2013 Fiscal Year Research-status Report
カロテノイドの選択的吸収機構と生体利用性に関する研究
Project/Area Number |
24500962
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
小竹 英一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品素材科学研究領域, 主任研究員 (20547236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長尾 昭彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品素材科学研究領域, 上席研究員 (40353958)
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Keywords | カロテノイド / 生体利用性 |
Research Abstract |
ヒトは40種類ものカロテノイドを食品から摂取するが、体内に蓄積される種類は限られている。生体にはカロテノイドに対する未知の選択的吸収・蓄積機構が存在し、生体利用性と密接に関わっていると考えられる。このような選択的吸収機構を解明し、カロテノイドの生体利用性向上を図るため、平成25年度は、吸収選択性にかかわる①受容体SR-B1/トランスポーターNPC1L1と②排泄トランスポーターの両方の関与について検討を行った。 ①SR-B1/NPC1L1について:阻害剤を用いてSR-B1/NPC1L1依存率を算出した。平成24年度検討した5種類以外の極性の異なる2種類のカロテノイドについての知見を新たに加えた。予想通り、極性の高い種類ほどSR-B1/NPC1L1依存率は低くなり、カロテノイドの種類によりSR-B1/NPC1L1経由での吸収に差があることがより強く示された。さらに、SR-B1/NPC1L1のsiRNAによるノックダウン試験も開始した。阻害剤実験ではわからないSR-B1とNPC1L1のどちらが関与か、両方とも関与なのかが解明できる。 ②排泄トランスポーターについて:SR-B1/NPC1L1による促進拡散は確かに選択的吸収機構の一端を担っていることがわかったが、単純拡散経路が存在するので、SR-B1/NPC1L1の吸収特異性だけで高極性カロテノイドがヒト血中に存在しない理由は説明できない。通常の食事下、高極性カロテノイドは腸管内で排泄トランスポーターによって管腔側に排泄されて、その結果吸収されないとの仮説を立て、これを検証する。平成25年度は代表的排泄トランスポーターMDR1について調べたが、無関与との結論に至った。平成26年度は次の候補のABCG5/ABCG8の関与について調べる。このような排泄経路の関与が証明できれば選択的吸収機構の全容が解明でき、生体利用性向上を図れる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
カロテノイドの吸収におけるSR-B1/NPC1L1の影響について、阻害剤エゼチミブを用いた実験で概ね予想通りの成果が得られている。すなわち、極性の高い種類ほどSR-B1/NPC1L1依存率は低下し、高極性のフコキサンチンに至っては依存率ゼロであった。エゼチミブは吸収受容体SR-B1と吸収トランスポーターNPC1L1の両方を阻害すると考えられ、どちらが関与しているか不明である。そこで、それぞれ個別にその影響を検討するためにsiRNAを用いて検討する。しかし、腸管モデルとして使用する分化Caco-2細胞のように長期の培養により細胞が一枚膜シート状に達してしまったような場合、通常のリポフェクションでのsiRNA導入は極めて困難であり、対処法を検討している。 一方、代表的な排泄トランスポーターMDR1のカロテノイドの吸収への関与について、3種類以上の阻害剤、2種類の細胞を使い、MDR1の基質となるローダミン123が排泄されることを確認した実験系で検討した。しかし、Caco-2だけでなくMDR1発現量が非常に高い肝臓のモデル細胞HepG2に対しても、MDR1の関与が全く認められなかったため、別の排泄トランスポーターの関与が考えられた。この場合にもsiRNAによるノックダウンによる検討を考えていたため、別の方法も合わせて検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は引き続き、SR-B1/NPC1L1のsiRNAを用いてのノックダウン試験を行う。これにより、阻害剤試験では不明なままの、SR-B1、NPC1L1どちらか、あるいは両方の関与の程度が明確となるはずであった。しかし、siRNA導入が困難という問題に直面している。最近、リポフェクトアミン3000が市販されたが、このような新規のリポフェクション試薬の利用も検討すると同時に、一枚膜シート状ではなく、細胞懸濁状態でのsiRNA導入を試みる。 一方の排泄経路に関しては、次の候補であるABCG5/ABCG8の関与について検討を行う。この場合もsiRNAを使って解析予定であったが、導入が困難というSR-B1/NPC1L1の時と共通の問題が解決されていない。上と同様の手法でsiRNA導入を試みると同時に、次のような別の方法でも検討を行う。ABCG5/ABCG8の阻害剤は今のところ存在していないが、これらの生理的な基質である植物ステロールを使って、その共存下あるいはプレインキュベート下でカロテノイドの吸収への影響を検討する。吸収が増加した場合は、ABCG5/ABCG8の関与があったと考えられる。必要であれば肝臓の細胞でも検討する。 この他、実施計画に基づき、植物ステロール以外の食品成分についてもカロテノイドの可溶化や吸収に与える影響について検討を加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、研究費を効率的に使用して発生した残額である。 次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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