2015 Fiscal Year Annual Research Report
近世・近代フランスの服装規範に見られるジェンダー観
Project/Area Number |
24500928
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
内村 理奈 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (00401597)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 服装規範 / モード / 社交界 / ジェンダー / 礼儀作法書 / 処世術 / フランス / 身分 |
Outline of Annual Research Achievements |
『フランス・モード史への招待』(悠書館、2016年)の第4章「エチケットで身を立てる―礼儀作法書にみる近世・近代フランスのモード」(pp.137-180)にて研究成果を公表した。内容は全6節からなり、第1節は「礼儀作法書の誕生から断絶、そして復活―処世術書から家政書、女子教育書へ」とし、フランス近世から近代にかけての礼儀作法書の変遷の特質を跡付けた。第2節は「モードと宮廷作法」とし、近世において、モードが宮廷作法はほぼ一致しながら変化を遂げてきたことを指摘した。第3節では「身分社会を支える男性の規範とモード(17世紀)」とし、近世(17世紀)においては、服装規範とモードはいずれも男性に特有のものであり続け、男性の立身出世の手段としても機能してきたことを示した。第4節では「家庭生活を支える女性の規範とモード(19世紀)」とし、19世紀後半になって、礼儀作法書がほぼ女性専有のものへと変化するに伴って、女性の生活規範としてのモードが、婚礼衣装や喪服などの規範として示されたことを論じた。第5節は「服装規範の意味の変容とジェンダー」とし、フランス近世から近代にかけて、服装規範は、やや図式的かもしれないが、男性のものから女性のものへと大きく変容していることを跡付けた。第6節の結論部は「処世術としてのモード」とし、服装規範は近世では公的な男性の規範として見られ、近代では女性の家庭内部での規範へと変容していったが、その具体内容を見ていくと、いずれも、規範の対象となっている者たちにとって、社会の中でよりよい地位に昇っていくための手段として機能していると結論した。そして、それは規範がモードと一致しているからこそ、成し得たのであると結論付けた。
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