2013 Fiscal Year Research-status Report
洗浄における洗剤使用量低減化の試みーナノバブル水の流動特性と洗浄性能の解明ー
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24500919
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
天木 桂子 岩手大学, 教育学部, 准教授 (80193019)
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Keywords | 洗浄 / ナノバブル水 / 流動特性 / 抵抗減少効果 / 界面活性剤水溶液 |
Research Abstract |
本研究は,洗浄における汚れ除去に有効な作用として洗浄液の持つ流体力に着目し,より有効に活用することによって,現在洗浄液の主流である洗剤液から主成分の界面活性剤の使用量を見直す(低減化する)手がかりをつかむことを目的としている.ここでは,そうした可能性のある新たな洗浄液として,微小な気泡を包含したナノバブル水やマイクロバブル水を対象とし,界面活性剤水溶液の代替候補としての位置づけを目指した流動実験を行った.得られた結果を,水および界面活性剤水溶液と比較し,マイクロ・ナノバブル水の流動上の特徴を検証した.本年度は前年度のマイクロバブル水に引き続き,ナノバブル水を中心とした検証を行った. 実験装置は,垂直流を実現する流路を作製したのもので,リザーバ(ヘッドタンク)と流出口間にチューブを介して設置している.この流路は正方形断面を持つ矩形流路で,中央のフランジ部分に布モデルであるポリエステル製メッシュを挟み込む構造になっている.メッシュ前後には圧力検出孔があり,デジタル微小差圧計に接続している.対象溶液をヘッドタンクに入れて流路内に流し,メッシュ前後の圧力差を微小差圧計から読み取った.得られた値をメッシュを通過する際に要した抗力と考え,運動量の法則から抗力を算出し,各種流体の値を比較した.さらに,包含されたバブル量を定量するため,溶存酸素量を計測して,気泡発生措置の稼働時間との関係を明らかにした. その結果,ナノバブル水の抗力はレイノルズ数の増加とともに上昇し,ほぼ1:1の線形挙動を示した.この挙動は,イオン交換水およびマイクロバブル水と一致する.また,ほぼすべての条件下でナノバブル水の抗力はイオン交換水に比べて低く,抵抗減少効果を有していた.しかしマイクロバブル水ほど顕著ではなく,水との差はごくわずかであった.また,一部の条件下では水とナノバブル水の値に差が見られないものもあった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,ナノバブル水を対象とした流動実験を本格的に行うことができた.メインの実験を行うに先立って,ナノバブル水中に含まれる空気の量を調べるために,ナノバブル発生装置の稼働時間に伴う溶存酸素を計測した.その結果,稼働前のイオン交換水に比べて稼働後は溶存酸素量が増加し,確かに気泡が含有されていることを確認した.また,稼働時間とともに溶存酸素量は増加したが,約60分以降はほぼ同じ値で増加しなかった.このことから,流動実験には,60分以上稼働させたナノバブル水を用いることに決定した. また,イオン交換水およびナノバブル水を対象溶液として流動実験を行ったところ,ほぼすべての条件下でナノバブル水の抗力はイオン交換水に比べて低く,抵抗減少効果が認められた.しかし,この抵抗減少効果はマイクロバブル水ほど顕著ではなく,水との差は僅かであった.これは,包含している気泡のサイズが影響していると推察できる.すなわち,ナノバブルはマイクロバブルに比べて非常に微小で,実験に用いた布モデルであるメッシュの各部分のサイズよりオーダーが非常に小さい.また,ナノバブル水の光透過性もイオン交換水と同じく完全に透明であることから,物理的にほとんど差がなくバブルの有無がマイクロバブル水ほど流れに影響を与えていないと解釈できる. 以上より,前年度のマイクロバブル水に引き続きナノバブル水の実験を行い,ほぼ同様の傾向が認められ,最終年度に向けてイオン交換水を含めた総合的な解析ができる基盤がある程度整ったと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が本研究課題の最終年度となることから,引き続きナノバブル水の流動挙動を明らかにするための実験を行うとともに,得られたデータの解析およびまとめを行う予定である. また,実験条件をさらに拡大し,広範囲の条件下での流動挙動を探りたい考えている.例えば,流路内の溶液通過部のサイズを変化させたもの,使用メッシュの種類を増やす(ポリエステルメッシュに加えてステンレスメッシュを利用し,水中での電荷状態との関連を探る,また,メッシュの諸元が異なるものを利用し,オープニングエリアや糸密度,線径との関連を探るなど)ことなども一例である.さらに,これまでは,マイクロバブル水,ナノバブル水ともそのまま利用していたが,界面活性剤を溶解させた溶液を新たに調製し,更なる抵抗減少効果の実態を検証する予定である.
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Research Products
(2 results)