2012 Fiscal Year Research-status Report
植物由来食成分(フィトケミカル)の乳癌及び大腸癌に対する抗癌作用の機序解析
Project/Area Number |
24501020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
中野 修治 中村学園大学, 栄養科学部, 教授 (40164248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹嶋 美夏子 中村学園大学, 栄養科学部, 助教 (00241183)
小野 美咲 中村学園大学, 栄養科学部, 助手 (10441726)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 乳癌細胞 / 癌遺伝子 / フィトケミカル / イソフラボン / クルクミン / 増殖制御 / 細胞周期 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
【大豆イソフラボンの乳癌細胞増殖抑制効果の検討】化学構造の異なる大豆イソフラボン主要4種の乳癌細胞増殖抑制効果を検討した。乳癌細胞はホルモン受容体状態の異なる3種の細胞を用いた。大豆イソフラボン4種のうち増殖抑制効果が示されたものはゲネステイン(GEN)のみであった。細胞間の増殖抑制効果には差がなかった。細胞周期解析ではGENはG2/M期で停止させた。さらに分子レベルでG2/Mチェックポイント蛋白であるcdc2の活性がGENにより抑制されることが明らかになった(論文作成中)。 【クルクミン(CUR)による細胞死誘導とシグナル伝達の解析】CURはウコンに含まれるポリフェノールである。実験の結果CURは細胞周期をG2/Mに停止させ、アポトーシスを誘導することが分かった。この機序はAktおよびErkのリン酸化(活性化)やmTORの基質であるS6K1と4EBP-1のリン酸化を抑制することがわかり、かつ抗アポトーシス作用を示すBcl-2を抑制するためであることを報告した(Anticancer Res, 2013 in press)。 【活性化Rasおよび活性化Src導入細胞におけるCURのシグナル伝達機構へ及ぼす影響】各種の固形癌で活性化されているRasおよびSrc癌遺伝子を癌細胞に導入し、CURの増殖抑制効果に及ぼす影響を見てみたところ、CURの増殖抑制は癌遺伝子により差がなかった。しかし抑制機序は、Src導入細胞ではBcl-2の抑制とBaxの上昇によるアポトーシス誘導が主な作用であり、Ras導入細胞ではG2/Mでの停止が原因であることが分かった。これらの結果から癌細胞はシグナル伝達の活性化の違いによりCURの作用機序は全く異なることが判明した (Biochemical and Biophysical Research Communications, 2013 in press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【乳癌細胞株での食成分のシグナル伝達の解析】ホルモン陽性乳癌細胞株(MCF-7、T-47D)およびHer-2増幅乳癌細胞株(SK-BR3、BT-474)、トリプルネガティブ乳癌細胞株(HTB132, CRL2336)の6種類、3つの遺伝子パターンの異なるタイプの細胞特性をもった細胞株を使用し、乳がん発症予防に関与する食成分の作用を細胞増殖とアポトーシスから解析している。細胞増殖抑制効果をWSTアッセイで測定し、細胞周期解析をフローサイトメトリー(FACS)で、アポトーシスに対する作用をFACSとPARP (PolyADP Ribose Polymerase) 切断アッセイにより測定した。またウエスタン・ブロットによりPI-3K-Akt経路、Ras-Raf-Erk経路, アポトーシス関連因子(Bcl-2やBax)などの活性化を見ることによって、シグナル伝達分子のどの経路に働いているのかを解析している。さらにAkt下流のmTORの活性化におよぼす影響をAMPK活性およびmTORの基質であるS6K1と4EBP-1のリン酸化を測定することより、Akt下流のシグナルを検討中である。 【活性化Rasおよび活性化Src導入細胞における植物由来食成分のシグナル伝達機構へ及ぼす影響】ヒト細胞に活性化Rasおよび活性化Srcを導入した癌細胞¥を食成分で処理し、細胞増殖抑制効果をWSTアッセイで測定し、細胞周期解析とアポトーシス対する作用をフローサイトメトリー(FACS)で解析した。またウエスタン・ブロットによりAkt、Erk、さらにAkt下流のmTORの活性化におよぼす影響も検討した。アポトーシス関連因子(Bcl-2やBax)などの活性化を見ることによって、シグナル伝達分子のどの経路に働いているのか解析している。 上記結果をまとめて学会発表しさらに論文を投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
①平成24年度の研究の継続と、新たに食成分を代えて継続し、種々の食成分の抗癌作用を明らかにする。 ②乳がん担癌マウスモデルでの癌抑制効果:ヌードマウスに先の6種類の乳癌細胞を皮下接種して腫瘍を形成させ、腫瘍形成に対する種々の植物由来食成分の影響を調べるために、飼料に食成分を付加し腫瘍のサイズを経時的に測定する。これによりヒト乳がん進展に対する抑制効果も検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①種々の食成分の抗癌作用を乳がん細胞を使用し、細胞レベルで明らかにする。このため研究費は培養器具や培地、仔牛血清、ウエスタン用の抗体などの消耗品購入に充てる。 ②ヌードマウスに先の6種類の乳癌細胞を皮下接種して腫瘍を形成させ、腫瘍形成に対する種々の植物由来食成分の影響を調べる。このためヌードマウスとフィトケミカルの購入費用に充てる。 ③以上より得られた成果を米国Experimental Biology学会にて発表するための旅費と論文投稿のための別刷費用として使用する。
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Research Products
(14 results)