2012 Fiscal Year Research-status Report
脂質栄養が胸腺の支持細胞の機能と免疫細胞(T細胞)産生に及ぼす効果の検討
Project/Area Number |
24500979
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
安達 泰弘 産業医科大学, 医学部, 講師 (10346546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大和田 祐二 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20292211)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脂肪酸結合タンパク / FABP / 脂肪酸 / 分化誘導 / 胸腺上皮細胞 |
Research Abstract |
平成24年度は、研究代表者の異動や環境整備、遺伝子改変マウス(FABP5ノックアウトマウス)の導入等に予想外の時間を要したため、残念ながら当初計画の完全遂行には至らなかった。 計画では、野生型及びFABP5ノックアウトマウスから単離した胸腺支持(上皮)細胞に関する形態学的検討と増殖に関する検討を行う予定であったが、上記理由のため、未だ十分に比較解析が行われていなかった両マウスの胸腺構造(特に上皮構造と細胞構成)について、改めて詳細な組織学的検討を行った。その結果、FABP55ノックアウトマウス胸腺の皮質・髄質領域の異常な拡大や縮小は見られず、上皮細胞による網目構造にも大きな変化は見られなかった、すなわち胸腺構造自体はほぼ正常であることがわかった。しかし、フローサイトメトリーで胸腺細胞の各分化段階を比較したところ、予備的なデータではあるが、FABP55ノックアウトマウス胸腺細胞の初期分化段階で分化が一部阻害されている可能性が示唆された。これは多様な生体機能を有する脂肪酸の細胞内挙動を制御すると考えられるFABP5分子が、胸腺上皮細胞の生理機能(胸腺細胞の分化誘導能)の発現・調節に関わっている可能性を示唆するものである。ただし、分化が進んだ胸腺細胞の分布については野生型と大差無かったことから、胸腺上皮細胞の生理機能発現・調節系においてFABP5が関与するポイントは、現時点では胸腺細胞分化の初期段階の一部に限局したものである可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の現所属への異動、課題遂行のための最低限の実験環境整備と、現所属における組み換えDNA実験・動物実験計画の承認、及び使用予定であった遺伝子改変マウス(FABP5ノックアウトマウス)の導入において予想外に多大な時間を要した。導入が完了した遺伝子改変マウスは現在繁殖中のため、計画された実験に使用できるのは平成25年5月以降と思われる。従って現段階では、今後得られるであろう実験結果を解釈するために必要なこれまでのデータに加え、未検討であったより基礎的なデータの取得に務めている。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子改変マウスが使用可能になり次第、胸腺上皮細胞の形態比較、及び増殖能の変化について解析をスタートさせる。平成25年度は胸腺上皮細胞が発現するマーカー分子、液性因子のタンパク質レベルでの比較解析を計画しているが、できるだけ早期に機能解析に持ち込むため、脂肪酸負荷前後の遺伝子発現変動をDNAアレイ解析で網羅的に解析し、標的を絞った上でタンパク質レベルの解析を行うのが効率的であると思われる。また、単離した胸腺細胞の初代培養系では生体内での細胞挙動を再現しきれない可能性があることから、研究分担者と協力しつつ、特定の脂肪酸含量を調整した特殊試料の給餌やより生体に近い環境を模倣するため胎仔胸腺器官培養系(FTOC)の構築・解析を考慮する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の早期に予定していた遺伝子改変マウスの導入が年度末となったため、動物飼育費用として申請した金額はそのまま平成25年度に繰り越すこととなった。平成25年度は、場合によっては複数回のDNAアレイ解析を行う必要があるため、解析費用の一部として動物飼育費用の繰り越し分を物品費に振り替えて使用する予定である。また、旅費の一部も繰り越しとなったが、次年度は複数回の学会出張を予定しているので、計画どおりに使用する予定である。その他に必要な消耗品類の大部分は既に入手済みであるので、平成25年度計画の範囲内で使用できると考えている。
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