2012 Fiscal Year Research-status Report
対面コミュニケーションが新奇食物受容に及ぼす効果の実験的解明
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24500999
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
木村 敦 東京電機大学, 情報環境学部, 助教 (90462530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒造 正樹 神奈川大学, 工学部, 特任准教授 (10456155)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 食物新奇性恐怖 / コミュニケーション / 食品 / 食行動 / 社会心理学 / 生体センシング |
Research Abstract |
本研究は社会心理学, 映像解析学, センサ工学を融合した手法により共食の場を定量的に解読し, 共食相手との対面コミュニケーションが新奇食物の受容に及ぼす影響の心理・行動モデルを構築するものである. 今年度は研究計画に従って, 本研究で使用する新奇・親近食品の選定 (課題1), および共食が新奇食品の摂取と参与者間の言語・非言語インタラクションに及ぼす効果についての探索的検討 (課題2) を行った. 実験では新奇食品を含む食品サンプルを試食し評価する実験を行う. この評価実験を一名で実施する条件と二名で実施する条件を設定し, 条件間で視覚的印象や味嗅覚的特徴, 摂食量を比較した. 課題に先立ってウェアラブルな骨伝導マイクを用いて咀嚼数を判別する手法を考案し, 本課題の摂食・発話行為の計測に用いた. 実験の結果, 二名条件は一名条件よりも新奇食品摂取量が多いことが見出された. さらに映像解析の結果, 新奇食物摂取の動機としては先行研究で示唆されているような食味的魅力ではなく, 共食相手との共感やリスクテイキングなどコミュニケーションに関わる動機が関与している可能性が示された. この解析はまだ途上のものであるが, 従来の新奇食物受容に関わる知見では説明できないような人間行動が観察されたことは大変興味深いものであり, 食行動の社会的側面を考える上で重要な資料となる基礎的知見が得られたといえる. 本研究成果についてはこれまで国内学会等で成果公表した. そのうち, 食品科学や食味評価のエキスパートが集まる学会である日本官能評価学会2012年度大会における発表にて, 優秀発表賞を受賞した. また, 2012年11月には「医工連携ワークショップ 未来を拓くセンサ,コミュニケーション技術とその応用」を共催し, 本研究の知見を基礎研究者のみならず広く応用分野の研究者や一般の方々にも周知した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は, 当初の予定通り, 本研究で使用する新奇・親近食品の選定, および共食が新奇食品の摂取と参与者間の言語・非言語インタラクションに及ぼす効果についての探索的検討を行った. 新奇・親近食品の選定にあたっては, 約40種類の食品について視覚評価および食味評価により摂取意思や馴染み, 味の好みなどの定量リストを作成した. この知見は今後の研究遂行に大きく貢献するものと考えられる. また, 新奇食品の共食実験により, コミュニケーションという要素が場に入ることで新奇食物摂取の可否やその動機が従来研究と異なる傾向を示すことがわかってきた. 今回の知見をもとに, 平成25年度以降は仮説検証的な実験計画をつくりコミュニケーションと新奇食品受容の関係を精緻化する. このように, 本研究は計画通りの進捗ができているのみならず, 目標達成に向けての知見が着実に得られていることから, 充分な達成度を有しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は, まず平成24年度に実施した実験映像を解析し, 共食のいかなる集団力学が新奇食物摂取に影響したかを検証する. この検証にあたっては, 共食場面についての第三者評価を行い, 客観的な心理データを取得する. また, 本解析を含めて実験成果を論文化する. 次に, コミュニケーション動機と新奇食物摂取の関係について, 平成24年度の実験で示唆された「共感性」や「リスクテイキング」に焦点を当てて実験的に検証する. また, この実験実施にあたっては, 摂取行動とコミュニケーションの継時的関連を見るために食品・飲料摂取量をリアルタイムに判定するセンサを新たに開発する. この実験により, 共食者間の共感やリスクテイキングといった動機が新奇食物の摂取に及ぼす効果を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り, 実験環境設営に直接的に関わる用品等は平成24年度にある程度揃えることができた. そこで, 平成25年度は主として実験実施に関わる消耗品費や, 実験補助者及び実験参加者の謝金, 成果公表に関わる学会出張旅費・英文校閲費等で研究費を使用する予定である.
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Research Products
(7 results)