2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500923
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
仲西 正 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (90198143)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | オムツ / 高分子ゲル / 膨潤挙動 |
Research Abstract |
本年度は,「オムツ素材モデルとして高分子ゲルを調製し,塩水溶液などに対する吸水性を測定すること」,「調製したゲルのキャラクタリゼーションとして示差走査熱量(DSC)分析を行うこと」,「ゲル材料に消臭機能付加するため,ゲルに吸着する染料の溶液などを用いて染料収着性と溶液吸収性の検討を行うこと」などを,研究実施計画として設定していた.以下にこれらの研究実績について述べる. 1.放射線照射架橋により調製したポリビニルアルコール(PVA)ゲルに対して,銅,ニッケル,コバルトなどの遷移金属塩水溶液中における膨潤挙動を観察した.PVAゲルは用いた遷移金属塩の種類により,それぞれ,特徴的な膨潤度の塩濃度依存を示した.特に,銅塩溶液中では,膨潤度は塩濃度の増加に伴い極小を示した.この興味深い事実は,すでに知られているホウ酸水溶液中の挙動と類似しており,結果を銅イオンとPVAのヒドロキシ基との間の相互作用の観点から考察を行った. 2.放射線架橋PVAゲルの有効架橋密度の評価とDSC測定を行った.放射線架橋ゲルの架橋密度を,ゲルの圧縮弾性率を測定し,フローリーのゲル膨潤の理論に基づいて有効架橋密度を測定した.重合度約2000のPVA試料では架橋点間分子量は約300から600となり,アミノ酸などの比較的大きな溶質が容易に透過可能な大きな網目構造を持つことが明らかになった.膜中水の凍結融解過程のDSCによる観察によりゲルの自由水分率についても検討を行った. 3.PVAゲルの直接染料コンゴーレッド(CR)の収着量の測定法を検討した.PVAゲルをCR水溶液に浸せきして膨潤させ,外部溶液のCR濃度の減少から収着量を求めた.CR濃度の決定は,本助成金で購入した紫外・可視分光光度計により行った.まだ最適な測定方法は得られておらず,今後も検討を続けることにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,ゲル材料からなり,尿量が乳児よりも多い高齢者などに適し,かつ,消臭機能性をも付与した高機能オムツ素材の設計指針を得ること目的としている.本年度の研究実施計画に設定されていた,ゲル構成高分子と遷移金属イオンとの相互作用が関わるゲル膨潤挙動の把握,圧縮弾性率やDSCによる高分子ゲルの基本的性質の把握,そして消臭機能化にも関わる,ゲル構成高分子への染料収着量測定の検討の3点が,本年度内にすべて行われ,基礎的なデータを得ることができた.3つめの染料収着量測定については,最適な方法が見いだされてはいないが,次年度でのさらなる実験的検討で可能になると思われる.以上より,本研究の目的とする結果を得るための実験的手法の確立が,8割程度は完了したと考えられるところから,本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,吸水にともなうゲル膨潤に関して,溶液に含まれる塩の種類,濃度,pH,温度依存などを広範に測定し,ゲルの膨潤特性を詳細に調べる.そして,示差走査熱量分析も引き続き行い,ゲル中の水とゲルの網目構造に着目して考察を進める.調製したゲルから適切なものをいくつか選択し,その系に対して,遷移金属塩と染料の収着性を測定する.遷移金属や染料で処理したゲルに対して,気相中での消臭特性を検知管法およびガスクロマトグラフ法で調べる.においモデル物質としてはエチルメルカプタンなどを用いる予定である.特に,平成25年度の計画では,得られたゲルの膨潤挙動(吸水特性)を捉えること,そして,消臭機能ゲルを試作することが重要と考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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