2012 Fiscal Year Research-status Report
穀類の摂取による抗炎症作用の臓器間クロストークの研究と有効成分の探索
Project/Area Number |
24500995
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
青江 誠一郎 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (90365049)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | メタボリックシンドローム / 雑穀 / モチ麦 / 肥満モデルマウス |
Research Abstract |
本年度は雑穀類の中から黒米、ハト麦、モチ麦、玄米を選択し、食餌誘発性肥満モデルマウスに12週間与える実験を先に開始し、腸内代謝と脂肪組織、肝臓組織とのクロストークを検索した。 5週齢のC57BL/6Jマウスを用い、AIN-93G組成を基本とし脂肪エネルギー比が50%になるように、ラードを20%添加した高脂肪食とした。各穀物を最大添加量である42%添加し、総食物繊維量が5%になるようにセルロースで調整し、12週間自由摂取させた。解剖時には、肝臓、盲腸、腹腔内脂肪組織を摘出し、解析に供した。さらに、糞便、盲腸それぞれの腸内細菌数をリアルタイムPCR法で測定し、菌数を算出した。また、総菌数をFISH法で蛍光顕微鏡を用いて測定した。 その結果、盲腸重量はモチ麦群で有意に高く、腸内細菌の働きが活性化され、腸内発酵が促進されたことによると考えられた。腸内細菌数は、糞便、盲腸ともにモチ麦群でBifidobacterium 属が有意に多かった。肝臓トリグリセリド濃度はモチ麦群で有意に低く、肝臓の脂肪蓄積を抑制した。血清総コレステロール濃度は、玄米群に比べてモチ麦群で有意に低かった。 Bifidobacterium 属菌数とメタボリックシンドローム指標について相関分析すると、盲腸重量は有意な正の相関、肝臓トリグリセリド濃度、血清総コレステロール濃度は有意な負の相関が見られ、Bifidobacterium 属の数が増加することにより、肝臓ならびに脂肪組織の代謝に影響する可能性が示された。今後引き続き、肝臓および脂肪組織の炎症ならびに代謝をmRNA発現量から解析していくとともに短期摂取の影響も調べる。 以上の結果より、本研究に使用した雑穀中では、モチ麦に腸内環境改善作用が認められ、この変化を介して肝臓および脂肪組織に影響を与えることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで構築してきた動物モデルを用い、穀類の短期摂取と長期摂取に分けて評価する計画で実施した。短期摂取では炎症マーカーを中心に、長期摂取ではインスリン抵抗性を中心にメタボリックシンドローム関連指標について調べる予定であったが、短期飼育実験の実施が遅れた。本年度に継続実施する予定である。 実験モデル動物として本年度は、食餌誘発性肥満モデルマウスのB6系ワイルドマウスを用いて評価した。病態モデルでの検討は平成25年度以降に検討する予定である。穀類として日本で多く食されており、入手しやすい雑穀の評価から開始した。β-グルカンやアラビノキシラン含量の異なる穀類(エン麦、大麦、ライ麦)のうちエン麦、ライ麦については未実施であるため今年度評価する予定である。 ほぼ計画通り達成:消化管、脂肪組織、肝臓を摘出し、メタボリックシンドローム関連指標を中心に調べる12週間飼育実験。 未実施(平成25年度実施):消化管、脂肪組織、肝臓を摘出し、炎症マーカーの遺伝子発現を中心に調べる4週間飼育実験。
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Strategy for Future Research Activity |
未実施であった消化管、脂肪組織、肝臓を摘出し、炎症マーカーの遺伝子発現を中心に調べる4週間飼育実験を実施する。 穀類中の有効成分を調べる目的で、平成24年度に有効性が認められた大麦について外皮部分の影響を調べるため、搗精率の異なる大麦について、その効果の違いを短期摂取と長期摂取に分けて評価する。短期摂取では炎症マーカーを中心に、長期摂取ではインスリン抵抗性を中心にメタボリックシンドローム関連指標について同様に調べる。 1)4週間飼育実験:消化管、脂肪組織、肝臓を摘出し、次の炎症マーカーの遺伝子発現を中心に調べる。NADPHオキシダーゼサブユニットp40phox、p47phox p67phox、マクロファージマーカー(F4/80)、TNF-α(腫瘍壊死性因子),IL-6(インターロイキン-6), MCP-1(単核球走化因子蛋白)、レジスチン 2)8~12週間飼育実験:消化管、脂肪組織、肝臓を摘出し、次のメタボリックシンドローム関連指標を中心に調べる。OGTTおよび/またはITTを行いインスリン抵抗性改善効果を調べる。小腸についてはインクレチン遺伝子発現(プログルカゴン、PPARβ/δ、プロホルモンコンバーターゼ1/3と2)、盲腸内GLP-1プールサイズ、門脈血漿GLP-1濃度を調べる。肝臓について脂肪肝の発症を、脂肪組織についてはマクロファージのM1とM2の比率とコールターカウンターによる脂肪細胞の粒度分布の解析などを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「該当なし」
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