為に、炎症性サイトカイン産生に関与するTLR4からのシグナル伝達経路について解析した結果、GADD34がこのシグナル伝達経路の蛋白質と相互作用し、脱リン酸化に関与していることが明らかとなった。これらの結果から、GADD34がTLR4の下流のIKKa/bの活性化を抑制し、炎症性サイトカイン産生を抑制するという調節メカニズムを明らかにすることができたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。一方で、ウィルス感染におけるTLR3を介した細胞活性化、サイトカイン産生についても、GADD34が関与していることが明らかとなったが、その詳細なメカニズムについては、現在、進行中である。また、次年度は、さらに、GADD34ノックアウトマウスを用いて、in vivoにおける、細菌感染、ウィルス感染による、炎症性サイトカイン産生、組織炎症などの解析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞防御機構におけるGADD34の機能を明らかにすることを目的とし、次年度は、ウィルス感染によるマクロファージのサイトカイン産生へのGADD34の関与について明らかにする。今年度までに、細菌感染による炎症性サイトカイン産生におけるGADD34の制御メカニズムを明らかにしたが、ウィルス感染時には、細菌感染時とは異なる結果を示すことが明らかになった為、ウィルス感染時に働くTLR3からのシグナル伝達経路にGADD34がどのように関与するかを明らかにする。その為に、まず、GADD34と相互作用する新たなシグナル伝達物質を免疫沈降、質量分析により探索する。得られた蛋白質の活性化におけるGADD34の作用について明らかにし、細菌感染、ウィルス感染におけるGADD34の調節メカニズムの違いを明らかにする。また、GADD34のノックアウトマウスを用いてin vivoでの感染による炎症性サイトカイン産生、組織の炎症などについてGADD34の関与について明らかにする。さらに、マウスにおいて、栄養制御もしくは栄養過多状態での炎症の違いについて、GADD34ノックアウトマウスと正常マウスで比較し、生体ストレス防御とGADD34の関与について明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、ウィルス感染によるサイトカイン産生のシグナル伝達経路におけるGADD34の分子メカニズムを明らかにすることから、GADD34と相互作用する蛋白質を新たに探索する必要があり、その方法として、免疫沈降、質量分析を行うための抗体、試薬を必要とする。また、得られた蛋白質とGADD34の相互作用を解析するにあたり、蛋白質を過剰発現させる為に、分子生物学的手法に必要な試薬を購入する。また、細胞培養における培養試薬、血清等を必要とする。さらに、マウスを用いた実験により、GADD34ノックアウトマウス、比較として正常マウスの維持、また、サイトカイン産生などの測定にELISAなどの抗体、試薬、また、組織の解析に必要な染色試薬、抗体、蛍光標識抗体等を購入する。また、実験全般において、プラスチック製品などの消耗品を必要とする。得られた結果を発表するにあたり、学会発表、論文投稿に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)