2012 Fiscal Year Research-status Report
学校ボランティアを通した家庭・地域・学校の関係の可視化と再編による家庭生活支援策
Project/Area Number |
24500899
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
時岡 晴美 香川大学, 教育学部, 教授 (10155509)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ライフスタイル / 生活経営 |
Research Abstract |
本研究は学校支援地域本部事業の取り組みを通して、子ども・親・高齢者の新たな関係づくりが家庭生活支援に資する実態を明らかにするもので、初年度は当該事業の先進地域である岡山県備前市立備前中学校に注目して、学校支援地域本部事業の取り組み内容とこれまでの成果を明らかにした。地域ボランティアの果たす役割やその効果について地域教育力の観点から検討した結果、当事業が教育効果を有すること、教師にも大きな影響を及ぼすことが明らかにされ、この事業を契機として学校と地域に新たな関係が加わることが示された。また、生徒・教師・地域ボランティアの意識調査から、事業に取り組むことによって、地域と学校の距離が近づいたこと、学校の荒れに収束がみられること、地域住民の意識に変化が生じておりボランティアに参加したことで学校に期待を持つようになったこと、地域ボランティア・教師ともに事業を評価していること、地域ボランティアと教師の意識に差があり両者間に温度差があることなどが明らかになった。さらに、子ども・学校・地域の三者の関係認識でも温度差が認められ、それぞれの関係を可視化することの重要性が示された。 なお、本研究の成果を公開する機会として、平成24年8月24日(金)13~16時、リフレセンター備前(岡山県備前市)で開催された研修会(参加者は教師・地域ボランティアなど約100名)で講演を行った。また、論文「学校支援ボランティア参加者からみた学校支援地域本部事業の成果と課題~岡山県備前中学校における実態調査から~」として、香川大学生涯学習教育研究センター研究報告第18号23~33頁(2013.3)に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、まず学校支援地域本部事業の取り組み内容と、事業実施による現在までの成果について明らかにした。当該事業の先進地域である岡山県備前市立備前中学校ならびに同市で昨年度から新たに取り組んでいる伊里中学校、取り組みに混迷がみられる近隣校である岡山県赤磐市立赤坂中学校における事業の実態を明らかにして比較を行った。その結果、当該事業の成果が示されるとともに、当該事業の持つ新たな可能性が示唆された。また、生徒・教師・地域ボランティアの三者関係の認識に差がみられること、三者関係の可視化が重要であることが示された。一方、取り組み開始直後であり事業に混迷がみられる近隣校である岡山県赤磐市立赤坂中学校の実態調査からは、事業の立ち上げ時における組織づくり、コーディネーターの位置づけと人選などに課題があったことが示唆された。ただし、学校規模や学区の範囲、地域の状況などが異なるため、これらの要件が与える影響については今後の検討課題である。 また、当事業が子ども・親・高齢者の新たな関係づくりをもたらすことは示されたが、直接的に家庭生活支援に資するという成果は得られていない。家庭生活支援の可能性やその必要性については研究が進むにつれて益々実感されるが、逆に家庭生活に直接的に関与したり影響を及ぼすことの困難さを示す声や場面に多く遭遇している。このため、家庭生活支援策の検討については、その方向性から再考していくことが課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から、学校支援地域本部事業の取り組みを通して子ども・親・高齢者の新たな関係づくりをもたらすことが示されているが、これをふまえて、家庭生活に直接的に関与あるいは影響を及ぼすなどによって家庭生活を支援することに繋がるのか、可能性があるとすればその方向性について検討していく。 まず、昨年度に当事業のすぐれた取り組みとして文部科学省より表彰された中学校6校、小・中合同による取り組み校6校を訪問して視察とヒアリング調査を実施する(青森県弘前市立第一中学校、京都府長岡市立長岡第四中学校、仙台市加茂中学校など)。支援体制の特徴を明らかにして比較を行い、地域特性等との関係の検討から、当事業の成果と課題についての普遍性を明らかにしていく。 また、継続調査を実施している岡山県備前市立備前中学校・伊里中学校、岡山県赤磐市立赤坂中学校を対象として、家庭生活支援まで繋げる可能性とその方向性について検討していく。具体的には、関係者へのヒアリング等による事例の収集、過去のケースについての検討会などの開催を計画している。なお、当事業の一環として家庭からの相談業務を行っている岡山県美咲町の学校支援地域本部へも訪問調査を行い、その特徴と効果や課題について明らかにし、家庭生活支援策の方向性について検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、当事業として文部科学省より表彰された中学校6校、ならびに小・中合同による取り組みの先進校を訪問して視察とヒアリング調査を実施する。青森県弘前市立第一中学校、京都府長岡京市立長岡第四中学校、仙台市加茂中学校、金沢市西南部中学校、奈良市三笠中学校、福山市一ツ橋中学校、岡山県美咲町学校支援地域本部)。 継続調査を実施している岡山県備前市立備前中学校・伊里中学校、岡山県赤磐市立赤坂中学校を対象として、ヒアリング調査による事例の収集、これらの分析結果を踏まえて過去のケースについての検討会を開催する。 今年度の事業の成果についてアンケート調査を実施し、昨年度までの調査結果との比較分析を行い、経年変化について明らかにする。 具体的な支出計画としては、物品38千円(ICレコーダー15、シュレッダー20、メモリー3)、旅費310千円、謝金502千円(研究補助460、専門的知識の提供42)、その他350千円(調査票印刷120、郵送80、検討会会議費150)、計1200千円とする。
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