2012 Fiscal Year Research-status Report
洗浄における洗剤使用量低減化の試みーナノバブル水の流動特性と洗浄性能の解明ー
Project/Area Number |
24500919
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
天木 桂子 岩手大学, 教育学部, 准教授 (80193019)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 洗浄 / ナノバブル水 / 流動特性 / 界面活性剤 |
Research Abstract |
本研究は,洗浄における汚れ除去に有効な作用として洗浄液の持つ流体力に着目し,より有効に活用することによって,現在主流である洗剤液から主成分の界面活性剤の使用量を見直す(低減化する)手がかりをつかむことを目的としている.ここでは,こうした可能性のある新たな洗浄液(界面活性剤水溶液の代替候補)としてナノバブル水を取り上げ,その流動特性を探った. まず,本研究の対象溶液であるナノバブル水製造装置を設置し,イオン交換水からナノバブル水を製造する環境を整えた.このナノバブル水を対象に,せん断流中に流れに垂直に置かれたメッシュ(布モデル)間隙を通過する流れ(垂直流)について,メッシュ前後の圧力損失を測定し,これをメッシュによる抗力と考えて分析した.得られた結果を,これまでに得られている水,および界面活性剤水溶液の測定値と比較した.また,比較対象流体として,マイクロサイズの気泡を含有させたマイクロバブル水を製造し,同様の実験を行った. 実験装置として,垂直流を実現する流路を作製し,圧力損失測定装置,リザーバを設置して装置全体を組み立てた.流路は正方形断面を持つ矩形流路で,中央のフランジ部分にポリエステル製メッシュを挟み込む構造となっている.これにビニールチューブを介して微小差圧計,ヘッドタンク,流出口と接続して装置全体を完成させた.実験対象溶液は,イオン交換水,マイクロバブル水およびナノバブル水である.これらの溶液をヘッドタンクに入れて流路内に流し,メッシュ前後の圧力差を微小差圧計から読み取った,得られた値から抗力を算出し,イオン交換水との比較を行った.さらに,メッシュのサイズ,流路内部の溶液通過面積が異なる流路を用いる等,様々な実験条件を設定しながら測定を行った.なお,マクロバブル水,ナノバブル水とも,製造後経過時間による気泡の含有量低下を考慮し,実験開始から終了まで稼働し続けた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず,実験対象流体であるナノバブル水の製造を試みた.製造後の経過時間とともにバブル含有量が低下する懸念があったため,測定中常時稼働させた状態を保つこととし,ヘッドタンク内で直接製造できるように設置した.あらかじめ作製したイオン交換水をヘッドタンクに満たし,装置を稼働してナノバブルを含有させながら測定を進めたところ,稼働経過時間とともに溶液温度が上昇し,開始時の約20℃から終了時には約40℃となった.本実験は溶液の温度依存性が高く,同一状態での測定がやや困難だと判断されたため,現在製造方法をさらに改良検討している. この間,マイクロバブル水を対象溶液として,上記と同様に測定中常時稼働させながら当初の実験を試みた.マイクロバブル水でも温度変化はわずかに認められたが,この変化は粘度係数で補正できる範囲であった. イオン交換水,およびマイクロバブル水を用いてメッシュ間隙を通過する流れの圧力損失を測定した結果,ほぼすべての条件下でマイクロバブル水の抗力はイオン交換水に比べて低く,抵抗減少効果が認められた.その差は,同一Re数で約5-10倍であり,マイクロバブル水のメッシュ間隙通過がイオン交換水に比べてはるかに容易であることがわかった.この結果を,これまで測定し同じく抵抗減少効果が認められている界面活性剤水溶液と比較すると,マイクロバブル水と界面活性剤水溶液の値は非常に近く,流動上の特徴としてマイクロバブル水が界面活性剤水溶液と同様の効果を示す流体であると判断された.これまで実験者は,界面活性剤水溶液が被洗物まわりに速い流速をもたらし,これが汚れ除去に有効に作用する可能性を見いだしてきているが,本実験結果よりマイクロバブル水にもこの効果が期待できることが示唆されたと判断している.この結果から,マイクロバブル水も同様の効果を有すると推測されたため,現在実験環境を整えて測定を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で測定環境がある程度整ったため,次年度はあらゆる条件を想定しながら,実験を進めてデータ収集することが主な目的となる. 現在までの研究実験で,ナノバブル水に先立って,マイクロバブル水の流動上の特徴をおおむね解析できたことから,今後は,ナノバブル水を対象とした実験が中心となる.ナノバブル水の製造過程を変更し,測定中常時稼働させるのではなく,あらかじめ製造し所定温度に整えた溶液を対象として実験を進めたいと考えている.ただし,ナノバブル含有量の低下はある程度心配されることから,製造後はなるべく迅速に実験を行い,経過時間を短くする等の工夫が必要となる. また,マイクロバブル水での実験で,ほぼ期待された結果を得られたことから,ナノバブル水でも同様の結果が大きく期待できる.これをもとに,ナノバブル水と,界面活性剤水溶液の結果をより詳細に比較検討し,界面活性剤水溶液をナノバブル水で代替できるとした場合,流体力学上の効果として何%分を代替できるのかを明らかにする必要があると考えている.そこから,有機物(界面活性剤)の使用量を低減できる可能性を示唆し,その低減割合(量)を算出する予定である. さらに,実験条件としてメッシュの材質に関し本年度用いたポリエステル製に加え,ステンレス製(金属)を購入し,両者を比較しながら水中での電荷状態との関連を検証する.また,対象溶液として,マクロバブル水やナノバブル水に界面活性剤を溶解した溶液を新たに作製し,流動実験を行って,抵抗減少効果を検証したいと考えている.界面活性剤水溶液の種類も液性や分子構造が異なるものなどをそろえ,液性やイオン性との関係,分子の大きさや,親水基と親油基の比(HLB)による比較も行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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