2013 Fiscal Year Research-status Report
機能性食品成分と医薬品併用摂取による薬効および病態に及ぼす影響に関する調査研究
Project/Area Number |
24501027
|
Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
永田 純一 福岡工業大学, 工学部, 教授 (70237527)
|
Keywords | 健康と食生活 / 機能性食品 / 安心・安全な利用法 |
Research Abstract |
本研究では、健康食品を安心・安全、適切な利用が出来る基礎的な環境整備を通して国民の健康の保持・増進および公衆衛生の向上を図るため、利用頻度の高い機能性食品あるいは食品成分に着目し医薬品との併用による相互作用あるいは健康影響や疾病状態での健康食品の利用に関する評価検討を行っている。 初年度は、類似の作用機序を有する降圧剤と血圧が高めの人を対象とした機能性食品成分の併用摂取による薬効への影響や健康影響に関して本態性高血圧モデル動物を用い検討を行った。具体的には、アンジオテンシン転換酵素の阻害による降圧剤(タナトリル)と血圧が高めの人を対象とした機能性食品素材(サーディンペプチド)を12週間高血圧モデル動物に与え、血圧に及ぼす影響(相乗・相加あるいは相殺作用)や健康影響について調べた。その結果、高血圧モデル動物の収縮期および拡張期血圧に対し顕著な影響を認めなかった。また、血液生化学指標の結果から併用摂取による顕著な生理学的健康影響は認められなかった。これらの成果は、国際会議(UJNR2013, 12/9, Tsukuba)において発表された。現在、安全性の観点から薬物代謝酵素活性に及ぼす併用摂取の影響について追加実験を実施する予定である。 2年目は、I型糖尿病モデル動物における中鎖脂肪酸を含む油脂(MCT)の摂取による健康影響を検討した。糖尿病患者の合併症としてケトアシドーシスが知られているが、中鎖脂肪酸はケトン体を容易に産生するため、糖尿病患者におけるMCTの利用はケトン体上昇による病態の進行あるいは健康影響が懸念される。これまでのところ、顕著な健康影響は認めず、むしろ従来の食用油と比較して高い生存率を示した。現在、それらの原因を継続的に検討中である。これまで行った研究成果は、今年度国内外の学会で発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、生活習慣病のリスク因子改善効果を有する機能性食品と医薬品の併用による相互作用、健康影響および病態への影響などを明らかにすることを目的としいくつかの実験を計画した。これまでのところ申請時の研究計画に従い、ほぼ計画通りに実験は実施されている。 初年度は、血圧が高めのヒトを対象とした機能性食品と医薬品の併用摂取の影響を検討した。これらの作用機序は共にアンジオテンシン転換酵素(ACE)の阻害作用であり、併用摂取した際に医薬品の効果に対する影響(相乗・相加効果あるいは相殺効果など)や健康影響が懸念される。そこで、高血圧モデル動物(SHR)を用いて機能性食品と医薬品の併用摂取による血圧、レニン、アルドステロン、ACE活性等に及ぼす影響を検討した。これらの実験結果は、国際会議で報告されたが、安全な利用のためのリスク評価の観点から実験を追加した内容を併せて論文を準備する方向で対応したい。従って、平成26年度の実験では併用摂取による薬物代謝酵素活性に及ぼす影響に関する追加実験を計画し、安全性な利用に着目した研究を実施する予定である。 また、平成25年度は、I型糖尿病モデル動物における中鎖脂肪酸を含む油脂の摂取による健康影響を検討した。糖尿病患者の合併症としてケトアシドーシスが知られている。中鎖脂肪酸は、体内で速やかに酸化されケトン体を産生するが、中鎖脂肪酸を含む機能性食品には糖尿病患者への注意喚起等は行われていない。このように、糖尿病患者におけるこれら機能性食品の利用は、ケトン体上昇の可能性が考えられ、病態の進行あるいは健康影響が懸念される。これまでの実験結果から長鎖脂肪酸を含む従来の食用油脂と比較したところ中鎖脂肪酸を含む油脂の摂取は著しく高い生存率を観察したため、それらの原因を継続的に調査検討中である。これまで行った研究成果は、平成26年度国内外の学会で発表予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、健康食品を安心・安全、また適切な利用が出来る基礎的な環境整備を通して国民の健康の保持・増進および公衆衛生の向上を図るため、利用頻度の高い機能性食品あるいは食品成分に着目し、医薬品との併用による相互作用あるいは健康影響や疾病状態での健康食品の利用に関する評価を行うことである。特に、生活習慣病リスク因子改善あるいは治療のために医薬品を服用しているヒトや疾病罹患者の安全な健康食品の利用のために必要性の高い研究と言える。 これまでの研究は、医薬品と機能性食品の併用接すによるリスクを想定した研究を行い、医薬品の効果にほとんど影響しないことや一定の生化学的安全性が観察されたが、一層の安全な利用について検証するため薬物代謝酵素に及ぼす影響を検証し、論文にまとめたい。 また、生活習慣病リスク因子のひとつである糖尿病の中でも食事習慣の影響を強く受けるII型糖尿病は、食事による血糖値のコントロールが重要となる。I型糖尿病で見られたMCT摂取の影響がII型糖尿病でどのような影響を及ぼすのか検討を行う予定である。 今後の研究も基本的には申請時の実験計画に沿った方向で実施を行う予定であるが、これまでに得られた結果をさらに検証し、事実確認を行うための裏付けとなる実験を行う場合は若干の計画変更が避けられない。特に、医薬品と機能性食品の併用摂取による安全性評価は安易に結論づけられないため、多角的な研究を行い、より確かな情報を得て報告すべきと考えているため実験を追加して検証する。根拠が不確かな実験結果もあり、詳細な検討は健康食品の利用に関する貴重な情報をもたらしてくれると期待する。 3年目の平成26年度は、これまでに得られた結果の確からしさを多角的に検証し、機能性食品の安全・安心で適切な利用が可能か判断したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画では、GC/MSなどの機器整備費として予算を計上していたが、予定の金額を大きく上回るため当該年度での整備を実施できなかった。また、レンタル機器を用いて呼吸商を調べる予定であったが、使用した施設にある機器を無料で提供して貰ったためレンタル料を必要としなくなった。この2点が使用額に反映されたと考えます。 GC/MSの機器整備費に100万円程度必要となるため、実験の優先度を考慮して予算を執行したい。特に、平成26年度実施予定の実験で必要となる実験動物や消耗品、使用機器を優先的に使用した残額を確認し、機器整備を行う予定である。実験遂行上GC/MSの整備は必要であるが、予算的に研究の実施費との兼ね合いから実質的には難しい。機器のレンタルや依頼試験なども考え合わせ実験を実施したい。予算を考慮し必要最低限の機器整備に使用したい。
|