2012 Fiscal Year Research-status Report
エストロゲンによる摂食抑制と摂食行動日内リズム調節の関連の機序解明
Project/Area Number |
24500975
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
鷹股 亮 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (00264755)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エストロゲン / 摂食調節 / 日内リズム / 視交叉上核 / 光環境 |
Research Abstract |
エストロゲンに摂食抑制作用、抗肥満作用があることは、古くから知られている。しかし、そのメカニズムについては未だに不明な点が多い。閉経後女性の肥満、生活習慣病の予防の為に、エストロゲンの摂食抑制作用、抗肥満作用のメカニズムの解明が望まれている。我々はこれまでに、卵巣摘出ラットのおいてエストロゲン補充は明期(非活動期)に特異的に摂食量を減少させ、生体リズム中枢である視交叉上核(SCN)におけるc-Fos発現を増加させることを報告してきた。 本年度は、まずエストロゲンによる明期に特異的な摂食量の低下が、光依存性であるのかについて検討した。7週齢のメスラットの卵巣を摘出し、エストレジオールを補充したE2群と補充しないVehicle(Veh)群の2群に分けた。エストロゲン補充開始2週間後まで7:00点灯、19:00消灯の12時間/12時間明暗(LD)サイクルで飼育した後、恒常暗(DD)環境にラットを2日間にわたり曝露した。LD環境では、E2群の摂食量はVeh群に比べて明期に有意に少なく、暗期には両群間で差が無かった。DD曝露により、E2群では、主観的明期に摂食量が増加したが、Veh群では変化が無く、両群の差が無くなった。主観的暗期の摂食量は両群ともDD曝露の影響を受けなかった。SCNにおけるc-Fos発現は、LD環境では、明期に特異的にE2群でVeh群よりも多かった。DD曝露によりE2群では、主観的明期のSCN(特に光の影響を受ける腹外側)におけるc-Fos発現が増加したが、Veh群ではDD曝露の影響は受けなかった。また、主観的暗期のSCNにおけるc-Fos発現は、両群ともDD曝露の影響を受けなかった。以上より、エストロゲンの摂食抑制作用は光依存性であり、エストロゲンによる光に対する感受性の上昇が関与している可能性が強く示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、エストロゲンによる明期の摂食抑制作用は、光依存性なのかについて検討することを目的として実験を行った。光環境を変化させた際の摂食行動と視交叉上核の神経活動に及ぼすエストロゲンの影響について検討した。当初の計画に沿って実験を行い、エストロゲンの摂食抑制作用が光依存性であるという結果を得ることができた。研究概要では述べていないが、恒常明環境での実験も行い、エストロゲンは、視交叉上核における光反応性のc-Fos発現を亢進させることも明らかになった。更に、エストロゲンが時計遺伝子産物であるPer1やBmal1の発現の日内リズムを明期の後半に影響することを明らかにした。 これらの結果についての一部は、学会ですでに発表または発表予定で、現在論文作成をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画に基づいて、研究を進めていく予定である。現在のところ、研究は概ね計画とおりに進んでおり、研究計画の変更の予定は無く、計画通り研究を進める予定であるが、更に詳細な行動解析を行う予定である。 また、研究成果を学術論文で公表するための時間と経費を割り当てる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、研究が比較的順調に進展したため、該当研究費が生じた。 次年度は、研究計画に基づいて、実験動物・消耗品を購入してさらに研究を進めていく予定である。更に研究成果を論文として公表するために、英文校正や論文投稿、別刷などの経費を使用する予定である。
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