2013 Fiscal Year Research-status Report
穀類の摂取による抗炎症作用の臓器間クロストークの研究と有効成分の探索
Project/Area Number |
24500995
|
Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
青江 誠一郎 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (90365049)
|
Keywords | 大麦 / 消化管 / 腸内細菌 / 脂肪組織 / 肝臓 / 皮膚 / 炎症 / クロストーク |
Research Abstract |
【実験1】昨年度有効性が確認された大麦に着目し、大麦添加高脂肪食の摂取による各種臓器の炎症状態への影響を検討するため、CBF1マウスに高脂肪食または大麦添加高脂肪食を9週間給餌した。クロストーク臓器として、消化管(腸内細菌)、脂肪組織、肝臓ならびに皮膚の炎症について調べた。 その結果、耳介の炎症マーカーおよびp67phoxのmRNA発現量は大麦群において対照群に比べ有意に低値を示した。耳介の炎症マーカーと脂肪組織の炎症マーカーのmRNA発現量との間に有意な正の相関がみられた。盲腸重量は大麦群で対照群に比べて有意に重く、耳介のTNF-αの発現量と有意な負の相関を示した。盲腸の腸内細菌数では、大麦群でLactobacillus属の数が有意に多く、Bifidobacterium 属は大麦群で多い傾向にあった(p=0.065)。Lactobacillus属の菌数は耳介のTNF-αの発現量と有意な負の相関を示した。このことから、大麦による臓器ならびに皮膚の炎症状態の緩和は腸内細菌とのクロストークによるものと推定した。 【実験2】5週齢のC57BL/6Jマウスを1群8匹の2群に群分けした。脂肪エネルギー比が50 %の高脂肪食を用い、大麦β-グルカン抽出物を3%になるように添加し、12週間自由摂取させた。耐糖能試験(OGTT)は、飼育最終週に行った。マウスは6時間絶食後にエーテル麻酔下で採血した。採取した血液は、血清を分離し、生化学値を酵素法で、ホルモン濃度をELISA法で測定した。 その結果、大麦β-グルカン抽出物の添加では、血清インスリン濃度、耐糖能試験に有意差はなかった。大麦β-グルカン抽出物には、耐糖能改善作用が見られなかった。糖代謝改善作用は、デンプンとマトリックスを形成していることが必要である可能性が示され、抽出物でのクロストーク試験には飼料配合法の改良が必要なことが認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・全粒大麦については、腸内細菌を介した消化管~脂肪組織~肝臓・皮膚と炎症抑制効果が確認され、消化管を介したクロストークが存在することが見いだされた。 ・8~12週間飼育実験においては、OGTTを行い、大麦のインスリン抵抗性改善効果を検証できた。小腸については門脈血漿GLP-1濃度に差が認められなかったため、インクレチン遺伝子発現(プログルカゴン、PPARβ/δ、プロホルモンコンバーターゼ1/3と2)、盲腸内GLP-1プールサイズの検討は実施しなかった。 ・大麦中の有効成分を調べる目的で、β-グルカンを含まない大麦を入手し、大麦間の比較も実施した。次に、β-グルカン抽出物を入手し、その効果がどの性質によるのか大麦の長期摂取を行い評価できた。短期摂取については長期摂取での現象を明確にしてから実施する。 ・高β-グルカン大麦 vs グルカンレス大麦および大麦外皮(全粒粉で実施) vs 大麦胚乳部(60%搗精粉で実施)の動物実験を終了した。現在順次解析中である。 ・長期摂取試験については80%達成できた。結果が顕著なものについては、短期飼育でのクロストークの開始時期を調べる予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、大麦で認められた効果がその他の穀類にも同様の機能があるのか、どのような特性を有するのか長期実験によりその効果を調べる。本実験を通じて、どのような穀類を摂取すべきか明らかにし、近年不足し続けている穀類摂取増加のための食事指導に役立てる。穀類素材を選別し、以下の実験を実施する。 発芽玄米、黒米、赤米、モチ麦を用いた実験:消化管~脂肪組織・肝臓のクロストークを行う。高脂肪食に各種穀物を配合した飼料をC57BL/6Jマウスに給餌し、腸内環境への影響について調べる。腸内細菌、消化管の炎症マーカーのmRNA発現量、脂肪組織、肝臓とのクロストークを比較する。 モチ麦、えん麦外皮、ライ麦を用いた肥満軽減実験:C57BL/6Jマウスを高脂肪食で8週間飼育し、肥満と内臓脂肪の炎症を惹起する。次いで、各種β―グルカン含有穀物を配合した飼料を給餌し、肥満改善効果を検証する。その際、炎症マーカーが改善に向かうのか、改善のさいもクロストークが存在するか比較する。 短期実験も長期実験の結果を踏まえて、合間に実施していく予定である。
|