2013 Fiscal Year Research-status Report
肥満の食行動異常における摂食促進ホルモン・グレリンの役割と食事制限・運動の効果
Project/Area Number |
24501018
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
田尻 祐司 久留米大学, 医学部, 准教授 (80469361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
御船 弘治 久留米大学, 医学部, 准教授 (70174117)
西 芳寛 久留米大学, 医学部, 講師 (20352122)
山田 研太郎 久留米大学, 医学部, 教授 (10191305)
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Keywords | 肥満 / 過食 / リズム異常 |
Research Abstract |
SDT fattyラットにおける過食のメカニズムの一つとして、平成25年度は食欲を調節するグレリン以外のmoleculeであるネスファチン(nesfatin)の関与を調査した。ネスファチンは82個のアミノ酸より構成され、主に視床下部の室傍核(PVN)や胃に存在し、満腹シグナルを司り食欲を調節するペプチドである。PVNは体内時計である視交叉上核(SCN)と機能的に接続しており、従って食欲調節以外にホルモンや自律神経の日内リズムを調節する司令塔としての働きを有する。“むちゃ喰い障害”や“だらだら喰い”など食リズムの異常は肥満者においてしばしば認められる特徴であり、肥満治療を困難なものとする大きな理由の一つである。ラットは暗期に主に摂食し、明期の始めにネスファチンの視床下部での発現が高くなり、それと同時に明期における摂食を中止する、というリズムを有しているが、肥満モデル(Zucker-fatty rat)ではこのネスファチンのリズムが消失しており、それに伴い明期の摂食量や一日の総摂食量が増加し、肥満の原因となっている(Biochem Biophysiol Res Comm 434: 434-438, 2013)。我々の本年度の実験結果においては、SDT fattyラットでは明期、暗期ともにSDラットに比べて胃でのネスファチンmRNA発現が著明に亢進しており、そのリズムも消失していた。暗期のみの制限給餌を行い食事のリズムを強制的に再現してみると、ネスファチン発現量の低下とともに明暗のネスファチンリズムも回復した。食リズム異常の是正による肥満の改善は臨床的にもしばしば認められるが、そのメカニズムの一つとしてネスファチンの関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SDT fattyラットにおいてネスファチンリズム異常が存在する事は、本年度の実験においてほぼ証明できた。また、「ネスファチン抵抗性」とも呼べるネスファチン発現量の著明な亢進も証明できた。しかしながら、当初予定していなかったネスファチンを中心に実験を施行した事などにより、予定していた制限給餌(暗期のみ)の効果が十分に検証できていない。CTによる体組成の評価やエネルギー代謝の測定(アルコシステム)などは次年度に行う予定である。また、中枢や末梢の時計遺伝子(period, clock, cryptochromeなど)との関連も、大変興味深いと考え検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、制限給餌による効果をさらに検証する事が第一の課題である。第二には、時計遺伝子との関連を調査する事であり、自由摂食時あるいは制限給餌時の胃や視床下部のサンプルよりネスファチンとともに上記時計遺伝子の発現を調査する予定である。 平成26年度のもとも大きな課題は、日常臨床における肥満者の生活リズムや食リズムの調査および食事や運動の介入による効果を調査する事である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
適切な機器購入、試薬購入などに充当できない程度の少額の助成金が残ったため。 次年度の消耗品使用に充当する。
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