2012 Fiscal Year Research-status Report
生活者重視のCSR実現に向けて―ステイクホルダーとしての生活者と市民社会―
Project/Area Number |
24500894
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
斎藤 悦子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (90298414)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 企業の社会的責任 |
Research Abstract |
本研究は、ワーク・ライフ・バランスやディーセントワークの実現を企業の社会的責任(CSR)の観点から、生活経営学的アプローチによって解明することを目的としている。生活経営学的アプローチとは、消費者、雇用者、地域住民といった様々な側面を持つ生活者が、企業とどのような関係性を持ち、企業のステイクホルダーとして社会でいかなる役割を果たすかを考察することである。報告者は過去3年にわたり、国内A市のワーク・ライフ・バランス施策とその実現のために設置された行政主導の市民委員会(ワーク・ライフ・バランス推進委員会)を事例として観察を続けてきた。2012年度においては、当該委員会委員への聞き取り調査を実施し、A市におけるワーク・ライフ・バランス施策の効果と市民、企業の関係性についてを検討した。結果は「1.A市においては、行政による施策はそれほど大きな効果をあげたとはいえない。2.行政と企業との連携が成功したとはいえない。3.一方、委員同士の結びつきは継続している」の3点にまとめられる。 ワーク・ライフ・バランスの実現は、企業の理解が進まなければ難しい。A市では行政がワーク・ライフ・バランス推進のために企業と連携して、事業を企画した。事業は事業として終了し、継続性がなかったことが問題であったと思われる。企業がCSRとしてワーク・ライフ・バランスを捉えていないことがその背景にあると考えられる。しかし、CSRを認識せず、ワーク・ライフ・バランスに取り組んでいる企業もある。調査の結果から以下の2点が提起された。1.CSRの認識なく、ワーク・ライフ・バランスを達成できている企業の再分析。2.A市における人々の実態を生活時間から探る。さらに、日本企業のCSRについて、IFHE第22回大会で報告を行った(2012年7月、オーストラリア)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した通り、日本企業のCSRについてIFHE(International Federation For Home Economics)第22回大会(オーストラリア、メルボルン)において報告を行った(2012年7月)。また、A市における聞き取り調査も実施することができた(2012年12月)。EU諸国のCSRの動向把握については、実施できなかったが、2013年度のICCSR(International Centre for Corporate Social Responsibility)シンポジウムに合わせて訪英し、動向を把握する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2010年に実施したA市の事例調査の不足点を補い、日本においてCSRがどのように市民社会と関わることができるのかを追求したい。具体的には、A市の代表企業の従業員の生活時間調査を実施し、ワーク・ライフ・バランスの実態を企業別に把握する。同時に日本におけるCSRの展開の方向性をワーク・ライフ・バランスやジェンダーの視点で捉え、企業における女性活用に関する国際的な認定である国連のWEPS(Womens Empowerment Principles)署名企業と非署名企業を詳細に分析、検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請書の研究目的「1.CSRをリードするイギリスのCSRと市民社会の関係性を把握する」に基づき、イギリスNottingham Universityで開催されるICCSRシンポジウムに参加し、当該シンポジウムのテーマである「ジェンダーとCSR」に関して、情報収集を行う。さらに研究目的「2.ワーク・ライフ・バランスは日本企業においてCSRとしてどの程度取り組まれているのかを明らかにするためにCSR報告書分析を行う」に基づいて、Forbs2012の販売ランキングの上位に位置づいている日本企業を選定し、その中で国連のWEPS(Womens Empowerment Principles)署名企業と非署名企業を抽出し、CSR報告書分析を行う。この結果は2012年6月に開催される経営倫理学会で報告する予定である。さらに、調査対象者の準備が整えば、生活時間調査を実施したい。
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