2012 Fiscal Year Research-status Report
米タンパク質摂取による糖尿病性腎症等の腎機能改善効果の解析
Project/Area Number |
24500983
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
渡邊 令子 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (70141348)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 米胚乳タンパク質 / 米糠タンパク質 / 2型糖尿病モデルGKラット / 糖尿病性腎症 / 尿中アルブミン / 腎糸球体障害度 |
Research Abstract |
アジア人種に多い非肥満型自然発症2型糖尿病モデルとしてGoto-Kakizaki(GK)ラットを用い、米胚乳タンパク質(RP)・米糠タンパク質(RBP)摂取による糖尿病性腎症等の進行抑制、腎機能保護調節のメカニズム解明を目指し、長期飼養試験を実施した。さらに、腎臓における炎症性サイトカイン遺伝子発現変化をみるために短期試験も実施した。 1.試験終了時の空腹時インスリン濃度に有意差はなかったが、血漿アデイポネクチン濃度はRP群が有意に高値を示した。しかし、肝臓のアデイポネクチンレセプター遺伝子に有意な発現上昇はみられなかった。また、糖尿病やメタボリックシンドローム進行マーカーとして注目されている血漿ALPは、RBP群で有意に抑制された。さらに、血漿エリスロポエチン濃度はRP群が他3群に比べて有意に高値を示した。 2.尿中アルブミン排泄量は、RP群は12週目、RBP群は15週目まで抑制効果がみられたが、腎糸球体組織像解析では、腎疾患の病態進行によってみられる腎糸球体のメサンギウム細胞や基質の増殖に対し、RPのほうが強い抑制効果を示した。 3.腎臓におけるMCP-1のmRNAは、RP群で発現上昇抑制がみられ、血漿インスリン濃度と同様の推移を示した。RP群では血漿CRP濃度も抑制され、MCP-1の発現上昇抑制を通して腎症進行を抑制している可能性が示唆された。また、腎臓をDNAマイクロアレイ法で解析した結果、Heme oxygenase 1の遺伝子発現上昇、Rac-related C3 botulinum toxin substrate 1の遺伝子発現抑制を認めた。 糖尿病性腎症は合併症のなかでも重篤な疾患で透析導入に至る患者の割合が最も高く、その予防や重症化抑制は医療費削減からも重要である。それゆえ、主食である米タンパク質の腎疾患進行抑制効果の解明は、社会的意義が多大である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2型糖尿病モデルGKラットを用いての長期飼養試験は、予備飼育等の期間を含めると、4ヶ月以上に渡る。また、採取した血液、尿、腎臓、および肝臓の各種項目の測定、分析にはそれ以上の時間が必要であるので、長期試験は年間1回としている。それゆえ、長期試験は綿密な準備の下に開始し、常時、連携研究者や研究協力者らと研究の進行状況を共有しながら進めている。しかし、モデル動物は健常動物に比べて個体差が大きいので、各種測定項目の解析結果の再現性を確認するために、必ず次年度に原則として同様のプロトコルで、さらなる分析項目をプラスする形で追試験を実施している。 平成24年度は、平成25年度へ向けて、肥満2型糖尿病モデルZucker Diabetic Fatty (ZDF)ラットの予備試験も含めてほぼ計画通りに進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ZDFラットにおける米胚乳・米糠タンパク質の腎症進行抑制効果の解析:自然発症2型糖尿病モデル動物は、複数の原因遺伝子によって糖尿病を発症することが知られている。GKラットは日本人やアジア人種に多い2型糖尿病モデルとして想定したが、世界的にみると肥満型糖尿病が圧倒的に多い。また、タンパク質の種類の違いが腎機能改善効果にどのように影響を及ぼすのか、その作用機構解明には異なるモデル動物を用いて同様の試験をして比較検討することも重要である。そこで、インスリン抵抗性、高グルコース・高インスリン・高コレステロール血症、腎障害、神経障害等を有するZDFラットを用いて長期栄養試験を実施し、分析および解析を進める。 2.GKラットとZDFラットの腎機能に関する特異的遺伝子発現の比較解析:ZDFラットの腎臓遺伝子発現応答の解析を実施し、比較検討しながらメカニズム解明を目指す。さらに、肝臓や腎臓のアデイポネクチンレセプターの遺伝子発現変化、肝臓と腎臓のメタボロ-ム解析等を行い、特に米胚乳タンパク質の糖尿病および腎機能保護効果のメカニズム解明に主力を注ぐ。GKラットでみられた米胚乳タンパク質の腎性貧血改善効果についてもエリスロポエチン遺伝子の発現変化についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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