2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500942
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
平島 円 三重大学, 教育学部, 准教授 (80390003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 亮 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30375563)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 澱粉 / テクスチャー / アルカリ性食品 / 糊化 / 老化 |
Research Abstract |
アルカリ性の状態における澱粉糊液と澱粉ゲルの糊化および老化過程の評価を行うために,アルカリ性物質の選定を行った.食品添加物に使用が許可されている水酸化カルシウム,炭酸ナトリウム,炭酸カルシウム,炭酸カリウム,炭酸水素ナトリウム,リン酸水素二カリウムの溶解性とpHについて検討した.0.125wt%アルカリ性物質水溶液のpHを比較すると,水酸化カルシウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウムのpHが11.0以上と高いことがわかった. これらの中から,溶解性の高い炭酸ナトリウムを最初にアルカリ性物質として選び,澱粉水懸濁液のpHを調整し,澱粉の糊化過程についてDSC測定により検討した.20wt%のタピオカ澱粉の糊化温度および糊化エンタルピーに及ぼす高pHの影響について調べたところ,pHの値が10.5未満では糊化温度と糊化エンタルピーの値はpHに依存せず,pHを調整していない澱粉(コントロール)と同様の値だった.しかし,pHの値が10.5以上になると糊化温度は高温側へ移行し,糊化エンタルピーの値は大きくなり,糊化が起こりにくくなると分かった. また,20wt%タピオカ澱粉糊液の定常ずり粘度測定の結果より,pHが10.5未満では糊液の粘度に変化はないが,pHが10.5以上になると粘度は低下した.また,糊液の顕微鏡観察により,高pHほど糊液中の澱粉粒子の数は減少することがわかった.糊液の透過度測定ではpHが高いほど高くなり,透明になるとわかった.したがって,pHを高くすると澱粉糊液中の澱粉粒子の数が減り,溶出したアミロースやアミロペクチンが多くなると考えられる. 今後,アルカリ性の食品と澱粉を混合するために,その代表となるこんにゃく粉水懸濁液と卵白の粘度測定も行った.こんにゃく粉水懸濁液の粘度の濃度依存性より,1wt%程度のこんにゃく粉濃度が粘度測定を行うに当たって扱いやすいことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルカリ性物質でpHを調整した澱粉の糊化はpH10.5未満ではほとんどpHによる影響はないが,10.5以上にpHを高くした澱粉の糊化は阻害されることがわかった.その影響により糊液の粘度は低下すると考えられるが,糊液中の澱粉粒子の数は減少し,糊液の透明性が高くなり,糊化が促進されたとも考えられる.澱粉の糊化温度や糊化エンタルピーは高pHにすると高くなるが,試料を調整するために95℃で40分加熱する間に澱粉の糊化は起こったとも考えられる. このように澱粉がアルカリ性下で起こる現象については把握することでき,おおむね順調に研究は進んでいるが,その原因を解明するまでには至っていない.そのため,澱粉糊液の固有粘度測定やアミロースやアミロペクチンの分子量の測定を行い,澱粉粒子から溶出したアミロースやアミロペクチンの状態についての解析を行う必要がある. また,今年度は研究の計画として挙げていなかったこんにゃく粉懸濁液や卵白の粘度測定を行うこともできたことからも,次年度以降に行う計画である澱粉とアルカリ性の食品の混合に関する基礎的なデータを得た.このことから次年度以降の研究も進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度のタピオカ澱粉の糊化過程に及ぼすアルカリ性による影響についての結果を踏まえながらアルカリ性におけるコーンスターチの糊化過程について検討する.アルカリ性物質および試料調製方法を同様に行い,コーンスターチのpHを調整して糊液の粘度測定,透過度測定,顕微鏡観察を行う.また,同様にコーンスターチゲルについても調製し,糊液及ぼすアルカリ性物質の影響とゲルに及ぼす影響について比較する. また,アルカリ性にしたタピオカ澱粉糊液およびコーンスターチ糊液の保存に伴う変化(老化特性)についての評価も行う. 澱粉の老化は,糊化により破壊された澱粉粒の緻密構造が時間の経過に伴い徐々に再形成することにより起こる.しかし,老化によって構成される不完全配列構造は澱粉濃度により異なるはずである.したがって老化した澱粉を再び加熱したとに起こる再糊化挙動は,老化時に進行した澱粉のパッキングの状態を反映するものと考えられる.そこで,種々の濃度で加熱し調製した澱粉分散液を低温で一定期間保存した後,老化澱粉の状態を評価する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はアミロースやアミロペクチンの糊液中での状態を解明できなかったことより,pHの幅を広く,細かく設定し,澱粉糊液の固有粘度測定を行う.また,アミロースとアミロペクチンの分子量測定も行う.そのため,次年度には今年度行わなかった固有粘度測定に必要な器具および試薬に研究費を使用する.
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Research Products
(5 results)
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[Book] CRC Press2013
Author(s)
Amos Nussinovich, Madoka Hirashima
Total Pages
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Publisher
Cooking Innovations: Using Hydrocolloids for thickening, Gelling, and Emulsification