2013 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋から分泌される因子と運動が及ぼす影響についての基礎的研究
Project/Area Number |
24500864
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
飯塚 健治 北海道医療大学, 薬学部, 准教授 (10344467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平藤 雅彦 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (20142987)
町田 拓自 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (90433424)
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Keywords | 培養骨格筋細胞 / マーカー / 増殖因子 |
Research Abstract |
複合疾患であるメタボリックシンドロ-ムの進展と治療の効果を、エネルギ-代謝の観点から総合的にモニタ-出来るマーカーは現時点では存在していない。その様な中で、近年骨格筋が外環境に対して何らかの因子を積極的に放出することで、多様な生理的機能を果たしている可能性があるとの報告が出されている。そこで我々は、i)骨格筋細胞がどの様な因子を放出する機能を持っているのか、またii)運動はこの因子を放出させる機能にどの様な影響を及ぼすのか、さらにはiii)この因子は他の体内組織に対してどの様な影響を及ぼすのか、などについて基礎的な検討を行うことに価値があると考えた。 本研究では、研究対象としてヒト由来骨格筋細胞を分化誘導させ、これに対して申請者が過去に特許を取得した波動圧ストレス負荷装置を用いてin vitroで擬似的な骨格筋運動再現させた。そして、まず擬似的運動によって発生する機械的刺激よって、骨格筋からどの様な因子が放出されるのかについての検討を行うことを計画した。 初年度の検討結果から、培養骨格筋細胞において擬似的運動負荷に反応して様々な分泌因子の遺伝子発現と対応するいくつかの蛋白質が増加を示すことが明らかになったため、今年度はその具体的な因子について細胞外放出の状況を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度においては、まず実際に骨格筋細胞から何らかの分泌因子が放出される可能性があるか否かについての検証と、分泌される因子の概要についての検討、ならびに擬似的骨格筋運動の影響の有無について検討した。Growth Factor PCR Arrayを用いて放出される因子の概要の把握と、放出されている因子の網羅的スクリーニングを遺伝子レベルで検索した結果、複数の因子の遺伝子で6倍を超える増加を認めた一方、一部では多数の遺伝子の発現減少を確認した。またこの際に、擬似的な運動負荷を加えた細胞と、負荷を行わないコントロール細胞での遺伝子発現の比較検討を同時に行う事によって、運動による効果の有無を一元的に検討することによって、擬似的運動負荷そのものが因子の放出に直接影響を及ぼしていることも併せて明らかになった。 これらの結果を受けて、平成25年度においては、変化示した各因子の蛋白質が実際に培養骨格筋細胞から放出されているかに否かについて、培養液中の因子の変化をELISAで検討した。その結果、圧力負荷を加えた細胞でいくつかの因子の濃度が明かな増加を示し、骨格筋細胞自身が増殖因子を細胞外環境に放出する機能を持っていることが明らかになった。 以上より、今年度の研究も概ね予定通りに進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては、前年度において遺伝子並びに蛋白質レベルで顕著な変動を示したいくつかの因子に着目し、メタボリックシンドロ-ムの代表的な病的環境である高血糖などを再現した条件下での変動や、運動量が放出量に及ぼす影響について検討を行う計画である。さらに時間的また予算的に可能であれば、骨格筋細胞から放出された因子が、生体内の他の臓器または細胞に及ぼす影響の有無を検討する目的で、マウス脂肪細胞などに対する作用の有無について、増殖の状況やadipocytokineの分泌状況を中心に検討することを計画している。また前年度の検討で、変動が確認された因子が単体で入手可能であるか否かについて検討を行い、これらを直接添加した場合の反応性実験の可能性についても模索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
到達度において記載したごとく、今年度においては最小限のキット購入によって因子放出の変動が確認できた。 これに対して次年度においては、再びヒト骨格筋細胞の培養を要することが考えられ、関連する試薬が増加するとともに、下記のごとく実験の進捗状況によって新たなアレイや試薬さらに、分泌因子の入手する必要性が生じる可能性があることから予算の流動性を高める必要があると判断した。 次年度においては、骨格筋細胞の培養に関連する試薬が増加するとともに、脂肪細胞ならびにその培養関連試薬に対する支出、またadipocytokine 検討のためのProteome Profiler アレイキットおよびそれに関係する試薬など多様な経費の支出の増加が想定されるため、本予算を用いて遂行する計画である。
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