2013 Fiscal Year Research-status Report
小麦澱粉の糊化過程におけるリン脂質の動態と物性との関係
Project/Area Number |
24500961
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Research Institution | Sanyo Women's College |
Principal Investigator |
石永 正隆 山陽女子短期大学, その他部局等, 教授 (70110765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 寿美 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (10300419)
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Keywords | 小麦澱粉 / 糊化 / リゾレシチン / RVA / レシチン / 大粒子 / 小粒子 |
Research Abstract |
A.小麦澱粉糊液の粘度上昇中に、WSBによる常温抽出画分のLPC量が、熱抽出画分より著しく高くなる。本研究はこのLPCの存在状態を明らかにすることを目的としている。今回、ゲル化した糊液を再度95℃まで加熱した。その糊液の熱抽出画分のLPCは減少し、逆に常温抽出画分のLPCが増大した。熱抽出画分のLPCの脂肪酸組成では16:0の割合が50%で、この現象は1回目の粘度上昇中の糊液からの常温および熱抽出の場合と全く同じであった。このことから、澱粉粒には、糊液の物理的状態がどうであれ、16:0を50%含むようなLPCは熱抽出の場合のみで抽出され、安定なamylose-LPC複合体を形成していることが解った。従って、既報の結果と合わせて考えると、常温抽出のLPCは澱粉多糖と緩く結合していると推論した。 B1.モチ小麦澱粉のRVA特性に対するLPCの影響を調べたところ、0.1~1.0%(w/w)のLPCでは、ピーク粘度に僅かに影響を与えたのみであった。ウルチ小麦澱粉及び大粒澱粉と小粒澱粉それぞれのRVA特性に対するLPCの影響を調べた。LPCの濃度が高くなるにつれて、いずれの澱粉でも粘度上昇温度が高くなった。また、高濃度のLPCでは、これまで報告されている結果と同様に粘度が著しく低下した。 B2. 熱抽出画分へのPCの取り込みについて、小麦澱粉と大粒澱粉と小粒澱粉の3者で比べると小粒澱粉の方が多かった。PCのこれらの澱粉のRVA特性に対する影響を調べた。0.1~1.0%(w/w)のPCでは、いずれの澱粉も粘度上昇温度が低下し、同時にピーク粘度に達する時間も短くなった。ピーク粘度については、小粒澱粉は無添加に比して60%ほど高くなった。一方、モチ小麦澱粉に対しては、ピーク粘度にわずかに影響を与えたのみであった。以上の結果は、多くの乳化剤やLPC添加で得られた結果とは逆の現象である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実施計画の進捗状況 25年度実施予定のA「ゲル状態の糊液において再度熱抽出画分でLPL 量が多くなる理由、及び小麦粉の場合にはアシルPE量も多くなる理由の解明」(元来24年度に終了予定)とB「アミロースとアミロペクチン比とゲル糊液へのレシチン取り込みとの関係及び粘度特性(RVA の粘度曲線より)に関する研究」であるが、Aに関する研究のアシルPEについては重要度から鑑みて低いと判断した。メタノール及びエタノール抽出による遊離LPCの確認作業よりも、ゲル化した糊液に本来のアミロースLPL複合体が形成されているかどうかの方が重要と考え、ゲル化後再加熱実験を行った。その後、Bに関する研究を開始した。が、取り込み実験を行っている時に、異なる粒子の澱粉のRVA特性に対するLPC及びPCの影響を調べることを先に実験した方が良いと判断した。 以上のことから25年度実施予定だったアミロースとアミロペクチン比を変化させて、PCの取り込み測定する実験は26年度に行うこととした。 このように遅れている理由は次の通りである。 24年度分がずれ込んできたこと(ゲル化後再加熱実験)に加え、授業と学長の任務を遂行しながらの研究であること、実験補助者との時間調整が十分とれなかったことがある。もう一つは、実験の確認作業を行っている時に、これまで知られていない現象を見いだし、PCやLPCの取り込みや物性を調べる前に、この現象について実験することが大事であると認識し、先行してこの実験を行ったことも遅れた理由の要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.新課題 0.05、0.5%のLPCを用いて、糊液(pastingやgelling)の熱抽出画分にLPCが回収される量を、ウルチ澱粉とモチ澱粉を用いて調べる。これは外因性のLPCが澱粉多糖と緩い結合をするかどうかを調べる実験である。 2.PCと澱粉の重量比を変化させ、糊化→ゲル化過程において、取り込み量が最大になる条件を探る。大粒澱粉あるいは小粒澱粉についても行う。 3.アミロースとアミロペクチン比とゲル糊液へのPC取り込みとの関係及びRVA特性に関する実験を行う。 4.時間的に可能ならば、通常の小麦澱粉や「アミロースとアミロペクチンの割合を変化させた澱粉」に、PCを添加した時の動的粘弾性(温度依存性や周波数依存性)を測定する。特に、PC添加は粘度上昇温度を低下させるので重要と思われる。また、小麦澱粉にLPCを添加した時の動的粘弾性も測定する。
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Research Products
(1 results)