2012 Fiscal Year Research-status Report
食品の物理的な”味”が近赤外吸収スペクトルに及ぼすアクションの解明
Project/Area Number |
24500946
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
陳 介余 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (20315584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 函 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10315608)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 近赤外分光法 / 物理的味 / テクスチャー / 物性 / 非破壊 / 化学的味 |
Research Abstract |
近赤外分光法は、迅速的かつ非破壊的手法としてこれまでは成分の吸収に基づいた食品の化学的“味”の分析に利用されたが、近赤外スペクトルは成分に左右されるだけではなく、食品の組織構造にも影響されているので、食品の物理的な“味”の分析での利用が期待されている。本年度の研究では、りんごや、乾麺およびフライポテト等の食品の形態に応じた近赤外スペクトル測定用のプローブの試作およびスペクトルの測定システムを考案したとともに、これらの食品の物性値(テクスチャーに関わるもの)と近赤外スペクトルとの関連性を検討した。十種類のりんご試料に対し、その官能評価試験による食味評価値およびテンシプレッサーによる物性測定値とその近赤外スペクトル(700-1100nm)の関連性をケモメトリックスの手法で検討した結果、近赤外スペクトルはいずれの物性値に密接に関係していることが認められた。また理化学機器測定よりも近赤外スペクトルによるりんごの物理的“味”の予測値のほうが官能評価値により近かったことが示された。さらに数十種類の乾麺試料に対しも、りんご試験と同様にその茹で麺の官能評価を行ったとともに、テンシプレッサーによる物性測定を行い、乾麺の近赤外スペクトルとの関連性を探ってみた。その結果、弾力、粘りや硬さなどの主要官能評価テクスチャー項目および機器による物性測定値は、乾麺の近赤外スペクトルに関わり、強い影響を与えていることが分かった。近赤外スペクトルによる乾麺の品質評価の可能性が示された。現在、食品の物性変化がその近赤外スペクトルに及ぼすアクションを検討するため、貯蔵に伴うりんごの物性変化およびその近赤外スペクトルへの影響を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①2012年度の計画通り研究を実施した。近赤外スペクトル測定用のプローブの開発とその測定システムの構築を計画通り順調に進めた。実際に各種の食品のスペクトル測定に応用し、スペクトルに含まれている食品内部の情報を検討した結果、スペクトルには成分だけではなく物性に関わる情報も多く含まれていることがわかり、概ね食品の形態に応じた近赤外スペクトルの測定システムが有効であることが分かった。もちろん、改善必要なところも見つけたことで今年度ではプローブの改善を行いながら研究試験を実施していく予定である。また物性と近赤外スペクトルの関連性をりんごや乾麺等を用いて明らかにした。これらの研究成果は今年の6月の第16回国際近赤外大会において研究発表を予定している。 ②2013年度の計画実施は順調にはじめている。昨年度の後半から、今年度の研究実施を検討したことで、現在順調に今年度の研究計画を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、平成24年度の研究結果を踏まえて、国内・国外の研究会・学会大会などで資料収集および研究発表を行いながら、そこでの議論を踏まえて研究を実施したいと考えている。 まず、食品各々の形態に応じたスペクトル測定用のプローブの改良および最適な近赤外スペクトル測定システムの構築をめざして、今年度もスペクトルの計測精度およびそのスペクトルを用いた食品内部成分の計測精度を検討しながら、スペクトル測定用のプローブの改良を行う。 次に貯蔵に伴う食品の組織構造の変化の解明および近赤外スペクトルに及ぼす影響の解明をめざして、以上の検討を踏まえて、貯蔵に伴う食品の内部変化(組織構造や成分組成)を明らかにすると同時に、近赤外吸収スペクトルに与える影響を明らかにする。さらに近赤外吸収スペクトルに対し、OSCおよびMSC等のケモメトリックス手法で処理を施しながら貯蔵に伴う食品の組織構造の変化と近赤外吸収スペクトル変動との関係を明らかにする。 さらに食品の物理的な“味”を生む組織構造の解明および近赤外スペクトルとの関連性の解明をめざして、食品の物理的な“味”を生む組織構成と組織構造の力学的モデルの考案を試み、さらにそれに適応できる食品試料の光学的モデルの考案を試み、食品の成分含量や成分組成などの成分関係だけではなく、食品の“形”を形成する組織成分と構造も近赤外吸収スペクトルにどのように関わっているかを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用額(B-A)」」欄に141,463円の残金が残っている。これは、主に当初予定の旅費(40万円)に対し、実際タイバンコクでの近赤外アジア大会研究発表費用(約30万円)からの差額である。この差額は今年度に予定した国際近赤外大会の研究発表旅費(40万円予定)の不足部分を補うことで、今年度の予算は申請書の計画とおりで進めたいと考えている。 今年度の交付請求金額:1,300,000円 消耗品の部品費:535,000円、旅費:400,000円、人件費・謝金:315,000円、その他:50,000円
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