2012 Fiscal Year Research-status Report
微粉米粉の特性をいかした機能性食品の創製から応用に関する研究
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24500953
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
市川 朝子 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (30141295)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 米粉 / テクスチャー / グルテンフリー米粉パン / 官能評価 / シュー皮 / ルウ・ソース |
Research Abstract |
日本の食糧自給率を高い値に維持することは日本人の食生活を安定に維持するために欠かせない。そこで、日本の気象条件・風土に適した数多くの食糧を供給できる食物に対する環境づくりも重要な要件となる。そのなかで米は上述の条件を満たす食料の1つであり、しかも米を粒状で主食とする食生活の継続は日本人にとってきわめて合理的な食形態の方法であった。しかしながら、日本人の食生活の様相は時代とともに激変し、今や1980年代に1人が消費する米消費量に比べ半量近くまで減少している。絶対量の低下と併せ相対的に主食として増加し続けているのが小麦粉を用いた種々の製品である。日本の気象条件はそれらの原料となる小麦の栽培には適さない。それならば、米を米粉としてその米粉に小麦粉のもつ機能性を付加し、小麦粉と同様な製品の調製が試みられるようにしたい、というのが本研究の目標である。小麦粉の調理性は大きく3種類に分類して考えられる。まず第一が、小麦粉に含まれる特殊タンパク質同士が調製過程で形成されてできるグルテンの機能性を生かす調理(パン、中華料理の皮など)である。第二は適度のグルテン構造と主成分であるでんぷんの構造を生かした機能性をもつ調理(ケーキ、天ぷらの衣など)であり、第三としては主にでんぷんの機能性を生かした調理(とろみづけなど)である。 これら各々の機能性を生かした代表的な調理各々について、小麦粉を用いた場合の良好な製品の条件を、物性面と官能評価から捉え、その上で米粉を用いた場合のより好ましい機能性を有する製品を調製するための各種条件について、検討をおこなっているところである。今後、平成26年度までに前述した小麦粉の第一から第三までの機能を有する各々の代表的な調理例について米粉での応用について総括して行きたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に関しては、小麦粉の第一の調理性として挙げたグルテンの機能性を主とした製品としてまずグルテンフリー米粉パンについての調製条件を引き続き検討した。今回は、菓子パンに用いられる生地を対象として、今までと同様、米粉のうち一定量を米粉糊とし、さらに絹フィブロインを形状保持剤として加える方法で調製した。菓子パン生地の場合には、本来の食パン生地の材料にさらに鶏卵が加わることから、この鶏卵の起泡性も生かすことで米粉パンの組織構造を保持しやすくすることが可能となった。 また、小麦粉の第二の機能性を利用するシュー皮についても、米粉が小麦粉に比べてより吸水性が高いことを考慮して、主として調製時に加える水の量をコントロールすることで小麦粉(薄力粉)を用いた場合とほぼ遜色ないシュー皮を調製することが可能となった。 さらに、小麦粉の第三の機能性の利用としてカレールウなどは、米粉を利用することで日本人の食生活においてかなりの消費量が見込まれることから、スープ類・ソース類への利用としてホワイトルウ、ブラウンルウの調製条件についても検討していく予定である。 さらに上述したシュー皮への米粉の利用に関しては、中に加えるカスタードクリームについても好ましい性状の米粉からのクリームの調製条件と併せて、“米粉から作るシュークリーム”製品を完成させていきたい。 主食として用いられるパンの種々の検討を含め、一年目の成果としてはほぼ予定通り進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの達成度】のところに記したように、第1年目は予定していた計画の多少の方向変更は生じたものの、概要に記した方向の結果が最終的には得られるように検討していきたい。実験を進めていく過程において想定していなかった方向に展開する可能性も生じうることであり、今後も研究計画との微妙な変更は起こることは推定される。 平成25年度には特に第三の調理性である“汁などのとろみづけ”に利用される場合の調製条件について、米粉を用いた場合の特徴が生かせるよう検討してゆく。西洋料理で用いる“汁などのとろみづけ”は、中華料理で用いるでんぷん(片栗粉)のとろみづけとは、製品のもつ“こく”に違いがある。単に濃度を加えるだけでなく、小麦粉とバターを炒めてから用いることによりその香りや色などに特徴が生かされる。米粉の調理特性の1つに、吸油量が小麦粉に比べて抑えられる、という特徴があり、ルウ調製時に用いるバターの適量が減量することも栄養面から期待される。ホワイトルウ、ブラウンルウ、いずれに対しても幅広く米粉に適した調製条件を各々の調理を想定した上で探っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今回、「微粉米粉の特性をいかした機能性食品の創製から応用に関する研究」の課題に関して申請した機器1台分のクリープメーター(山電製)を改修することが出来たことで、我々の調理科学研究室では学生の実験スケジュールに併せて3台のクリープメーターを稼働することができるようになり、機能的かつ合理的に実験計画が組める環境を整わせていただくことが可能となりつつある。ただし、測定後データーを分析する解析装置の1つはいまだに旧式のもので処理操作に時間を要するため、本年度はこの解析装置について、新設することを考えている。また、いろいろな調理を科学的に行い条件設定を整えるためには、食品の内部温度を捉えながら加熱操作できるように昇温記録装置を備えたオーブンの設置も計画している。この装置を設置することにより、例えば従来からよい焼成条件とされてきたシュー皮の加熱条件〔初期高温(膨化機構:200℃)、続いて中温(形状形成保持:170℃)、最終段階に消温下(形状保持)〕についても、生地の膨化状態と生地内部温度の変化を継続的に捉えることで、これまでとは異なる簡便な加熱条件での調製を可能とすることが出来るものと考えている。 各装置の価格については、現在、問い合わせ中である。
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Research Products
(4 results)