2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500982
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
澤井 明香 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 准教授 (00454330)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 咀嚼 / 検査用グミゼリー / NIRS / 代謝 / 自律神経 / 小児 / 大学生 |
Research Abstract |
咀嚼は食物の消化過程の始まりであり、精神(頭脳)活動を促すことも知られている。咀嚼と認知機能の関係は高齢者を対象に検討されることが多いが、健常者も咀嚼を必要としない栄養飲料を朝食等に摂取する現状もあるため、本研究は欠食と認知機能(特に顔認知)の関係を咀嚼の面から検討する。その際には咀嚼能力の簡易検査の標準値が知られておらず、教育や福祉現場で殆ど活用されない現状があるため、まずは子どもや高齢者の咀嚼標準値を得ることを目的とする。次に咀嚼を考慮した食事や欠食と精神活動の関連性について、f-NIRS等の電気生理学的機器を用いて脳血流や自律神経、代謝への影響を調べる予定である。 本報告書は3年計画の研究の初年度の報告である。今年度は、9月に申請者が千葉県立保健医療大学から神奈川工科大学へ異動したため、新任先にて実験環境を整える必要が生じた。このため本年および次年度の2か年計画で実施予定であった、集団に対する咀嚼調査を前倒しで実施し、機器を用いた生理実験は次年度以降に実施とした。 咀嚼調査は、各年代ごとの検査値の標準値の作成を目指し、我々のこれまでの調査対象の中で、データが不足していた年齢および学年を主に対象にして実施した。小学2年、4年、6年、中学生の検査用グミゼリーによる咀嚼検査の結果は、学年の上昇に伴う咀嚼能率の向上がみられた。一方、咬断片の極めて大きな者すなわち咀嚼能力の低い者の割合は、学年の上昇により低下した。中学生の咀嚼能力は大学生とほぼ同程度であった。唾液分泌量も学年の上昇に伴い上昇したが、分泌量は小児の方が大学生の約2倍多かった。上記内容について学会発表を行い、これらのうち大学生の咀嚼に関するものは学術論文として日本咀嚼学会誌に掲載された。現在、高齢者に対する咀嚼検査を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は申請者の異動に伴い、新所属での倫理書類の再審査や、特に精密機器を扱う測定は測定環境を異動先に併せて整備する必要があり、実験着手への遅れが予想された。申請者はこれを危惧し、新所属に対して倫理書類を速やかに提出し、さらに移動後も機器整備の必要がない、集団を対象とした咀嚼検査の来年度調査分に対して、前倒しに実施したことで機器測定に関する遅れ分を克服した。機器の整備を並行して実施し、次年度に開始の目途が立っている。また、本年度は当研究の内容の一部を1つの論文として学術誌に掲載され、さらに一報の論文については現在、学術誌に投稿中である。また、昨年度は当研究に関する学会発表を複数行うに至った。これらより、3か年の研究計画全体としては、当研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、高齢者の咀嚼検査を実施中であり8月中に当検査は終了予定のため、終了後は学会発表を経て報告書にまとめる。 咀嚼条件を様々に変化させた食事の摂取、或いは欠食状況が認知機能に与える影響を調べるための、電気生理学的な機器を用いる実験については、新任校の実験環境を調べ、実験に不足している必要備品を追加購入することになったため、これらの機器使用の環境が整い次第、予備実験を開始する。 なお当実験の施行においては、既に新任校において倫理審査委員会の承認を得ている。 また、研究計画当初に予定していた愛知県の生理学研究所に出張して行う実験は、新任校の学内の施設の利用により対応が可能とわかったため、愛知の現地で対象者を募るのではなく、神奈川工科大学の大学生を対象者に実施することで、研究の速やかな施行につながると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
神奈川工科大学に赴任し、学内にf-NIRSの所在がわかった。千葉県立保健医療大学在職時に計画した研究では、千葉県大の学内にf‐NIRSがなかったために愛知県の生理学研究所に出張して実験を行う予定であったが、これにより出張測定を行う必要がなくなった。しかしながら、一方で、食事内容の調整と評価および代謝測定に必要な、代謝測定器が神奈川工科大学にはないことがわかり、新たに購入する必要が生じた。 この問題を解決するためには、愛知への出張測定に関する予算を、代謝測定器の購入へ充てる必要が生じ、当内容を文部科学省の担当官に確認したところ、了承を得たため、本年度の残金および次年度の研究費にて代謝測定器を購入し、予定通りの実験を実施する。また、実験に必要な消耗品および被験者への謝礼を研究費より支払う。
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