2013 Fiscal Year Research-status Report
食品の物理的な”味”が近赤外吸収スペクトルに及ぼすアクションの解明
Project/Area Number |
24500946
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
陳 介余 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (20315584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 函 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10315608)
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Keywords | テクスチャー / 物性 / 近赤外分光法 / 物理的”味” / 化学的”味” / 非破壊 / 美味しさ |
Research Abstract |
近赤外スペクトルは含有成分に左右されるだけではなく、食品の組織構造にも影響されているので、食品の物理的な“味”の分析での利用可能性が秘められている。本年度では、引き続いてりんごをはじめ、麺類や、飯粒およびフライポテト等の食品の形態に応じた近赤外スペクトル測定用のプローブを改良し、安定的なスペクトルを測定できるシステムの構築を行った。同時にりんごを試料として用い、低温と常温の貯蔵試験を行いながら、りんごの物性変化とスペクトルの変化を検討した。いずれの品種のりんごにおいて、貯蔵に伴うりんごのスペクトル変化が確認され、さらにりんごの物性値と成分値の変化との関連性を検討した結果、りんごの硬さ、弾力とサクサク感に関わる物性測定値が近赤外スペクトルとは密接な関係を示し、両者の間には比較的高い相関が得られ、近赤外分光法によるりんごの物理的な“味”の分析の可能性を示した。りんごの物理的な“味”の予測モデルのローデングプロットを検討した結果、糖や酸等の味成分の主な吸収バンドと違ったC-H官能基による吸収が確認され、りんご構造に関わるペクチンの吸収可能性を示した。また乾麺の近赤外スペクトルと茹で麺の物性測定値および官能評価値との間には高い相関があり、両者の密接な関係が示された。製造方法と原料の違いに生じた乾麺の内部構造による茹で麺の物理的な“味”の予測可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 2013年度の計画通り本研究を実施した。前年度に考案した近赤外スペクトル測定用のプローブの改良を行い、より安定的な近赤外スペクトルの測定システムを構築した。実際に乾麺のままでの近赤外スペクトル、飯粒の近赤外スペクトル、およびフライポテトの近赤外スペクトル等のスペクトル測定に応用してその分散スペクトルを検討した結果、安定的なスペクトルが得られた。また、貯蔵に伴う食品の組織構造の変化の解明および近赤外スペクトルに及ぼす影響の解明については、計画とおり、りんごの常温と低温の貯蔵試験を実施した上で、りんごの硬さ、弾力とサクサク感と関わる物性測定値が近赤外スペクトルとは密接な関係があることを明らかにした。 ② 2014年度の研究計画は順調に実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では、25年度までの研究結果を踏まえて、国内外の学術大会に積極的に参加して、研究発表を通じて議論を重ねると同時に関連資料を収集して研究を進める。 まず、試験サンプル数および品種を増やして、りんごの貯蔵試験をさらに行う。貯蔵に伴う食品の組織構造の変化が近赤外スペクトルに及ぼすアクションを明らかにし、貯蔵に伴う食品の組織構造の変化と近赤外吸収スペクトル変動との関連性を明らかにすると同時に、貯蔵に伴う食品の物性値の変化をその近赤外スペクトルによる高精度な予測モデルの構築を試みる。 次にりんごや、乾麺などの食品試料に対して、品種の種類を増やして、官能評価と物性測定および化学分析を同時に行い、試料の近赤外スペクトルとの関係を明らかにすると同時に、化学成分の変化がもたらす食品の物性予測値への影響を検討する。さらに近赤外スペクトルに対して効果的な前処理を施しながら、テクスチャープロファイルと近赤外吸収スペクトルの関係をPLS2回帰分析法で分析を行い、化学的“味”および物理的“味”と美味しさの予測モデルの構築を試みて、その関連性を検討する。これらの予測モデルの妥当性や予測精度を検討したうえで、食品の組織構造に基づいた現象による食品のテクスチャーの計測可能性を明らかにする。 さらに食品の形状や形態の影響を低減するため、計測システムの多数回測定の可能性を探りながら、測定回数と予測精度との関係を明らかにした上で、高精度な食品テクスチャーの計測の可能性を検討する。 最後に食品の物理的な“味”(テクスチャー)と近赤外吸収スペクトルの関連性、食品の物理的な“味”を生む組織構造と近赤外スペクトルの関連性、および近赤外吸収スペクトルによる食品のテクスチャーの非破壊計測技術の可能性に関する検討結果について、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これは、主に当初予定の研究補助出費(30万円)に対し、県立大学の通常研究から出費したため実際の出費(約5万円)を抑えた結果からの差額である。 この差額は今年の小型分光器を用いた近赤外スペクトル測定システムの構築費用および国内外学術大会参加の旅費の不足部分を補う予定で、今年度の予算は計画とおりで進めたいと考えている。
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