2013 Fiscal Year Research-status Report
妊娠・授乳期の栄養状態による栄養素の吸収・代謝機能への影響と作用機序に関する研究
Project/Area Number |
24500990
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
駿河 和仁 長崎県立大学, 看護栄養学部, 准教授 (70315852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 範晃 長崎県立大学, 看護栄養学部, 助教 (80516295)
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Keywords | 妊娠・授乳期 / ビタミンA吸収・代謝 / 糖質・脂質吸収・代謝 / DoHad / エピジェネティクス |
Research Abstract |
本年度前半は、24年度の研究内容の再現性の確認および追加実験を行うために、成長期の仔ラットの小腸や肝臓における脂質と糖質およびビタミンAの吸収・代謝機能に対する授乳期の母親ラットの食餌制限(70%制限食)の影響について検討を行った。19週齢時の雄性仔ラット肝臓トリグリセリド量は、コントロール(C)群に比べ、授乳期食餌制限(R)群で低い傾向が見られた。また、肝臓の脂肪酸β-酸化系遺伝子の発現量は高い傾向を示し、脂肪酸およびトリグリセリド合成系遺伝子の各発現量は低い傾向を示したことから、授乳期の母親ラットの食餌制限により成長後の仔ラットの肝臓では、脂肪酸の燃焼系の亢進と合成系の抑制が起こり、肝臓トリグリセリド量が低下するものと考えられた。一方、糖質吸収・代謝に関しては、19週齢時の空腸の糖質の消化・吸収関連の遺伝子発現量や糖負荷後の血清グルコース濃度変動にほとんど差は見られなかったが、血清インスリン濃度の変動がR群で低い傾向を示したことから、インスリン感受性が高いものと考えられた。さらにビタミンAの吸収・代謝に関しては、19週齢時のR群の仔ラットでは、肝臓の総レチノール量が有意に高く、血清のレチノール濃度はわずかに低い傾向を示した。また、小腸のビタミンA吸収関連遺伝子発現量はわずかに高い傾向を示し、肝臓のビタミンA再エステル化に関わる遺伝子発現量が有意に高値を示した。これらのことから授乳期の食餌制限により仔ラットの小腸のビタミンA吸収能が亢進し、さらに肝臓に取り込まれたビタミンAの再エステル化亢進によりビタミンAの貯蔵機能が亢進していることが考えられた。25年度後半は、妊娠初期から離乳期にかけての栄養状態が、成長後の仔ラットの栄養素の吸収・代謝機能に及ぼす影響について検討を始めたが、本実験の動物飼育期間が約5ヶ月であり、これから順次解析を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究の実績」にも記載した通り、25年度の前半は24年度に行った研究内容の再現性の確認および追加実験を行ったため、それらの解析を行った。その結果、24年度の研究成果の再現性についても確認でき、さらに新たな実験結果も得られた。それらの成果の一部であるビタミンA吸収・代謝に関する研究成果について26年度の6月に学会発表を行う。申請時に25年度の研究計画であった「妊娠期から離乳期にかけての栄養状態の影響」についての検討については、25年度12月から26年度4月にかけて約5ヶ月間飼育を行った。この研究については計画案に沿って現在解析を始めているところであり、今年度10月までには解析を終える予定である。これらのことから、当初の計画から半期ほど進行が遅れていることになるが、今年度(最終年度)予定している研究計画については、8月頃から行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」の項にも記載したが、24年度の研究内容の再現性の検討と追加実験を行ったため、25年度の研究計画が少し遅れており、今年度はその解析から始め、10月までには終了する予定である。今年度の研究計画である「ラットの妊娠期および授乳期の栄養状態が子ラットのビタミンA、糖質、脂質の吸収・代謝機能に及ぼすエピジェネティックな変動の解析」については、8月頃より動物飼育を開始する予定である。動物飼育期間は5~6ヶ月を予定しているので、各種解析は今年度終盤からとなる予定である。具体的な研究内容としては、H24および25年度で実施した研究結果より吸収・代謝関連遺伝子の発現に変動が見られた遺伝子について、特定のプロモーター領域内のCpG領域のメチル化状態を定量解析し、目的遺伝子のプロモーターのメチル化の程度と、遺伝子発現量の変動との関連性を検討する予定である。
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