2013 Fiscal Year Research-status Report
米タンパク質摂取による糖尿病性腎症等の腎機能改善効果の解析
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24500983
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
渡邊 令子 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (70141348)
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Keywords | 米胚乳タンパク質 / 米糠タンパク質 / 肥満2型糖尿病モデル / ZDFラット / 糖尿病性腎症 / 尿中アルブミン / 腎糸球体障害度 |
Research Abstract |
平成24年度までの研究成果として、日本人やアジア人種に多い非肥満型自然発症2型糖尿病モデルGoto-Kakizaki(GK)ラットを用い、米胚乳タンパク質(RP)および米糠タンパク質(RBP)の糖尿病性腎症進行抑制効果とその作用機構の一端を明らかにした。しかし、世界的には肥満2型糖尿病患者の増加が深刻な問題になっていることと、メカニズム解明のためには異なるモデル動物での検討が必要と考え、Zucker Diabetic Fatty(ZDF)ラットを用いて、RPおよびRBPの長期給与による腎機能改善効果とそのメカニズム解明を目指し、検討した。 1.試験終了時には、RP・RBP両群ともにカゼイン(C)群に比べ、有意な血糖上昇抑制効果がみられ、血中総コレステロール、アルカリホスファターゼおよび尿素窒素等も有意に低値を示した。また、RP・RBP摂取は強い脂肪肝抑制・改善効果を示し、特にRBPで顕著であった。尿量の経時変化に同調して近位尿細管障害度を示すN-acetyl-β-D-glucosaminidase(NAG)活性が上昇、それに追随するように尿中アルブミン排泄量の増加がみられたが、試験終了時点でRP・RBP両群ともにC群に対して約50%有意に低値を示した。腎症患者の食事で問題となる尿中無機リン排泄量もC群に比べ、RP・RBP両群ともに顕著に少なかった。腎糸球体障害抑制効果は、GKラット同様にRPのほうが強い抑制効果を示した。 2.試験終了時の肝臓と腎臓のCE-TOF MSによるメタボローム解析を行い、群間で比較検討した。肝臓では、RP・RBP両群でさまざまな代謝経路の亢進、酸化ストレス軽減による肝機能正常化への寄与が推察されたが、RPとRBPでは代謝物質のプロファイルに明らかな相違がみられた。また、腎臓でのメタボローム解析は難しく、さらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肥満2型糖尿病モデルZDFラットを用いての長期飼養試験は、予備飼育等の期間を含めると、約3か月以上に渡る。また、採取した血液、尿、腎臓、および肝臓の各種項目の測定、分析にはかなりの時間を要する。それゆえ、長期飼養試験は綿密な準備の下に開始し、常時、連携研究者や研究協力者らと研究の進行状況を共有しながら進めている。とくに、ZDFラットはモデル動物の中でも糖尿病やその合併症の進行状態で個体差が大きいので、各種測定項目の解析結果の再現性を確認するために、同様のプロトコルで、さらなる分析項目をプラスする形で追試験を実施したが、大変良好な再現性を確認でき、本年度計画の8割は達成できた。 また、平成26年度へ向けてGKラットとZDFラットの遺伝子発現応答の予備的検討もほぼ計画どおりに進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
RPおよびRBP摂取による糖尿病とそれに伴う腎症の改善効果のより詳細なメカニズム解明のため、DNAマイクロアレイ解析を用いて検討を行う。RPとRBPによる糖尿病改善および腎機能保護効果の相違点に注目しながら、特に、ZDFラットの肝臓や腎臓のメタボローム解析で変化がみられた代謝系に関係する酵素の遺伝子発現変動を中心に解析を進める。と同時にその他の代謝や生理機能に関係する遺伝子発現応答についても網羅的に解析する。 さらに今後、GKラットやZDFラットの血液や尿のメタボローム解析を行い、代謝系の全体像を把握することが、RPおよびRBPによる腎機能改善効果の詳細なメカニズム解明につながると考えている。
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