2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞増殖・移動と栄養制御ストレスに対する細胞防御におけるGADD34の機能解析
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24500852
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 佐知子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70447845)
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Keywords | GADD34 / オートファジー / アポトーシス / 炎症 / 栄養欠乏 |
Research Abstract |
細胞のストレス応答機構の解明において、代表者らは、ストレス応答遺伝子であるGADD34 (growth arrest and DNA damage-inducible protein34)の役割について研究を行ってきた。これまでに、GADD34が細胞増殖、細胞移動抑制に働くこと、また昨年度までの研究で、生体防御に重要なマクロファージの細菌、ウィルス感染による活性化におけるGADD34 の役割について解析を行い、RAW264.7マクロファージ細胞株では、GADD34はエンドトキシンであるLPS刺激による炎症性サイトカイン産生を抑えることを明らかにした。さらに、栄養飢餓ストレスによりGADD34の発現が上昇することが確認されたことから、本年度は、マクロファージ細胞株において、栄養飢餓ストレス条件下での細菌感染によるGADD34の役割について解析を行った。その結果、ある種のアミノ酸欠乏状態ではGADD34の発現が上昇し、LPS刺激で、より強い発現増加が見られた。また、アミノ酸欠乏下でのLPS刺激により、マクロファージ細胞株では、細胞が一旦活性化された後、アポトーシスが誘導されることが明らかとなった。この時、GADD34をshRNAで発現抑制したマクロファージでは、コントロール細胞株に比べ、より強い細胞の活性化、アポトーシスの誘導が見られた。さらに、アミノ酸欠乏下でのLPS刺激によりマクロファージでmTORのシグナル経路が活性化され、オートファジーが誘導されていることが確認された。GADD34欠損マクロファージ細胞株では、mTORシグナルの活性化の上昇、オートファジーの抑制が見られた。これらのことから、GADD34がマクロファージでの栄養欠乏下での細菌感染において、細胞の活性化、mTORシグナルを抑制し、オートファジーの誘導、アポトーシスの抑制に働いていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞防御機構におけるGADD34の機能の解明において、本年度は、栄養欠乏下での細菌感染によるマクロファージの活性化の機構におけるGADD34の関与について解析を行うこと目的とした。その結果、栄養欠乏下でのLPS刺激により、マクロファージ細胞株では、一旦、活性化シグナルが上昇し、アポトーシスが誘導されること、さらに、mTORシグナル経路が誘導され、オートファジーが誘導されることが明らかとなった。この時、GADD34はLPSのみの刺激時に比べ、より強く発現が誘導されること、さらに、GADD34の発現をノックダウンした細胞株を用いた解析から、GADD34が細胞活性化シグナル、mTORシグナルを抑制し、オートファジーの促進、アポトーシスの抑制に関与していることが明らかとなり、論文投稿段階にきていることから、おおむね達成できていると考えられる。また、新たに、GADD34の発現をノックダウンしたマクロファージ細胞株では、通常の栄養状態での培養下において、コントロール細胞株に比べ、より増殖促進が見られるということが明らかとなり、GADD34の重要な機能であると考えれることから、そのメカニズムの解明について、現在、さらなる解析を行っている。さらに、GADD34ノックアウトマウスを用いたin vivoでの細菌感染、細胞増殖等におけるGADD34の機能についても、現在、解析が進行中であり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞の持つストレス防御機構におけるGADD34の機能を明らかにすることを目的とし、これまで、in vitroにおいて、マクロファージ細胞株ではGADD34は細菌感染による炎症性サイトカイン産生の抑制に関与していることを明らかにしてきた。さらに、栄養欠乏状態での細菌感染においては、GADD34は細胞のオートファジーを促進し、アポトーシスを抑制することが明らかとなった。これらのことから、次年度では、in vivoでの、細菌感染等からの生体防御反応におけるGADD34の機能について解析を進めていく。GADD34 ノックアウトマウスを用いて、細菌感染による炎症性サイトカイン産生、生死、組織炎症の有無、免疫細胞の違いなど、in vivoにおけるGADD34の関与について解析を行う。本年度までの予備的解析で、in vivoでの現象がin vitroでの結果から予想された結果とは、一部異なる現象も見られていることから、感染時に様々な細胞により複合的に反応が起きるin vivoにおいて、GADD34の機能解析を行うことは重要であると考える。また、さらに、GADD34 がin vitro, in vivoにおいて細胞増殖を抑制することが明らかとなり、細胞増殖は創傷治癒、癌治療にも重要であることから、GADD34が細胞増殖シグナルにどのように作用をしているのか、その分子メカニズムを明らかにしていくことを目的とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度中にGADD34ノックアウトマウスを用いて、細菌感染による炎症におけるGADD34の機能解析を行っていたが、in vivoの解析がマウスの繁殖状況により、予期せず繰り越すこととなった。さらに、in vivoでは、これまで解析してきたin vitroでのマクロファージ細胞株での現象とは異なる現象が見られ、このことは、生体個体での細菌感染等による炎症におけるGADD34の機能の総合的な解析を行っていくことは重要であると考えられることから、次年度に繰り越すこととなった。また、in vitro, in vivoにおいてGADD34が細胞増殖を抑制することが明らかとなり、その分子メカニズムの解明が本年度中に終了せず繰り越すこととなった。 次年度に、in vivoにおけるGADD34の機能解析を行うことから、GADD34ノックアウトマウス、比較として正常マウス維持における餌等の消耗品、また、組織、細胞の解析を行うにあたり、FACS、免疫染色、血清中のサイトカイン産生等を調べるための蛍光標識抗体、ELISA試薬、染色試薬を購入する。またRNA、蛋白レベルでの解析を行うにあたり、酵素、抗体を含む分子生物学的試薬を必要とする。また全体にプラスチック製品などの消耗品を必要とする。また、細胞増殖におけるGADD34の機能を解析するにあたり、培養に必要な培地、血清を必要とする。さらに、細胞増殖におけるシグナル分子にGADD34が関与するメカニズムを解析するにあたり、免疫沈降、質量分析を行うための試薬を必要とする。得られた結果を発表するにあたり、学会発表、論文投稿に使用する予定である。
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Research Products
(10 results)