2014 Fiscal Year Annual Research Report
おいしさと記憶の相互作用による脳内食行動調節機構の解明
Project/Area Number |
24500973
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
乾 賢 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (40324735)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳 / 記憶 / おいしさ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成24、25年度において、実験動物(ラット)の味溶液摂取(リック)と味溶液へのアプローチ行動を同時に記録するための実験装置を作製し、記録・分析方法を確立した。そこで、平成26年度前半では、味覚嫌悪学習の獲得前後での行動の変化を詳細に調べた。動物は嫌悪を獲得した味溶液に対してアプローチしながらも、摂取しない状況を高い頻度で示すことが分かった。この状況は、喉の渇きによる接近要因と、獲得された記憶による回避要因がコンフリクト(葛藤)に陥ることで生じると考えられた。 味覚嫌悪学習の成立後に条件刺激のみを呈示するテストを繰り返すと、記憶の消去によって摂取量が経日的に増えていく。しかしその差は僅かであり、有意な変化の検出は容易ではない。そこで、コンフリクトの表出時間や回数を計測すると、顕著な経日的変化がみられた。このため、コンフリクトは記憶の強さを示す高感度の指標であるといえる。一方、リック行動に関しては、高嗜好性味溶液に対してバースト(間隔が0.2秒以下の高頻度リック)が多くみられることが知られている。本研究において、このバーストの変化は摂取量の変化に比べて明確な変化を示した。このことから、バーストによって条件刺激に対する嫌悪の強さを表すことができると考えられる。 平成26年度の後半では上述のコンフリクトとバーストを指標として、扁桃体基底外側核が味覚嫌悪学習による嗜好性(おいしさ)の変化と記憶の成立のどちらに関与しているかを調べた。具体的には、扁桃体基底外側核に神経活動を一時的に停止させる作用のある薬物を注入し、コンフリクトとバーストに及ぼす影響を調べた。薬物を注入された動物では、コンフリクトが有意に減少し、バーストの表出時間が有意に増加した。これらの結果から、扁桃体基底外側核は、味覚嫌悪学習における嗜好性の変化と記憶の成立の両方に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Research Products
(7 results)