2013 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣病を伴った血中の高コレステロールがもたらすマラリアの感染と治療への影響
Project/Area Number |
24500992
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
早川 枝李 自治医科大学, 医学部, 助教 (00383753)
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Keywords | 熱帯熱マラリア / リポタンパク質 / イオン液体 |
Research Abstract |
(1)熱帯熱マラリア原虫は赤血球に侵入後、ヘモグロビンを分解し栄養源の一部にする。ヘモグロビンを分解したときにできるFe2+は高い酸化力を持つため、マラリア原虫に都合が悪い。そのため原虫はFe2+をFe3+に変換させヘモゾインを形成する。このように酸化環境か否かはマラリア原虫にとって重要な要因となる。ヘモグロビンにはオキシヘモグロビン、メトヘモグロビンなどの酸化型、還元型が存在する。これらのヘモグロビンのタイプを測定することは原虫と培養環境(実験条件)を検討する上で重要である。本年は非感染赤血球、及び熱帯熱マラリア原虫が感染したヘモグロビンに対しヘモグロビンのオキシ型、メト型の量の測定方法を確立した。 (2)いくつかのリポタンパク質を熱帯熱マラリア原虫培養中に添加させ、その影響について検討した。添加する量に対する検討は今後の課題であるが、現在のところ、HDLが高濃度に存在する系ではcontrolに比べて原虫の増殖率が低下していた。本実験は培養液に人工血清を添加した条件で行っており血清の影響を無視することはできないため、今後はマラリア原虫が生育可能な無血清培養条件の検討を行った上で、各種リポタンパク質の影響について検討を行う。 (3)マラリア原虫は赤血球内において自己のタンパク質を発現し赤血球膜表面上に輸送・発現させる。これによりマラリア感染赤血球膜の表面はknobと呼ばれる突起状の構造物が形成される。このように、感染により表面構造が変化するマラリア感染赤血球膜の表面構造の形態観察を電子顕微鏡により簡便に行うことを目的として、現在、イオン液体を用いた電顕用試料の作成方法の検討を行っている。そこで赤血球膜と相性の良いイオン液体を見つけるために、膜を構成する脂質とイオン液体との関係について物理化学的な解析を行った。この知見をもとに、今後は赤血球膜の構造を変化させないイオン液体を模索し、電子顕微鏡観察を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)昨年は6月に入院し手術をうけた。退院後は(7月末まで)2度にわたり医師の診断書により自宅療養をしなければならず、8月以降職場に復帰したあとも体調が完全に戻らなかったため、当初予定していた実験すべてを行うことが難しい状況であった。しかし次に記すように、体力的に実験を勧められなかった時期を論文作成作業にあて、成果発表につなげることができた。 (2)本研究では様々な物理化学的測定が必要となる。そのため、測定技術の習得、物性の検討などが不可欠である。作年度は必要な測定方法を確立できたため、本年度はこれらを組み合わせて各種実験条件下において測定を行う。また、イオン液体を用いた電顕観察のため、最初に候補とした数種類のイオン液体と赤血球膜を模倣した人工脂質膜(liposome膜)との物性について検討をおこなった。この結果、当初考えていた候補のイオン液体では赤血球膜の形態を維持したまま電顕観察ができないことがわかったが、その理由を明らかにすることで次につなげられる基礎研究ができた。この解析結果についてはPlosOneに論文発表した(2013年12月)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、熱帯熱マラリア原虫の無血清培養条件を模索して確立させ、その上で各種リポタンパク質の原虫への影響を検討する。 また、マラリア感染赤血球の膜表面構造の簡便な観察技術の確立として、新たなイオン液体を用いて検討を行う。
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