2012 Fiscal Year Research-status Report
簡易型高齢女性サーマルマネキンによる着装時の人体-被服間の空気層の計測
Project/Area Number |
24500932
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
高野倉 睦子 神戸女子大学, 家政学部, 准教授 (40183438)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 衣環境 / 高齢女性 / 空気層 / 温度分布 / 体幹部の形状 |
Research Abstract |
高齢女性の身体は、出産の経験や加齢により、形状、身体機能および動作が変化し、若年時とは著しく異なる。特に体幹部の形状は高齢女性の特徴的形状と言える。また被服の着心地は人体ー被服間に存在する空気層の温熱環境条件によって決定されることは良く知られている。そこで本研究では70代女性平均的人体寸法ダミーを使用して、簡易型高齢女性サーマルマネキンを試作し、高齢女性の最も形状的特徴を示す体幹部に被服を着衣させ、重ね着をすることによって被服下に形成される空気層の位置、形状および大きさなどを計測する。さらに被服着装時の被服表面の温度分布を測定し、皮膚ー被服間に形成された空気層と被服環境における温熱的快適性の基礎資料を得ることを目的とする。 平成24年度はまず、簡易型高齢女性サーマルマネキンを試作した。その製作手順は日本人の70代女性平均的人体寸法ダミーの表面に、断熱材→リボンヒーター→銅版および銅箔テープ→塗料の順に貼付した。断熱材はダミーの形状が著しく変化しないように市販中で最も薄手のポリエステル製キルチング綿を使用した。リボンヒーターは胸部では2本組を2個、肩部および背部は3本組を各1個、臀部は2本組、そして腹部および胴部は1本のリボンテープを1㎝間隔で巻きつけた。その上に0.1㎜の厚さで縦60㎝横36.5㎝の銅版を体幹部の前面では胸部、乳房部、腹部に分け、後面では1枚を貼付し、接合部は0.03㎜の厚さの銅箔テープで固定した。そして銅版表面を紙やすりで傷つけ、灰色の多用途塗料にて着色した。その後リボンヒーターとヒーター温度制御装置を接合し、高齢女性サーマルマネキンは完成した。 次に高齢サーマルマネキンの表面温度を一定温度に保つための操作方法を部位別、体幹部全体で検討した。また表面温度測定に際し、黒体テープを貼付し、灰色着色部位と黒体テープ部位つまり人体と差がないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は計画では、簡易型高齢女性サーマルマネキンを完成し、非接触三次元人体計測器を使用して、マネキンー被服間に形成される空気層の位置、形状および大きさを計測する予定であった。 しかし、計画当初リボンヒーターは発熱部分が4.5㎝幅と2.0㎝幅の2種を使用してサーマルマネキンを作成する予定であったが、今年度から2.0㎝幅のみしか生産しないとの業者からの報告を受け、リボンヒーターの使用量を算出し直す必要があった。さらに2本組や3本組も生産可能であることも判明し、リボンヒーターの有効な活用方法を業者と相談、決定に時間を要し、発注時期が遅れた。発注時期が遅れたことで、例年の業者への発注と私共の発注が重なり、納品時期が予定より遅れた。 また、被服の着装によるマネキン表面温度や各所の温度の差を導きだすためには、ヒーターの温度制御の考え方を再検討する必要性が発生し、温度制御装置に改良を加えたため、温度制御装置の納品が遅れた。 次に本実験ではサーマルマネキンの表面温度が一定時間一定温度で安定していることが不可欠な条件となるため、部位によってリボンヒーターを変えたため、まず部位別、そして体幹部全体を一定時間、一定温度に保つための操作マニアル作成のために、予備実験を繰り返し行う必要があり、多量の時間を費やすこととなった。その結果、体幹部を胸部、腹部および腰部、肩部、背部、臀部に分けて温度が設定できるマニアルが完成した。 しかし、これらの遅れは想定範囲内のことであり、本研究の目的達成のためには不可欠な作業および時間であり、今後の計画により、当初の目的のための実験は十分遂行できると確信している。ただし、これまでの実施内容は研究者が初めて経験することであり、他者に指示や任せることができず、すべて研究者自身が実施していたことも、達成度が遅れた原因の一つと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず簡易型若年女性サーマルマネキンを試作する。そして平成24年度に測定・検討する予定であった被服下の空気層の位置、形状および大きさを明らかにするために、非接触三次元人体計測器を使用して、着装時の簡易型高齢女性サーマルマネキンおよび若年女性サーマルマネキンを測定し、それぞれの空気層について明らかにするとともに両者を比較検討する。着衣実験服は高齢女性、若年女性とも2002~2004年に実施された夏季の着衣の調査結果を参考にして決定する。 次に、体幹部における着衣の被服表面温度を点ではなく面として捕らえるため、サーモショットを使用して温度分布を測定し、簡易型高齢女性サーマルマネキンと若年女性サーマルマネキンの結果を比較検討する。この際、各所のマネキン表面温度と被服表面温度は皮膚温度センサーを使用して測定する。 最後に、両者において着衣被服下に形成された空気層の位置、形状および大きさと温度分布の関係を、それぞれの体幹部の形状に着目して検討する。さらに両者を比較検討し、高齢女性の特徴を明確にする。 現在、「研究目的の達成度」が遅れているため、今後は実験補助など他者の助力を積極的に活用する方針である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は高齢女性の特徴を明確にするため、比較対照として簡易型若年女性サーマルマネキンを試作する。したがって20代女性平均的人体寸法ダミー(物品費、備品:525,000円)を使用して高齢女性サーマルマネキンの製作過程と同様の手順(リボンヒーター、銅版および銅箔テープ、キルト芯等物品費、消耗品:270,000円)にて、試作する。さらに、簡易型若年女性サーマルマネキンの完成後、高齢サーマルマネキン同様に各所のマネキン表面温度を皮膚温度センサー(物品費、消耗品:300,000円)を使用して測定し、部位別、体幹部全体が一定温度で一定時間安定することが可能な操作マニアルを作成する。 次に、高齢女性サーマルマネキンと若年女性サーマルマネキンを使用して、マネキンに夏季用の被服(物品費、消耗品:30,000円)を着衣させ、マネキンー被服間に形成される空気層の位置、形状および大きさを非接触三次元人体計測器を使用して着衣1枚ごとに計測し、1枚の場合、重ね着の場合など着衣による差やマネキンによる差などを、体幹部の形状に着目して比較検討する。 さらに、高齢女性サーマルマネキンの着衣時の温度分布をサーモショットを使用して撮影し、被服下の空気層との関係を検討する。 これらの実験には実験補助(人件費・謝金:172,000円)を依頼する。また、研究成果を所属学会において口頭発表(参加費および旅費:10,000円)する。 次年度使用額(204円)が生じた理由は、残金204円では消耗品として購入可能でかつ必要な物品がなく、次年度に請求する研究費(1,400,000)と合わせて使用した方が有効であると考えたからである。
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