2012 Fiscal Year Research-status Report
劣化脂質による胆道がん発症機構とその制御に関する検討
Project/Area Number |
24500977
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田妻 進 広島大学, 大学病院, 教授 (80201614)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 劣化脂質 / リゾレシチン / Gタンパク共役型受容体 / 胆管上皮 / アポトーシス |
Research Abstract |
本研究では脂質成分(特に劣化脂質)と発がんの因果関係に着目して、脂質に豊富な胆汁に曝露される胆道(胆嚢・胆管)発がんへの劣化脂質の関与と、その調節による予防的治療戦略を提案することを目指して遂行している。当該年度においては、臨床的には、胆道疾患患者胆汁をドレナージおよび経鼻内視鏡的に採取して劣化脂質分析を施行してその病的意義を検討すべくサンプルの集積を遂行した。一方、基礎的検討として、劣化脂質曝露による胆道上皮細胞アポトーシスと、脂質分子をリガンドとするGタンパク共役型受容体G2Aなどの脂質代謝関連遺伝子発現プロフィリングの評価と、防御機構となる生体成分の拾い上げを開始した。まず、ヒト胆管癌細胞Hucct-1、正常ヒト胆管上皮細胞にLPC 1~100μM, 9-HODE(G2Aリガンド) 0.1~10μM, LPC+9HODEを添加し、1)G2A発現をWestern blot、2)細胞障害をMTT assay(細胞数カウント)、LDH assay(生存細胞機能確認)、3)アポトーシスを4',6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)染色による形態評価、Annexin-V/PI二重染色によるフローサイトメトリー法、Caspase活性(Caspase-3, -8, -9)Assayにて評価した。その結果、リソリン脂質は胆管上皮細胞のG2A発現を増加させるとともにアポトーシスを惹起した。さらにその変化は劣化脂肪酸の共存によりsynergisticに増強した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は食生活と発がんの関わりに着目して、保存食材の短時間高熱処理により発生する動脈硬化惹起物質の劣化脂質による胆道系への炎症・発癌惹起性の検証とその臨床への転用を目指している。脂質成分(特に劣化脂質)と発がんの因果関係に着目して、脂質に豊富な胆汁に曝露される胆道(胆嚢・胆管)発がんへの劣化脂質の関与を検討し、その調節による予防的治療戦略を提案することを究極の目的としている。研究初年度として、①胆道疾患患者胆汁の劣化脂質分析、②劣化脂質曝露による胆道上皮細胞アポトーシス、脂質分子をリガンドとする脂質代謝関連遺伝子発現プロフィリングの評価を計画したが、検体の収集は順調であった。また、基礎的検討のセッティングも順調で、その成果は2013年5月の米国消化器病学会での発表の機会を得ている。ただ、脂質分子をリガンドとする脂質代謝関連遺伝子発現プロフィリングは未完了であり次年度の宿題となっている。次年度には、①防御機構となる生体成分の拾い上げとメカニズム解析、②その摂取介入と腸管での吸収抑制剤投与効果の検討に加えて、上記を並行して遂行することになる。
|
Strategy for Future Research Activity |
臨床検体の脂質分析とともに、基礎的研究として、1)脂質分子をリガンドとする脂質代謝関連遺伝子発現プロフィリング2)劣化脂質による胆管上皮細胞アポトーシスに対する防御機構となる生体成分の拾い上げ、ならびに防御メカニズム解析を遂行する。 ①臨床的検討 胆道疾患患者(胆道がん、胆道炎)に対して腸管脂質吸収阻害薬(NPC1L1阻害剤)を投与して、その胆汁脂質動態への影響を評価する。ドレナージおよび利胆剤負荷経鼻内視鏡は前年度と同様に行う。 ②基礎的検討(細胞実験) 1. UDCAおよび各種リン脂質分子種と遊離脂肪酸による胆管上皮細胞傷害保護作用の検討 24年度に検討したLPCおよび酸化脂肪酸の胆管上皮細胞傷害に対し、治療的な観点からUDCAと各種リン脂質分子種、遊離脂肪酸の細胞保護的作用について検討を行う。これまでの検討で最も細胞傷害およびアポトーシス誘導作用の強く認めた条件においてUDCAを1~100μMで同時添加を行い、上記2)~6)の項目を検討する。2. LPC/酸化脂肪酸による発癌への影響の検討 上記検討での胆管上皮細胞傷害に加え、発癌に関する影響について検討を行う。1)癌関連遺伝子発現プロファイリング:ヒト胆管上皮細胞およびLPC/9-HODE刺激胆管上皮細胞の両者でDNAマイクロアレイにより、癌関連遺伝子発現を中心として網羅的比較解析を行う。さらに有意な変化を認めた遺伝子に関しては、real-time PCRによる発現変化の確認と、Western blotにより蛋白レベルでの発現の検討を行う。2)メチル化DNAの解析:ヒト胆管上皮細胞およびLPC/9-HODE刺激胆管上皮細胞から抽出したDNAにbisulfite処理し、Methylation-specific PCRにてDNAメチル化状態の判定を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.胆汁脂質分析 2.細胞実験費用 3.学会発表 4.人件費
|
Research Products
(7 results)
-
-
[Journal Article] Clinical diagnostic criteria og IgG4-related sclerosing cholangitis 2012.2012
Author(s)
Ohara H,Okazaki K,Tsubouchi H,Inui K,Kawa S,Kamisawa T,Tazuma S,Uchida K,Hirano K,Yoshida H,Nishino T,Ko SB,Mizuno N,Hamano H,Kanno A,Notohara K,Hasebe O,Nakazawa T,Nakamura Y,Takikawa H.
-
Journal Title
J Hepatobiliary Pancreat Sci.
Volume: 19
Pages: 536-542
DOI
Peer Reviewed
-
-
[Presentation] Hypertension enhances hepatic steatosis througt oxidative stress associated with down-regulated expressions of LXR and FXR :Implication to the future strategy for non-alcoholic fatty liver diseases(NAFLD) by nuclear receptor ligands2012
Author(s)
S.Tazuma,T.Ikuta,K.Kanno,M.Nakashima,A.Sugiyama,N.Kishikawa,H.Kodama,M.Okamoto,Y.Kikuchi,S.Kushihta,K.Yokobayashi,M.Mizooka,T.Saeki,K.Arihiro
Organizer
Falk Symposium
Place of Presentation
Austria
Year and Date
20120914-20120915
-
-
-