2014 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣病を伴った血中の高コレステロールがもたらすマラリアの感染と治療への影響
Project/Area Number |
24500992
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
早川 枝李 自治医科大学, 医学部, 助教 (00383753)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 熱帯熱マラリア / Maurer’s cleft / 赤血球 / 電子顕微鏡 / 微細構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯熱マラリア原虫は赤血球に侵入後、数百種以上のタンパク質を合成・発現し赤血球膜表面上に輸送する。しかし赤血球は成熟の過程で脱核しているためタンパク質輸送システムがなく、詳細なタンパク質輸送機構は不明である。原虫由来のタンパク質は臨床症状を示することから、原虫感染による赤血球の変化、タンパク質輸送、原虫の脂質代謝などを総合的に検討することは重要である。 マラリア原虫感染後の赤血球内部にMaurer’s cleft(MC)と呼ばれる膜構造が新たに構築され、タンパク質輸送にかかわっている可能性が指摘されているが、MCの微細構造については十分な情報は得られていない。そこで本研究では培養下でマラリア原虫を赤血球に感染させ、赤血球内部の微細構造についてunroofing法を用いて細胞内部を露出させ、透過型電子顕微鏡(TEM)によりMCや赤血球内側の微細構造について検討を行った。この結果MCは球状/楕円円盤状の立体構造をとり、本体から長さ~450nmの細いフィラメントを多数伸長させていることがわかった。このフィラメントは宿主である赤血球の膜骨格にまで伸長し結合していた。また隣同士のMCがフィラメント同士を結合させているのも観察された。さらにMC、並びにフィラメント上に小さなベシクルが結合していることも観察された。このMCの機能を検討するため小胞輸送阻害剤である四フッ化物アルミニウムをマラリア原虫感染赤血球に処理したところ、MCの数は減少しフィラメントも消滅した。以上の結果からマラリア原虫が感染した赤血球内部に構築されるMCは原虫由来のタンパク質輸送に関与していることが、詳細な構造情報を伴って初めて示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マラリア原虫の赤血球内部におけるタンパク質発現・輸送は、マラリア原虫の生育に重要であり、タンパク質輸送に深く関わるMCをはじめ赤血球内部の微細構造を検討することは、後々、脂質代謝を調節する薬剤などを加えたときの赤血球における変化を検討する上で重要である。感染赤血球内部に構築されるMCやその他の膜構造の検討には共焦点顕微鏡、電子顕微鏡などが使われてきたが、透過型電子顕微鏡(TEM)観察用サンプル(切片)作成時、数十nmオーダーの微細構造が失われてしまうため、たとえばMCが感染赤血球内部における位置関係(赤血球の内側と結合しているのか、もしそうならばどのように結合しているのか)などは不明だった。本研究ではこの問題を解決するためにunroofing法を用いてマラリア感染赤血球の内部を露出させ、直接、内部構造を可視化することに成功した。結果、数nmオーダーのフィラメントが多数MC本体から伸長し、それが赤血球の裏打ち構造と結合していることを初めて示すことができ、これまで不明だったマラリア感染赤血球内部の微細構造を、正確に明らかにすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
マラリア原虫感染蚊のヒト皮膚への吸血により、マラリア原虫(スポロゾイト)はヒトの血管に侵入し肝臓に到達する。肝臓ステージでスポロゾイトはメロゾイトに変体し、肝臓を出て赤血球へ侵入、感染する。肝臓は糖代謝と脂質代謝という重要な役割をもつ器官であるが、スポロゾイトと肝臓機能との関係は不明な点が多い。現在、マラリア原虫に対する肝臓機能の影響を検討している。また脂質合成阻害剤などマラリア原虫の培養系に添加し、外部からの脂質の取り込みのみならず、系全体における原虫の生育と脂質代謝について検討を重ねている。今後はこの実験系をまとめられるよう、実験を進める。
|
Causes of Carryover |
海外出張期間、ならびに論文作成期間、マラリア原虫の培養を一時止めていたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
熱帯熱マラリア原虫の培養に必要な消耗品、各種試薬などの購入。
|