2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24501032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
安居 光國 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40200498)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 技術者倫理 / ケースメソッド / 仮想事例 / 事例分析 |
Research Abstract |
24年度の計画は、1.代表的な仮想事例の分析、2.収集した事例を分析、3.倫理綱領の項目を仮想事例に加える手法の3点である。 まず、1.代表的な仮想事例の分析は、代表的な事例のうち「雪印乳業食中毒事件」「JCO核燃料臨界事故」「シンドラーエレベーター事故」「水俣病」「カネミ油症事件」などを再分析した。また、事例集に関して日本電気学会のワークショップで意見を交換した。この結果、多くの事例は10年あるいは10年以上前のものが利用され、それ自身の価値は高いが、事例を学ぶ者の多くはその事件性、インパクトを知らず、重大事例との観念にすれ違いが生じて来ていることが問題であることがわかった。 次に、2.収集した事例を分析は、出版物としての事例を収集した。これまでの正本以外に、ハーバードビジネススクール、慶応大学ビジネススクールの作成したケースのうち工学、技術に関連する約300例を収集し、研究協力者の岸田とともに、分析を行った。その結果、ビジネスケースが扱う事例には技術者倫理として重要な事例が含まれており、企業人に共通な問題がケースメソッドで学べることが明らかになった。一方、これまで技術者倫理の分野では取り扱っていなかったケースにも倫理的問題が存在することを見ることができた。 最後の、3.倫理綱領の項目を仮想事例に加える手法は、仮想事例の作製を始めることで試行した。これは、技術者倫理分野では、個々の事例を扱うときは、事例を深く見る点が重要であったが、ビジネスケースメソッドでは、必ずしもその事例に固守することはない。そこで、この手法をもとに簡単な事例を作成した。また、これをもとに分析が設計のとおりに行われるかの検証を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.代表的な仮想事例の分析: 文献収集および研究会、シンポジウムに参加し、計画通りにすすめることができた。 2.収集した事例を分析: ハーバードビジネススクールの300以上の事例を分析、検討を行い、24年度の目的を達成できた。 3.倫理綱領の項目を仮想事例に加える: 仮想事例に問題挿入をする試行を開始する一方、日本工学教育協会の技術者倫理研究会に参加し、倫理綱領の策定の中心的メンバーとして綱領の本質を理解し、工学者に必要な倫理綱領を明確にした。この成果は当該倫理綱領のリーダーである藤木氏の報告に記載がある。 以上より、24年度は本研究のスタートアップがほぼ計画通りに完遂出来たと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.24年度に分析、分類した事例に対し、倫理綱領の意図する項目の適用を検討し、項目の仮想事例への組み込み法を試行、開発する。 項目とは、1.安全・健康・環境への配慮、2.情報の公開・説明・秘匿、3.技術者個人の能力の向上、4.中立性・公平性・客観性、5.知的成果の尊重、6.社会的責任の重視・社会への貢献、7.リスクへの配慮、8.後進の指導、9.社会評価の向上、10.雇用者・依頼者への誠実さ、11.積極的な討論などである。 2.第2の問題である技術者の倫理的行動に迷いを与えるものを、既存の事例から抽出する。 これは企業等の組織においては地位、パワー、立場等の人的関係、純粋な技術論ではない経営的判断、家族等の家庭という個人的問題、金銭的理由、感情など状況から揺り動かされる不安定なもの、自律的判断力の弱さ、責任回避などがあげられるが、多くはもっとも倫理的な判断による行動をとると避けられるものである。そこで、学習として得られた倫理的判断を歪める要素を仮想事例に埋め込み、行動第2案に現れる行動選択を仮想事例から測定する。そのための仮想事例作成手順を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.事例分析に必要な文献収集に活用する(消耗品、交通費) 2.文献分析を行う(消耗品、謝金) 3.調査、討論を行う(消耗品、交通費) 4.作成された事例の検定を開始する(消耗品) 研究協力者および関連研究者と密な情報交換を行う
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