2014 Fiscal Year Research-status Report
穀類の摂取による抗炎症作用の臓器間クロストークの研究と有効成分の探索
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24500995
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
青江 誠一郎 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (90365049)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大麦 / β-グルカン / 脂肪組織 / 炎症 / 腸内細菌 / クロストーク / クロストリジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
【実験1】5週齢の雄C57BL/6Jマウスを用い、脂肪エネルギー比が50%の高脂肪食に、発芽玄米、もち麦、赤米、黒米を配合して12週間給餌した。その結果、盲腸重量がもち麦群で有意に高かったことから、もち麦に含まれるβ-グルカンが腸内細菌によって発酵を受けたことが考えられた。マクロファージのマーカーであるF4/80は、もち麦群と黒米群で有意に低かった。さらに、各種炎症マーカーと各臓器脂肪重量との相関を見ると、F4/80,TNF-α,IL-10,CD11cでは有意な正の相関がみられた。以上のことから、もち麦はβ-グルカンによって、また黒米はポリフェノールによって脂肪細胞の軽度炎症を抑制したことが示された。 【実験2】β-グルカンを高含有する大麦とβ-グルカンを含まない大麦を5週齢のC57BL/6J雄マウスに高脂肪食とともに12週間摂取させ、糞便内腸内細菌叢をT-RFLP法で解析し、副睾丸周辺脂肪組織の炎症マーカーとの関連性を調べた。その結果、β-グルカンを高含有する大麦は、β-グルカンを含まない大麦を摂取したマウスに比べて、腹腔内脂肪重量が有意に低く、F4/80とTNF-αのmRNA発現量が有意に低下した。腸内細菌叢の解析の結果、β-グルカンを高含有する大麦摂取により、Firmicutes門(Clostridium subcluster XIVa, Lactobacillales)の比率が有意に減少した。相関解析の結果、Clostridium subcluster XIVaとF4/80は有意な正の相関を、TNF-αは相関傾向(p=0.06)を示した。β-グルカンを高含有する大麦摂取によりClostridium subcluster XIVaの比率が低下し、炎症抑制につながる可能性が示された。腸内細菌と臓器炎症のクロストークが存在することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高β-グルカン大麦とグルカンレス大麦の比較は予定通り実施することができた。大麦外皮と大麦胚乳部の比較は、全粒大麦と60%槝精大麦の比較により実施することができた。大麦β-グルカンと大麦アラビノキシランの比較は抽出操作による水難溶性化が起こることが示されたため、β-グルカン含有大麦とアラビノキシラン含有大麦で比較することができた。脱脂大麦と大麦脂溶性画分の比較については、β-グルカンが腸内発酵を受け、各臓器とのクロストークを発現することが判明したため、腸内細菌叢の解析に集中し、脂質画分の解析は省略した。残された課題は、腸内細菌による腸内代謝物の解析と臓器間クロストークを調べることになる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで検討によりほぼ計画していた実験は実施でき、穀物の中では大麦のβ-グルカンが腸内細菌に代謝され、腸内細菌叢の変動、脂肪組織の炎症マーカーに影響するという消化管ー腹腔内脂肪組織間の炎症クロストークを明らかにすることができた。今後は、肝臓および膵臓とのクロストークが存在するのか、腸内細菌叢の変動により腸内代謝産物がどのように変化するのか、盲腸内短鎖脂肪酸や内容物の解析を実施する。 また、検出ができなかったGLP-1分泌への影響についても再度検討していく。
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