2014 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病合併症の発症を予防する食品因子の探索とその作用機序解明
Project/Area Number |
24500986
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 友子(大矢友子) 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80329648)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 糖尿病合併症 / メチルグリオキサール / ペルオキシレドキシン6 / メイラード反応 / 酸化ストレス / プロテオミクス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品由来の機能性因子について生体レベルで正確に評価できる系を確立し、糖尿病合併症予防の作用機序に関して分子メカニズム解析を行うことを目的としている。メチルグリオキサール(MG)は、解糖系及び非酵素的糖化反応(メイラード反応)のカルボニル化合物中間体で反応性が極めて高いため、タンパク質と反応して安定な付加体(Advanced Glycation End-products; AGEs)を生じる。この付加体は糖尿病合併症の発症進展リスクの指標として有望視されている。赤血球の主要な抗酸化酵素であるペルオキシレドキシン6(Prx6)は、その発現量が多く、MGによる修飾を受けやすいことが判明した。詳細なMALDI-TOF/MS/MS解析から、Prx6活性中心Cys-47の酸化修飾およびMG修飾がPrx6酵素活性低下の最重要原因であると示唆された。 本年度の研究実施計画として、ヒト血液由来抽出タンパク質を利用し、簡便なMG修飾Prx6の測定系の確立を試みた。有用性検証を終え、キット化の最終段階となるELISAを利用したMG修飾Prx6の定量化を図った。また、MG修飾Prx6の合併症進展における意義について、糖尿病罹病期間や腎症、網膜症の進行度等が明瞭な100名強の臨床検体を対象に解析を行った。糖尿病患者の空腹時血糖(p=0.008)、高血圧(p=0.025)で、それぞれMG修飾Prx6値の正の相関が認められた。また、患者の高脂血症、心筋梗塞、脳梗塞、潰瘍性大腸炎併発それぞれにおいて、その高値が認められた。さらに、Prx6酵素活性や酸化ストレスとの関連も認められた。現在の診断マーカーであるHbA1cでは、上記検体において合併症進展を示す各種パラメーターとの相関は認められなかった。 一方で、生体成分からのMG修飾Prx6の直接検出を試みた。方法として、LC/MS/MSシステムを利用したMG修飾Prx6の定量的フォーカストプロテオミクスを開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MG修飾Prx6をマーカーとした評価系確立のため、「Prx6とMG修飾タンパク質の測定条件検討」と「MG修飾Prx6の分子標的としての有用性検証」を行い、ともに主な実施計画を達成した。モデル動物だけでなく、ヒト臨床試験由来の血液を利用し、罹患期間と合併症の進行度を考慮した解析を行うことができた。具体的には、ヒト血液由来抽出タンパク質について、ウエスタンブロッティングやELISA法によって定性的、定量的な測定を行い、測定条件設定と同時に、採血の条件(採血状態)とタンパク質抽出条件を決定した。また、これまで糖尿病の臨床マーカーとして利用されてきたHbA1cとの比較検討を行い、モデル動物とは違い、ヒト臨床検体では必ずしもMG修飾Prx6の値がHbA1cの値とは相関しないことが判明した。また、HbA1c値だけでの糖尿病進行の予測・判断が危険であることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
臨床検体において、MG修飾Prx6と糖化タンパク質として既に有望視されているグリコアルブミンとの比較を行う。また、酸化ストレスマーカーや他の糖尿病合併症指標各種との関連についても検討を行い、合併症との相関を複合的に解析する。一方で、開発中の測定系で抗体が的確に認識していることの裏付け証拠が不可欠であるため、生体成分からのMG修飾Prx6の直接検出を試みる。方法として、定量的フォーカストプロテオミクス行う。この方法の利点は、安定同位体標識ペプチド(MG修飾Prx6由来)と非標識ペプチド(赤血球由来)セットをSelected Reaction Monitoring (SRM)で測定することで、複雑な生体試料中のタンパク質(血液)由来のペプチドを、f mol からp mol レベルで絶対定量することが可能な点である。まずはLC/MS/MS システムのハイブリッドトリプル四重極リニアイオントラップ機能を利用して、MG修飾リコンビナントPrx6より測定ペプチドリストを作成することであり、既に研究を開始している。
|
Causes of Carryover |
MS解析の方法を変更した。そのため、質量分析関連試薬(タンパク質消化酵素、マトリックス等)の使用量が予定より少なかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用研究費の多くは、質量分析関連試薬(タンパク質消化酵素、マトリックス等)、アッセイ系評価のために使用する種々の生化学試薬、分子生物学的試薬、特異性が高く高感度な抗体、ELISA測定に使用するプラスチック類器具(96穴プレートを含む)等、消耗品費が占める。
|
-
-
[Presentation] Intake of isoflavones attenuates the development of metabolic syndrome associated with consumption of a Western-style diet in C57BL/6J mice2014
Author(s)
Tomoko Oya-Ito, Kazuhiro Katada, Mayuko Morita, Katsura Mizushima, Yasuki Higashimura, Kazuhiro Kamada, Kazuhiko Uchiyama, Osamu Handa, Tomohisa Takagi, Nobuaki Yagi, Toshikazu Yoshikawa, Yoshito Itoh, and Yuji Naito
Organizer
13th World Congress of the Human Proteome Organization
Place of Presentation
Madrid、スペイン
Year and Date
2014-10-05 – 2014-10-08
-
[Book] 臨床化学2014
Author(s)
大矢友子、中村由嘉子、吉見 陽、尾崎紀夫
Total Pages
351 (275-283)
Publisher
(株)エム・シー・アイ
-