2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500923
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
仲西 正 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (90198143)
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Keywords | オムツ / 高分子ゲル / 消臭 |
Research Abstract |
本年度は,「吸水にともなうゲル膨潤を溶液に含まれる塩の種類,濃度などを変えて測定し,ゲルの膨潤特性を詳細に調べること」,「示差走査熱量(DSC)分析も引き続き行い,ゲル中の水とゲルの網目構造に着目して考察を進めること」,「調製したゲルから適切なものをいくつか選択し,その系に対して,遷移金属塩と染料などの収着性を測定すること」,「遷移金属や含金属染料で処理したゲルに対して,気相中での消臭特性を検知管法およびガスクロマトグラフ法で調べること」などを,研究実施計画として設定していた.以下にこれらの研究実績について述べる. 1.ポリビニルアルコール(PVA)ゲルに対して,酢酸銅水溶液中における膨潤挙動を観察した.溶液は,塩酸と水酸化ナトリウム,または,緩衝溶液を用いてpHを調製した.PVAゲルは酢酸銅溶液中で収縮する場合が観察された.しかし,pHが約5.6よりも小さく,かつ,酢酸イオン濃度が高い場合には,収縮が見られなかった.結果より,銅イオンとPVA鎖間の架橋がゲルの収縮に関係するのではないかと推察した. 2.膜中水の凍結融解過程のDSCによる観察を行い,昨年度に引き続き,ゲルの自由水分率について検討を行った. 3.PVAゲルの直接染料コンゴーレッド(CR)の収着量の測定法を再検討し,PVAゲルのCR収着量を求め,ゲルの膨潤との関係について検討を進めた.CR収着量が多いほどゲルが膨潤するとは限らず,CRによるPVA鎖の架橋なども考えられた. 4.上述の1と3の研究実績よりPVAゲルと銅塩,PVAゲルと直接染料CRとの相互作用など,ゲルに消臭機能を付与する基礎的知見が得られてきた.そこでまずは前段階として,PVAゲルではなく,綿布や羊毛布を銅塩とCRで媒染染色した布について,消臭過程を検知管法とガスクロマトグラフ法によって調べ,消臭機構について検討を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,ゲル材料からなり,尿量が乳児よりも多い高齢者などに適し,かつ,消臭機能性をも付与した高機能オムツ素材の設計指針を得ること目的としている.本年度の研究実施計画に設定されていた,ゲルの膨潤特性を詳細に調べること,示差走査熱量(DSC)分析を引き続き行い,ゲル中の水とゲルの網目構造に着目して考察を進めること,調製したゲルの染料収着性を測定すること,遷移金属や含金属染料で媒染処理した布で,気相中での消臭特性を検知管法およびガスクロマトグラフ法で調べることが実施された.以上より,本研究の目的とする結果を得るための実験的手法の確立がほぼ完了し,考察を進める段階に入ったと考えられるところから,本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は最終年度であるが,平成24年度と25年度に得られた知見に基づき,ゲルの膨潤収縮に対応した物質収着特性の変化などを検討し,吸水メカニズムの詳細な検討を行う.その際,特にゲルとそれに含まれる水との関わりに注意する.そして,平成25年度に行った消臭特性の結果に基づき,消臭機能を付与しつつも高い吸水性能を維持できる新たな高機能オムツ素材の可能性とそれに向けての設計指針を見出し.本研究を総括する.
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