2013 Fiscal Year Research-status Report
風味の向上を目指す香辛野菜の香りの発現・分解制御に対する多面的解析
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24500955
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
飯島 陽子 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 准教授 (90415456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 秀幸 公益財団法人かずさDNA研究所, その他部局等, 研究員 (80276162)
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Keywords | 香辛野菜 / 香気成分 / メタボローム / モノテルペン / ショウガ / サンショウ / 色素 |
Research Abstract |
今年度の研究実績は以下の通りである。 1.サンショウは、ミカン科Zanthoxylum属(サンショウ属)に分類されるが、Zanthoxylumの香気特性についてよくわかっていない。そこで、6種の異なるZanthoxylum属を入手し、その若葉を用いてメタボローム分析により組成を比較した。その結果、種によってモノテルペン類の組成が大きく異なることが分かった。我々が食材とするサンショウはZanthoxylum piperitumであるが、特徴香気であるcitronellalは、ほぼ特異的に存在することが分かった。 2.サンショウにおけるcitronellal生成について、粗酵素系で生成経路を推測したところ、citralを基質とし、二重結合還元酵素によるものであることが示唆された。そこで、サンショウ果実を用いてESTデータベースを作成し、他の植物種の二重結合還元酵素遺伝子と相同性の高い候補遺伝子をスクリーニングし完全長cDNAを得た。現在、大腸菌による組み換えタンパク質を作成し、酵素活性を確認しているところである。 3.ショウガについては、昨年取得した3種の酵素遺伝子(エステラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アセチルトランスフェラーゼ)について、大腸菌などによる組み換えタンパク質を作成し、酵素活性を確認している。 4.ショウガは調理加工(加熱調理・すりおろしチューブなど)をしてから食されることも多い。市販のすりおろしチューブと生鮮ショウガの香気プロファイルを比較し、まず、どのような香気成分が変動するのかを確認した。今後は、モデル系において成分変動をみていく予定である。 5.またショウガについては、研究を進める過程で香気のみならず黄色色素も品質に影響を及ぼすことが推測された。この黄色色素成分についてはこれまでに報告がなかったことから、成分の同定を行い、品種間の差を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、香辛野菜であるショウガとサンショウを対象に、①特徴香気成分の生成機構を調べることと、②メタボローム解析による香気成分プロファイルや香気成分の調理加工における消長を調べることの二つを課題としている。現在までに、平行して進行させている。①については、候補遺伝子は取得できたものの、組み換え酵素の可溶化がうまくいかず、現在ベクターを変えて進めているところであり、若干遅れている。②については、特にショウガについて、香気捕集法やモデル系の構築を行い、ほぼ順調に進めることができている。今後は、変動のある成分に着目し、構造決定などを行う予定である。また、本研究を進めるにあたり、ショウガについては香気特性のみならず色素特性も品質に関与することが推測され、色素特性に関与する成分の構造を明らかにすることができた(現在論文投稿中)。
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Strategy for Future Research Activity |
現在ではほぼ予定どおり研究を進めているが、香気生合成に関与する遺伝子のスクリーニング・機能同定に時間がかかっている。今回、サンショウについては香気成分組成が異なる種があることが分かったので、リアルタイムPCRなどを用いて、候補遺伝子の発現の有無により候補遺伝子のスクリーニングの効率を高める予定である。また、これまでに大腸菌を用いて組み換え酵素の作成を試みていたが、今後は酵母や昆虫細胞などを用いて作成する系を立ち上げたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子生物学実験の試薬(プライマー作成、酵素など)のために使用予定であったが、この実験が遅れたため次年度使用とした。試薬については消費期限等があるため、あらかじめ購入するのではなく、実験の進捗に合わせて購入したいと考えたためである。 次年度に、分子生物学実験の試薬として使用予定である。
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