2012 Fiscal Year Research-status Report
妊娠・授乳期の栄養状態による栄養素の吸収・代謝機能への影響と作用機序に関する研究
Project/Area Number |
24500990
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
駿河 和仁 長崎県立大学, 看護栄養学部, 准教授 (70315852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 範晃 長崎県立大学, 看護栄養学部, 助教 (80516295)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 妊娠・授乳期 / ビタミンA吸収・代謝 / 糖質・脂質吸収・代謝 / DoHad / エピジェネティクス |
Research Abstract |
本年度は、特に授乳期の栄養状態が、成長過程の仔ラットの栄養素吸収・代謝機能に及ぼす影響について検討を行った。母親ラットは出産後に標準食(C群)、30%カロリー制限食(R群)または高脂肪食(H群)を摂取させ、その各仔ラット(母親1匹あたり雄6匹、雌4匹)を21日間哺乳させた。生後4か月齢時までの仔ラットの体重増加の程度および内臓脂肪量は、授乳期の母親の食餌内容により差が見られ、H、C、R群の順であった。制限食群および高脂肪食群の仔ラットでは、いずれも空腸の脂肪酸吸収関連遺伝子の発現量が増大を示し、脂肪の吸収能は亢進していると考えられたが、仔ラットの肝臓トリグリセリド量は、制限食群で低く、高脂肪食群で高かったことから、取り込まれた脂肪のエネルギー代謝効率は授乳期間中の母親ラットの栄養状態により異なっているものと考えられた。今後、空腸のみならず肝臓の脂質代謝関連因子の遺伝子発現量およびタンパク質量の変動についても解析を行う予定である。また糖質の消化・吸収機能に対しては、空腸の関連遺伝子発現量が制限食群および高脂肪食群の仔ラットで伴に増大を示しており、糖質の消化・吸収能の亢進が示唆された。しかしながら、成長後の仔ラットのインスリン感受性は、制限食群で高く、逆に高脂肪食群で低い傾向が見られたことから、糖質のエネルギー利用効率も授乳期間中の母親ラットの栄養状態により異なる可能性が考えられた。一方、ビタミンAの吸収・代謝機能に対しては、上記の授乳期の栄養条件の違いによる影響は見られなかった。以上の結果から、授乳期の栄養状態はおもに成長後の脂質や糖質などエネルギー源の吸収や代謝機能に対し遺伝子レベルで影響を及ぼす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の平成24年度研究計画では、母親ラットの授乳期の栄養状態の違いが成長後の仔ラットの栄養素の吸収・代謝機能に及ぼす影響について、とくに脂質、糖質およびビタミンAの吸収・代謝機能に分け研究を行った。これらの研究項目はいずれも同一のラットを用いて行い、飼育計画(方法)は当初の計画通りに実施した。個々の研究テーマの解析項目については、実験結果により一部変更や実施していない(中止、未実施)項目があるが、おおむね70%ほどの解析項目については実施している。また「研究実績の概要」に記したように、特に脂質や糖質吸収・代謝に対する影響に関しては、授乳期の栄養状態への影響が見られたため、さらに飼育条件を変えて追加実験の検討を行った(平成24年12月から25年4月末まで飼育)。この追加実験の解析は今後行うが、その結果も含めて平成24年度の研究成果としてまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」の項で記載したが、平成24年度研究計画の追加実験を行っており、平成25年度は、初めにこの追加実験の検討から行っていく。その実験の進行状況を見て、申請時に計画していた平成25年度の研究計画を実施していく。申請時の研究計画の通り、とくに『妊娠期間中』のラット栄養状態に焦点を当て、それらの仔ラットの成長過程での栄養素の吸収・代謝機能への影響について検討を行う。具体的には、非妊娠雌性ラットを予め標準食、カロリー制限食または高脂肪食で飼育し、雄性ラットと自然交配させる。妊娠が確認された雌性ラットは、妊娠期間中も継続して同じ食餌を与え、出産後はいずれの群も標準食に切り替え授乳させる。それらの仔ラットは、離乳時以降に標準食または高脂肪食を与え飼育を行う。個々の検討項目については、妊娠期と授乳期の時期の違いによる影響の比較を行うために、平成24年度で実施したものと同じ項目を考えているが、必要に応じて新たな検討項目も追加していく。最終年度(平成26年度)は、平成24および25年度で実施した研究結果より吸収・代謝関連遺伝子の発現に変動が見られた遺伝子について、特定のプロモーター領域内のCpG領域のメチル化状態を定量解析し、目的遺伝子のプロモーターのメチル化の程度と、遺伝子発現量の変動との関連性を検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額分32,226円は、平成24年度末に購入予定であったレプチンELISA測定キットが在庫なしのため年度内に納品不可能となり生じた。納品可能になり次第購入する予定である。平成25年度の助成予定額は120万であるが、以下の内容で使用する予定である。実験動物費として6万円、飼料原料費として25万円、各種測定キットとして60万円、その他の試薬・消耗品器具等として10万円、論文校正費として6万円、学会出張費として10万円、その他実験アルバイトとして3万円。以上の研究費使用計画は、概ね申請時の計画と同じである。
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