2012 Fiscal Year Research-status Report
原発事故を教訓とした地域密着型環境放射線教育の展開
Project/Area Number |
24501033
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
関根 勉 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (20154651)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 環境放射線 / 原子力発電所事故 |
Research Abstract |
2011年3月11日に起きた福島第一原子力発電所の事故により、日本では今まで経験することのなかった大量の人工放射性核種が東北・関東地域に降り注ぎ環境汚染を引き起こした。本研究では、これを教訓として宮城県内における環境放射能測定を行いながら、放射線・放射能教育に役立てるとともに、継続的なデータ取得を行うことにより長期的な環境変化を記録にとどめることとした。本年度は、石巻好文館高校、仙台育英学園等の協力を得て敷地内の土壌の放射能調査を行ったほか、東北大学川内北キャンパスグラウンドにおいてはより詳細に調査した。土壌中の放射性核種の深度分布を調べたところ、K-40、Ra-226、Ra-228 のような天然の放射性核種は深さによる偏りがほとんど無く一定の含有量を示していたのに対し、原発事故により飛散して降り注いだ放射性セシウム(Cs-137, Cs-134)はそのほとんどが表面層に止まっていることがわかった。この傾向は、宮城県北部の石巻地域、仙台東部の多賀城地区、仙台中心部の川内地区におけるどの土壌試料においても同様であった。さらに、土壌をふるい分けして土壌粒子を大きさ毎に分画し(4.75 mm 以上、1.0 mm – 4.75 mm(細れき分)、 0.3 mm - 1.0 mm(中砂・細砂分)、0.3 mm以下(シルト・粘土分))、それぞれの分画成分ごとの放射能を計測したところ、細かな粒子にはセシウムの吸着濃度(重量あたり)が高いことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本学をはじめとしていくつかの教育施設において、継続的に土壌や草などの環境試料を定期的にサンプリングし、その放射能測定を行うことができたことは予定どおりである。また土壌については 30 cm 深さまでのコア試料採取だけでなく、スクレーパーによる詳細な土壌採取も行っており、放射性セシウムや天然の放射性核種の詳細な深度分布が明らかとなってきた。土壌のふるい分けにより、細かな粒子への放射性セシウムのより強い吸着を調べることができたのは予定外であった。さらにNaI(Tl)検出器を野外に持ち出し、その場におけるガンマ線スペクトルを測定できたので、その場における空間線量率を支配している放射線について詳細な情報を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、宮城県内におけるいくつかの教育施設(石巻好文館高校、仙台育英学園、東北大学)で土壌などの環境試料を定期的にサンプリングし、継続的なデータを取得するとともに、その経年変化に着目して研究を進めていきたいと考える。これらの結果は出前授業などでその教育施設関係者や生徒達に伝え、周囲の放射線の状況の変化を長い目で冷静に見つめられるように示していきたい。 また、細かい土壌粒子への放射性セシウムの吸着がわかったが、今後、これらの粒子のキャラクタリゼーションを進め、その吸着メカニズムの理解につなげたい。さらにNaI(Tl)検出器によるその場測定が可能となったので、種々の場所における線量率と放射性セシウムの量の関係を明らかにしていきたいと考える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
|