2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500942
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
平島 円 三重大学, 教育学部, 准教授 (80390003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 亮 群馬大学, 理工学研究科, 助教 (30375563)
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Keywords | 澱粉 / テクスチャー / アルカリ性食品 / 糊化 / 老化 |
Research Abstract |
アルカリ性物質を添加し高pHにした澱粉の糊化と澱粉糊液の評価を行った.アルカリ性物質には炭酸ナトリウムを用いた.また,澱粉にはコーンスターチを用いた. 澱粉の糊化過程についてはDSC測定により検討した.20wt%のコーンスターチの糊化温度および糊化エンタルピーに及ぼす高pHの影響について調べたところ,pHの値が12未満では糊化温度はpHに依存せず,pHを調整していない澱粉(コントロール,pH6.5)と同様の値だった.pH12以上では糊化温度が高温側へ移行した.糊化エンタルピーはpHを高くするといずれのpHにおいても大きくなった.したがって,アルカリ性にすることにより,コーンスターチの糊化は起こりにくくなるとわかった.また,コーンスターチと前年度に検討したタピオカ澱粉を比較するとコーンスターチのほうがpHの影響を受けにくい傾向にあったが,高pHになるとコーンスターチの糊化は大きく阻害されるとわかった. 3wt%または4wt%のコーンスターチ糊液の粘度測定,顕微鏡観察,透過度測定により,糊化の起り方と糊液の特性について検討した.炭酸ナトリウムを添加してpHを高くした3wt%および4wt%コーンスターチ糊液の粘度はpHが11.5未満ではコントロールと同様だったが,pHが11.5以上になると粘度は高くなった.すなわち,糊化が阻害された影響はみられなかった.顕微鏡観察から,高pHにした糊液内の多くの澱粉粒子が崩壊し,多くのアミロースやアミロペクチンが溶出したことがわかった.また,透過度測定からはpH11付近の高pHの試料で最も透明度の高いことがわかった.したがって,アルカリ性にすることにより澱粉の糊化は阻害されるが,澱粉の糊化温度よりも高い温度で加熱することにより,糊化は充分に起こったと考えられる.これは炭酸ナトリウムが澱粉粒子内に入り込み澱粉の崩壊を促進したためと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は炭酸ナトリウムを用い,pHを高くすることで澱粉の糊化と澱粉糊液の特性について検討できた.また,昨年度はタピオカ澱粉で,今年度はコーンスターチを用いることにより澱粉の違いによるアルカリ性物質の影響についても検討できた.その結果,タピオカ澱粉のほうがコーンスターチと比べて低いpHからアルカリ性物質の影響を受けやすいとわかった. いずれの澱粉においても高pHにすることにより澱粉の糊化は阻害されたが,高温で加熱することにより,澱粉の糊化は起こるとわかった.そのため,澱粉糊液の粘度は高pHにおいて高くなった.炭酸ナトリウムは澱粉粒子に作用しやすく,澱粉粒子の崩壊を促進するとわかった.このように澱粉がアルカリ性下で起こる現象については把握することができ,おおむね順調に研究は進んでいるが,その原因を解明するまでには至っていない.その分析のため,澱粉粒子から溶出したアミロースやアミロペクチンの状態についての解析を行う必要があり,澱粉糊液の固有粘度測定を行ったが,澱粉の溶解度の問題があり,澱粉粒子から溶出したアミロースやアミロペクチン鎖の長さについての評価ができなかった.そこで次の手段としてアミロースやアミロペクチンの分子量の測定方方法について調べ,測定をを行う準備を進めている. また,澱粉濃度を変えての検討やさらに澱粉の種類やアルカリ性物質の種類を変えて検討することで,アルカリ性物質が澱粉に作用する方法について系統立てて検討する必要がある.次年度はこれらの検討に取り掛かる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度のコーンスターチの糊化過程に及ぼすアルカリ性による影響についての結果を踏まえながらアルカリ性におけるコーンスターチゲルの状態について検討する.数種のアルカリ性物質を用いてコーンスターチ分散液のpHを調整してゲルの一軸圧縮測定を行う. また,タピオカ澱粉糊液やコーンスターチ糊液,コーンスターチゲルを保存することにより,老化過程について検討する.老化についてはDSC測定,離水測定,透過度測定および一軸圧縮測定により評価する.澱粉の老化は,糊化により破壊された澱粉粒子の緻密構造が時間の経過に伴い徐々に再形成することにより起こる.しかし,老化によって構成される不完全配列構造は澱粉により異なるはずである.したがって老化した澱粉を再び加熱したとに起こる再糊化挙動は,老化時に進行した澱粉のパッキングの状態を反映するものと考えられる.そこで,種々の澱粉を用いて調製した澱粉分散液を低温で一定期間保存した後,老化澱粉の状態を評価する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はアミロースやアミロペクチンの糊液中での状態を解明するため,固有粘度測定を行ったが,アミロースやアミロペクチンの溶解方法が問題となり,うまく測定できなかった.そのため,固有粘度測定は予定していた通りに行うことができなかったため. 次年度には今年度行わなかったアミロースとアミロペクチンの分子量測定を行うために必要な器具および試薬に研究費を使用する.
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Research Products
(7 results)