2012 Fiscal Year Research-status Report
サルコペニア(老化による筋肉減少)でのインスリン抵抗性と慢性炎症による制御の解析
Project/Area Number |
24500853
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小池 晃彦 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (90262906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
押田 芳治 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (10169295)
葛谷 雅文 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10283441)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | EPA / サルコペニア / 老化促進マウス |
Research Abstract |
サルコペニアは、高齢者の虚弱性の主要因であるが、予防・治療対策は限られている。老化によるサルコペニアを廃用性変化と区別し解析するために、本研究では老化促進モデルマウス(SAM)を用い、介入効果の有効性とメカニズムを検証する。初年度は、エイコサペンタエン酸(EPA)投与が骨格筋老化(筋量減少、機能低下、代謝異常)にどのような影響を及ぼすかを検討した。エイコサペンタエン酸は魚油に豊富に含まれるω3脂肪酸であり、すでに臨床上の有用性が明らかになっている抗動脈硬化作用に加え、慢性炎症抑制作用等による様々な有用性が期待されている。動物モデルにおいては、EPAが癌、慢性関節リウマチでの骨格筋減少や筋ジストロフィーでの骨格筋変性を抑制するとの報告があり、人においても魚の摂取量と筋力との相関が示されている。 本年度は、サルコペニアとインスリン抵抗性に対するEPAの効果を、サルコペニア予防効果を検証するために筋量減少が始まる前の6週齢よりEPA投与を開始する方法と、サルコペニアの進行抑制効果を検証するためにすでに筋量減少が進行している25週齢から開始する方法で行い、30週齢の時点で骨格筋を含む臓器を摘出した。四脚の握力試験においては、老化促進マウス(SAMP1)のEPA群で対照としたコーン投与群と比較し、有意に高い筋力を認めた。筋量については、腓腹筋と足底筋を合わせた場合と大腿四頭筋で、老化促進のない対照群(SAMR1)のEPA群でコーン油群より有意に増加した。副睾丸周囲脂肪量については、SAMR1ではEPA群でコーン油群より有意に低下し、インスリン負荷試験でもEPA群でインスリンに対する感受性が亢進したが、SAMP1群では明らかでなかった。なお、SAMP1群ではコーン油投与により生存率が低下したが、EPA群ではそのような作用はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的は、EPAの長期投与が加齢による筋肉量の減少や筋力の低下を抑制する可能性を明らかにする点であり、初年度は、予防および治療効果につき、老化促進マウス(SAM)とその対照マウスで検討し、最大約25週間に渡る投与の影響を明らかにできた。EPAは対照マウスでは筋量の増加または低下の抑制に働く可能性が示された点は、EPAがサルコペニアに対して有効な介入になる可能性を示した。さらに、SAMで、握力の評価ではEPA群で対照群(コーン油群)より維持されたという点も、EPAの有効性を示唆する重要な知見と考える。本実験系でのEPAの有効性の機序についても解析中である。 本年度の研究で明らかになった問題点は、SAMにおいて、コーン油投与にて高率に死亡するという予想外の結果が得られたことと、SAMについては個体間の違い(運動量、脳機能など)が非常に大きく、筋量・筋力の評価が難しいと考えられたことである。前者については、EPAの対照としてコーン油を用いたことが炎症を惹起したとも考えられ検討を要する。また、後者については、新たな実験系での検証の必要があると考え、代償性肥大による系での検討を始めている。代償性肥大に関しては、少なくとも正常対照群においては、EPAが筋維持に有効に働くことを示唆する可能性が示されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で、老化促進マウスは報告されているようにサルコペニアのモデルとしては有効であると考えられた。一方で、個体差が非常に大きいことやコーン油が病態を引き起こす可能性が示唆され、EPAの長期的効果を検証することの難しさが示された。本年度は、長期的に動物を飼育し、解析開始が予定より遅くなったために、研究費を持ち越すことになった。平成25年度は、骨格筋代償性の肥大モデルやEPAを比較的短期的に投与し、骨格筋の生化学/生理/代謝に及ぼす影響を検討する方針である。代償性肥大モデルでは、腓腹筋を一部切除後に、足底筋/ひらめ筋の変化を解析する。さらに、EPAとカロリー制限や有酸素運動負荷の同時介入を行いその相互作用についても明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費として、本年度の持ち越し額(644633円)と合わせて次ぎのように計画する。設備備品費、0円 消耗品費 1644633円(生化学実験試薬、600000円;生化学実験器具、300000円;血液検査代、294633円;実験用動物、400000円;論文別刷り、50000円)旅費、50000円、人件費・謝金 50000円。
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Research Products
(7 results)